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きづいたら
「助けに」*奏斗
しおりを挟む「ユキくん、このちっちゃいチョコ、おいしーよ」
「あ、ほんと?」
「はい、あーん」
「ん」
ぱく、と潤くんに口に入れられた時。周りに人の気配。振り返ると、男二人、女二人の四人組。少し年上な感じ。……誰だろ? ナンパとかじゃなさそうで、首を傾げると。
「あのすみません。……大翔くんのお友達なんですよね?」
「あ、はい」
「大翔くん」? こういうとこで、子供でもない相手を、くん、て呼ばなそう。ほんと誰? そう思いながら名乗るのを聞いていたら、四ノ宮のお父さんの会社の社員さん達だった。昔から知ってるってこと、かな。
頷きながら聞いていたら、ふと、一人が思い切ったような口調で、言った。
「大翔くんと、うちの写真広告、出てもらえないですか?」
「四ノ宮と……広告、ですか?」
「もうずっと前から大翔くんにはお願いしてるんだけど、全然オッケイくれなくて」
「大翔くんほどうちのスーツが似合う若い子、居ないと思ってるんですよね。モデルさんより、よっぽど似合うので」
「でもいつも、『社長の息子を広告に使ってるのバレたら、印象最悪でしょ』って断られてて」
皆三十代くらいかな。若そうだけど、なんとなく仕事が出来そうな人たちの必死な感じに、ちょっと笑ってしまう。四ノ宮、嫌がりそうだもんなぁ……。
「もしよかったら、大翔くんと一緒に、モデルになって頂けたら……あ、もしかして、モデルさんとかしてますか?」
「いえ、あの……オレ、完全に一般人なので無理です」
苦笑いで答えると、余計必死になった気がする。
「そこを何とか。大翔くん、会社を創立した時はまだ十歳くらいで……それでも結構大人っぽい受け答えをする男の子だったんですけどね」
「そうそう、もう、素敵に育ってくれて」
「社で集まりがあるたびに成長してくのがもう、楽しみで。ばーんと広告出しちゃうのありだと思いませんか?」
「四ノ宮だけなら、ありな気がしますけど」
でも嫌がりそうだけどな、と心の中で言いながら苦笑してると、「大翔くんだけだと絶対ノーなんですよ」と食い下がられる。
それは分かる気がする。うーん、これ以上なんて返したらいいんだろ、と思っていると。
「何、してるんですか?」
呆れたような四ノ宮の声。
振り返ると案の上、四ノ宮が苦笑いを浮かべて四人に視線を向けた。
「囲まれてるなと思ったら……オレ、何度も断ってますよね、その話。先輩まで巻き込まないでくださいよ」
言いながら、四ノ宮がオレをなんとなく後ろに隠す。
「そんなこと言っても、素敵な子連れてくるから、これはもう二人一緒に、て思っちゃうよねえ」
「そうですよ~」
どこまで本気なのか良く分からないけど、とりあえず、四ノ宮に出てほしいのは絶対なんだろうなーと思いながら、そのやりとりをしばし眺める。
結局、絶対なし、という四ノ宮に、その話は終了した。四人は苦笑しつつ、オレにも挨拶しながら、離れていった。「またの機会に」と一人が笑って言ってたのはちょっと引っかかるなと苦笑してると、四ノ宮がオレを見下ろした。
「奏斗、ごめんね、宣伝部の人達なんだけど、昔から知っててさ。会うといつも言うんだよね……奏斗まで巻き込むとは思わなかった」
「あんなに言うなら出てあげればいいのに」
「……自分の超特大写真、街に貼られたくない」
「あ、なるほど……」
それは嫌かも、と笑ってしまうと、潤くんもクスクス笑って、四ノ宮を見上げてる。
少し離れたところから、四ノ宮のお父さんが手を振ってるのが見えた。四ノ宮もすぐ気づいてオレを見つめると。
「ごめん、行ってくるね」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
歩き去っていく四ノ宮を見送る。
――――ほんとに助けに来たな。
なんて思うとちょっとおかしい。
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