457 / 551
未来
「いろんな笑顔」*奏斗
しおりを挟む四ノ宮と離れてからの毎日。
オレは、誰かと会って、時間を潰して、なるべく四ノ宮とのことは考えないようにしていた。
それでも、一人になるといつも、思い出して。
離れるまでの数週間、ずっと四ノ宮と居たからかな。
いつまで、こんな風に想うんだろう。
こんなに離れても、四ノ宮を好きな気持ちは、なかなか薄れててはくれないみたい。
離れていると、恋しい、というか、会いたいな、と思う気持ちが募るからなんだろうか。なんだかますます好きになってしまっているような気がする。
……四ノ宮はもう、忘れてるかな。オレのことなんか。
ていうか、あいつのことだから、夏休みなんかもう、モテモテで誘われて、色んな人と会ってる気もする。
オレのことなんて、もしかして、「馬鹿なことばっかするし、手間かかるし、めんどくせーし、何が好きだったのかもすでに謎。離れられてよかった」とか、思ってるかな? 思ってそうな気も、する。
……うわー、なんか、ムカつくなー……。
四ノ宮の、眉を寄せた嫌そうなしかめっ顔、想像したら、ふ、と苦笑いが浮かんだ。
「――――しのみや……」
あの日以来、呼んでいなかった名前を、ゆっくり、口にしてみる。
……今、幸せで、居てくれてるかな。
オレのこと、もう本当に忘れてくれていい。
――――誰と何しててもいいから。笑っててくれると、いいな。
「――――……」
離れてから、余計に四ノ宮の笑顔ばっかり、浮かぶ。
皮肉っぽい笑い方とか、可笑しくてしょうがないって笑い方とか、しょうがないなーて笑い方とか。
優しかったり。すごく、嬉しそうな笑顔……とか。
一緒に居た時はこんなに好きだとは、思ってなかったのに。
まだここまでなんて、分かってなかったのに。
離れてから、ますます思い知るなんて、思わなかった。
「――――」
そこで、ふっと気づく。
また膝抱えてた。やめやめ! 四ノ宮に注意され――――。
立ち上がりながらそこまで思って、ああもう、注意されることもないんだな、と思うと。
なんだか、胸のあたりが痛い気がする、けど。
でもこれは、しょうがない。
四ノ宮の幸せは、守りたい。オレの相手なんか、これ以上させられない。
そう決めると、四ノ宮のことを考えるのはやめて、大地の番号に電話をかけた。
「あ。もしもし、大地? あのさ、今、和希に電話して……」
オレは大地に、和希とのことを伝えて、もしかしたら集まりにも行くかも、と伝えた。
大地は、やたら嬉しそうで。
要らない心配、ずっとさせてたんだなと、苦笑が零れた。
72
お気に入りに追加
1,593
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる