【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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きづいたら

「今、好きな人」*奏斗

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 少し黙ってから、真斗がオレを見てクスッと笑った。

「ね、カナさ。好きな人、出来た?」
「……何で??」
「だって、少し前まで、ヤバかったじゃん。カズくんのこと話すだけでも、さ」
「何でそれで好きな人?」
「好きな人できると、前の失恋とか、和らぐでしょ」
「――――」

 ……好きな人。
 ――――好きな人?

「今、誰か、浮かんだ?」

 真斗は、何だかすごく嬉しそうな顔でオレを見つめるけれど。
 オレの方は、呆然。
 浮かんでるのは、さっきからずっと、一人だけ。

 オレって。
 ……四ノ宮のこと、好きなの?

 和希のことが褪せるくらい。
 そういう意味で、四ノ宮のことが、好き? 

 ……そう思うと。
 今までのたくさんの四ノ宮が、浮かんできてしまう。

 大混乱しそうで、オレは一度、ぶる、と頭を振ってから、真斗を見つめた。

「えっと……真斗、あの……バスケお疲れ」
「あ、うん。ありがと」
「表彰されたの、すごいよ。ほんと、頑張ったよね」
「ん。まだこれからも頑張るよ」

「応援してるから。……あ、これ、おみやげね」
「なんかすげーたくさんだけど?」

 クスクス笑いながら、真斗が受け取る。

「遊園地と合宿、両方買ってきたから」
 そう言うと、「遊園地行ったんだ?」と笑いながら。

「ありがと。……奏斗、家、寄らない? 親父は仕事で朝出て行ったから、居ないよ? そう思って、ここの駅で待ち合わせたんだよね。カズくんに会うとは思わなかった」
「あ、でも今日、友達と試験勉強する約束があるんだ。また今度にする。母さんにもそう言っといて?」

 そう言うと、真斗は、分かった、と頷く。

「カナがさ。カズくんと普通に向かい合えて、良かったかも」
「ん。ごめんね、心配かけて」
「全然。もう行くの?」
「うん。もう行く。またね?」

 なんとか、真斗とは普通に話し終えて、電車に乗った。――友達の家には向かわずに、マンションのある駅に戻った。
 すぐ帰る気にはなれなくて、駅ビルの端の方にある入ったことのない喫茶店に入り、奥に座った。

 ……和希に会った時。
 四ノ宮が浮かんで、心の中、すごく落ち着いた。

 何でだろうなんて思ってたら、真斗に、好きな人居るか聞かれて。その瞬間。

 ああ、オレは、四ノ宮のことが、好きなのかって。
 突然、納得した。

 もう和希のことは何とも思ってないって、ちゃんと分かった。
 少し前までは、ものすごくつらかった思い出も、随分遠のいてて――――。

 オレ、今はもう四ノ宮のことが好きなんだって、突然。

 ある時、急に好きだって気づくとか、ないと思ってたのに。
 ……和希に会った、あんな時に気付く、とか。

「――――……」

 運ばれてきたコーヒーを見つめながら、頬杖をつく。

 オレが四ノ宮を、恋愛の意味で好きなら。
 四ノ宮の好きに対して考えるのは、ひとつ。

 そういう意味で好きだって伝えて、付き合うかどうか。
 ……付き合う? 四ノ宮と?

 好きって伝えたら喜ぶだろうなと、思う。今の四ノ宮は、喜んでくれて、きっとしばらくは仲良く居られると思う。
 でも――その後は? しばらく経ったその後。

 ……オレに恋愛感情があるなら。
 もう、四ノ宮とは居ちゃだめなんじゃないかな……。

 どう考えても、住む世界が違う。家、とかだけの話じゃない。
 四ノ宮はゲイじゃない。男に興味なんかないって言ってたのを、無理に付き合わせちゃった感じでここまできた。
 オレには、四ノ宮に、普通の幸せをあげることは出来ない。

 オレがそういう意味で好きなら、友達で居たいとかも、ますます言っていられないし。
 ……このまま待たせるなんて、絶対だめだ。

 四ノ宮の気持ち、受け入れていい訳がない。
 そんな風に考えていたら。

『真斗に渡せた?』

 四ノ宮から、ぽん、とメッセージが入ってくる。

『勉強終わったら、マジで帰ってきてもいいからね』
『食べて来なくても作るから。遅いなら、駅まで迎え行くし」

 時間を置いて、なんこも入ってくる。通知だけで確認して、既読はつけないようにしたまま。ぼんやりと見つめていると、ふ、と口元が、緩む。


 ――――ああ、なんか。四ノ宮って。ほんと、可愛いよな。
 ずっと、一緒に居たいなと思ってしまう。





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