上 下
442 / 551
きづいたら

「パーティー終了」*奏斗

しおりを挟む



 パーティーの二時間、長いかなと思っていたら、あっという間で。
 始まりの時と同じく、四ノ宮のお父さんの締めの挨拶が始まった。
  
「――――息子は大学生になりました。まだ色々勉強中ですが、その内、何かしらの事業を継がせられたらと思っていて、私はそのために働いてると言っても過言ではありません」

 挨拶の途中で四ノ宮の話を出して、冗談なのか本気なのかわからないトーンで、クスクス笑いながら話す。聞いてる人達も笑顔。こういう話って、堅苦しくなりそうなのに。上手なんだろうなぁ。そういうとこ、四ノ宮に引き継がれている気がする。

「息子のご友人について、起用するモデルさんですかと今日何度も聞かれましたが、モデルさんではありませんし、息子自身も、広告にあがることは断固拒否しています」

 オレは今度は離れた所に居たので他人事気分で聞いていたのだけれど、その言葉に場が沸いて、四ノ宮が苦笑してるのが見える。

「まあその話は置いておいて――――着ると華やいで気分もあがるスーツをこれからも送り出して行きたい、そう思っています」
 
 そんな言葉に拍手が起こる。そこからは型通りの締めの挨拶をして、パーティーはお開きになった。

 四ノ宮一家は、客が出ていくのを出口で見送っている。
 オレと潤くんはのんびりと話しながら、離れたテラスから眺めていた。
 さっきの舞さんとお父さんが、四ノ宮のところで止まって笑顔で話しているのが見えた。

 プチお見合いかぁ……。どうなったんだろ。
 ――――パーティーも、この家も、ほんと、オレの日常とは違う、別世界。

 四ノ宮たちにとっては、全部、普通のことかもしれないけど。
 ずっと、ふわふわ落ち着かなかった、慣れない空間。

 この年で見合いとか婚約とか、そういう話が出るのは大変だなとは思っていたけど。いつも隣に普通に居るから、あまり実感がないままここまで来た。
 今日、四ノ宮ってやっぱりちょっと違うとこにいるんだなと実感したというか。

 やっぱり、オレを好きとか、そういうのって、ダメなんじゃないのかなぁ……。
 ぼんやり思っているところに、四ノ宮が笑顔で現れた。

「ごめんね、奏斗、待たせた」

 全員送り終えてすぐ、急いでやってきた感じ。

「全然平気。お疲れ」
「んー、マジ疲れた……。つか、何か食べたいし飲みたい」

 四ノ宮が言うと、後ろから来ていた葛城さんが、「お疲れさまでした。食事はあちらのお部屋で、別にご用意してありますよ」と微笑む。

「あ、食べる。奏斗は?」
「オレ結構食べたからいいよ、食べてきなよ」
「んー……ここで食べる。持ってくるから待ってて」
「ん」

 四ノ宮が離れていくと、瑠美さんが近づいてきた。

「ユキくん、潤をありがとうね。潤が楽しそうで、安心して回れたわ」
「いえ。ていうか、オレの方が楽しかったので」

 ねー、と潤くんと笑い合う。

「私もさすがにお腹空いたから何か食べてくるね。潤も一緒に行く?」
「うん。ユキくんも行く?」
「四ノ宮が持って戻ってくるって言ってたから、ここで待ってるよ。行ってらっしゃい」

 瑠美さんと潤くんを見送っていると、入れ替わりで、四ノ宮のお父さんとお母さんが歩いてきて、丸テーブルの向かい側に腰かけた。

「雪谷くん、今日はありがとう。結構な人数に、モデルに起用する子かって聞かれたよ」

 四ノ宮のお父さんがそう言ってクスクス笑う。

「ね、ほんとに。現役でモデルやってますって言われても、信じちゃうわ」
「宣伝部が迫りに行ったって聞いたよ。悪かったね」

「そうなの? 大翔にずっと言ってた社員さんたち?」
「そう。一緒なら大翔も出てくれるかもって思ったらしいよ」
「それ、いいわね」

 四ノ宮のお母さんがふふっと笑うと、お父さんもクスクス笑って、「本当に、モデルになってもらいたい位」と言う。

 オレは無理ですよ、四ノ宮だけなら出来そうですけど、と苦笑い。





(2023/10/24)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

処理中です...