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未来

「いろんな笑顔」*奏斗

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 四ノ宮と離れてからの毎日。
 オレは、誰かと会って、時間を潰して、なるべく四ノ宮とのことは考えないようにしていた。
 それでも、一人になるといつも、思い出して。
 離れるまでの数週間、ずっと四ノ宮と居たからかな。
 いつまで、こんな風に想うんだろう。

 こんなに離れても、四ノ宮を好きな気持ちは、なかなか薄れててはくれないみたい。
 離れていると、恋しい、というか、会いたいな、と思う気持ちが募るからなんだろうか。なんだかますます好きになってしまっているような気がする。

 ……四ノ宮はもう、忘れてるかな。オレのことなんか。
 ていうか、あいつのことだから、夏休みなんかもう、モテモテで誘われて、色んな人と会ってる気もする。

 オレのことなんて、もしかして、「馬鹿なことばっかするし、手間かかるし、めんどくせーし、何が好きだったのかもすでに謎。離れられてよかった」とか、思ってるかな? 思ってそうな気も、する。
 ……うわー、なんか、ムカつくなー……。
 四ノ宮の、眉を寄せた嫌そうなしかめっ顔、想像したら、ふ、と苦笑いが浮かんだ。

「――――しのみや……」

 あの日以来、呼んでいなかった名前を、ゆっくり、口にしてみる。

 ……今、幸せで、居てくれてるかな。
 オレのこと、もう本当に忘れてくれていい。

 ――――誰と何しててもいいから。笑っててくれると、いいな。

「――――……」

 離れてから、余計に四ノ宮の笑顔ばっかり、浮かぶ。

 皮肉っぽい笑い方とか、可笑しくてしょうがないって笑い方とか、しょうがないなーて笑い方とか。
 優しかったり。すごく、嬉しそうな笑顔……とか。

 一緒に居た時はこんなに好きだとは、思ってなかったのに。
 まだここまでなんて、分かってなかったのに。
 離れてから、ますます思い知るなんて、思わなかった。

「――――」

 そこで、ふっと気づく。
 また膝抱えてた。やめやめ! 四ノ宮に注意され――――。

 立ち上がりながらそこまで思って、ああもう、注意されることもないんだな、と思うと。
 なんだか、胸のあたりが痛い気がする、けど。

 でもこれは、しょうがない。
 四ノ宮の幸せは、守りたい。オレの相手なんか、これ以上させられない。

 そう決めると、四ノ宮のことを考えるのはやめて、大地の番号に電話をかけた。

「あ。もしもし、大地? あのさ、今、和希に電話して……」

 オレは大地に、和希とのことを伝えて、もしかしたら集まりにも行くかも、と伝えた。

 大地は、やたら嬉しそうで。
 要らない心配、ずっとさせてたんだなと、苦笑が零れた。




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