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きづいたら
「バレないように」*奏斗
しおりを挟む「好きって、言ってくれた言葉、嬉しかったけど……オレ、やっぱり、お前とは付き合えない」
そう言うと、四ノ宮はオレをまっすぐに見つめて。それから、少しだけ唇を引き結んだ。
「……答え、今じゃなくていいって言ったよね、オレ」
静かな声で、そう言われたけれど。
「いつまでたっても、無理だと思う」
「……何で?」
何で。……四ノ宮と、付き合えない理由。
ちゃんと、話さないと。
下手なこといって、オレが好きなの、バレたら困るんだから。絶対、バレないように。
「四ノ宮はさ、もともと男に興味ないって、言ってたろ」
「――――」
「あんな風に、ホテルであんなことになって……最初から普通じゃなかったでしょ、オレ達」
ホテルでゲイがバレて、変な協定、結んで。……オレのトラウマを知られちゃって。
変な奴に薬飲まされて、それを、四ノ宮が助けてくれた。
「四ノ宮は普通なんてないって言ってたけど……それにしても、オレ達は……普通じゃ無さすぎっていうか……。あんなことがあって、変に関係を持って……隣だったから余計に、一緒に居すぎちゃって、勘違いしちゃったんだと思う。――だからね、オレ、お前と離れなきゃって、思ってる」
オレは、ふ、と息をついた。
あと何を言えばいいんだろう。考えて、言葉を紡いでいく。
……離れるための、言葉。
「四ノ宮さ、見かけでイメージを持たれるの嫌がってるのは分かるけど……誰だって、最初は外見から入るっていうか……それでも、四ノ宮がちゃんとまっすぐ話してれば、その四ノ宮を好きになる子、たくさん居ると思う。今も居るし」
「――――……」
「今まで、運が悪かっただけだと思う。中高生だった訳だしさ、相手も子供だったのかも。……これから、きっと、良い出会い、たくさんあると思う」
言いながら、うん。ほんと、そうだと思う、と自分でも頷いてしまう。
絶対、四ノ宮はこれからもモテる。
「でも、オレが好きなのは、奏斗、だよ」
そんな言葉に、一瞬視線が落ちるけど。
「……うん。嬉しかった。オレのしてたこととか、全部知ってても、好きだって言ってくれて。だから……そんな四ノ宮と、居てもいいのかなって少し、思ってたかもしれない。だから、断れなくて……ずっと居ちゃったんだけど」
少し黙ってから。
「あのね。――――オレ、お前の、お父さんと話したんだ。二人が本気なら考えてくれるって、そんなようなこと、言ってくれた。多分あれ、オレのこと何かしら感づいてて、言ってくれたんだと思う」
「――んなこと言ってたの?」
「うん。良いお父さん、だよね。……でもオレ、それを聞いて思ったんだ。オレは――本気じゃないって」
頑張っていった言葉に、四ノ宮が考え深げに瞳を揺らす。逸らさずに、何とか見つめ返す。
「こんな特殊な状況で……好きとか信じて、付き合って……しかもあんな、住む世界が違うところに行く覚悟なんて、オレには無い」
「――――住む世界って何?」
「今時そんなのって思うかもだけど……やっぱり、全然違うと思うんだよ。お見合いとか、後をつぐとか、そんなとこから違うと思う」
四ノ宮は、黙ったまま、オレを見つめる。
「離れよ、四ノ宮。距離を置けば、オレのことなんてすぐ忘れると思う」
「何で……オレは、忘れたくないし、絶対忘れないし」
「オレは、お前とは無理」
「――――」
「居心地よかった。ごはん、美味しいし。……お前とするの、気持ちよかったし。だけど、そんな意味で本気で付き合うとかは、できない。だから、ここで終わりにしたい。ただの、ゼミの先輩と後輩――――あの日、ホテルで会う前に、戻ろう?」
そう言ったら、少し黙ってから、四ノ宮はオレをまっすぐに、見つめた。
「オレのこと、今、本気で好きじゃなくてもいいよ」
「……え?」
「オレがその分奏斗を好きだから。家のこととか、そういうのは、奏斗に嫌な思いさせないように、オレが、なんでもするし」
「――――」
――――そんな言葉は、胸が痛すぎる。
……泣くな。
絶対。
今泣いたら、オレが離れたくないこと、バレちゃうかもしれない。
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