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きづいたら

「可愛らしい感じ」*奏斗

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 潤くんと四ノ宮のふざけ合いを皆で眺めていた時、不意に後ろから。

「翔一」

 そんな声がして、皆が振り返った。つられてオレも振り返って、あ、と止まる。さっき飲み物をこぼしていた女の子とそのお父さん。お父さんの方が、四ノ宮のお父さんの名前を呼んだみたいだった。

「ああ、ごめんな、おまたせ――――大翔、ちょっと」
 四ノ宮のお父さんはすぐに反応してそう言って、四ノ宮を振り返った。

「何?」
「いいからちょっと。……すぐ戻るから、待ってて」

 四ノ宮のお父さんは、お母さんや瑠美さんに向けてそう言うと、四人で少し離れていく。

「ねね、瑠美」

 少し離れたテラスの端で四ノ宮たちが話しているのを、なんとなく目に映していると、四ノ宮のお母さんが瑠美さんに話しかけたのが聞こえてきた。

「今お父さんと大翔が話してる女の子、見た?」
「見たけど?」
「大翔のことが大好きらしいのよ。お父さんのお友達のお嬢さんなんだけど……」

 少し小さな声で言ってるけど、隣に居たので聞こえてしまう。多分、四ノ宮のお母さんはオレに隠してる訳じゃなくて、他の周りの人に聞こえないようにしているだけだと思うのだけれど。

「あ、そうなの?……ふうん」
「さっき、少し話したんだけど、すごく可愛い子なのよ」

 オレは視線を逸らして、隣でご飯を食べてる潤くんに目を移した。

「ユキくん、これ食べたら、ジュースとりにいこ?」
「ん、いいよ。何飲みたい?」
「りんごー」
「いいよ」

 微笑んで答えながら、ぼんやりと考える。

 こないだたこ焼きの時に、言ってた子だよね。一回会ってみるだけでもいいって。四ノ宮は何の話か分かってなかったみたいな気がしたから、お父さん同士が引き合わせた感じなんだろうな。プチお見合い、みたいな感じかな。

 ……確かに、すごく可愛い感じだった。顔も、話し方も。なんか性格も良さそうで。
 ふうん。……あの子が、四ノ宮を好きなのか。似合うかもな。横に並ぶの。

 そう思っていると、瑠美さんが呆れたように笑いながら言った。

「でも選ぶのは大翔だからね。会わせるのは自由だけど、大翔に聞いてからの方がいいんじゃないのかな」
「えー、何かすごくノリがわるいね、瑠美ってば」

 四ノ宮のお母さんが、瑠美さんの返事にちょっと不満げな感じで、むー、と文句を言っている。

 四ノ宮のお父さんて、こんな感じの可愛い人が好きなのかぁ。お見合いをして良かったから四ノ宮も、みたいなこと言ってたっけ。
 大分年上なはずなのに、すごく可愛らしい感じがする。
 四ノ宮家の他の三人とは違う雰囲気。
 瑠美さんと四ノ宮は、姉弟って感じするし、四ノ宮とお父さんも似てる気がするけど。こういう可愛らしいお母さんで良かったと思ってるなら、さっきの、舞さんだっけ。可愛くて、お父さんも好きそう、なんて思ったりもする。

 四ノ宮たちは、しばらく四人で話してから向こうの二人と別れた。
 すぐに四ノ宮とお父さんが戻ってきて、そのまま家族で再び挨拶周りに行った。四ノ宮が少し何か言いたげにオレを見たけれど、そのまま連れ去られて行った感じ。

 まあ大変だよなと、なんとなく後ろから見送る。
 見てると、四人そろって挨拶をするというよりは、それぞれが知った顔に挨拶してるような感じ。

 四ノ宮のお父さんとお母さんは並んで挨拶してる気がするけど、四ノ宮や瑠美さんは、若い人達と話してるのも見える。
 友達なのかな? でも、友達っていうよりは、こういうところでの知り合い、かな。挨拶嫌いって言ってたもんな……。

 まあ頑張れ。そう心の中で応援しながら、オレは潤くんと過ごしていた。





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