【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
440 / 557
きづいたら

「可愛らしい感じ」*奏斗

しおりを挟む



 潤くんと四ノ宮のふざけ合いを皆で眺めていた時、不意に後ろから。

「翔一」

 そんな声がして、皆が振り返った。つられてオレも振り返って、あ、と止まる。さっき飲み物をこぼしていた女の子とそのお父さん。お父さんの方が、四ノ宮のお父さんの名前を呼んだみたいだった。

「ああ、ごめんな、おまたせ――――大翔、ちょっと」
 四ノ宮のお父さんはすぐに反応してそう言って、四ノ宮を振り返った。

「何?」
「いいからちょっと。……すぐ戻るから、待ってて」

 四ノ宮のお父さんは、お母さんや瑠美さんに向けてそう言うと、四人で少し離れていく。

「ねね、瑠美」

 少し離れたテラスの端で四ノ宮たちが話しているのを、なんとなく目に映していると、四ノ宮のお母さんが瑠美さんに話しかけたのが聞こえてきた。

「今お父さんと大翔が話してる女の子、見た?」
「見たけど?」
「大翔のことが大好きらしいのよ。お父さんのお友達のお嬢さんなんだけど……」

 少し小さな声で言ってるけど、隣に居たので聞こえてしまう。多分、四ノ宮のお母さんはオレに隠してる訳じゃなくて、他の周りの人に聞こえないようにしているだけだと思うのだけれど。

「あ、そうなの?……ふうん」
「さっき、少し話したんだけど、すごく可愛い子なのよ」

 オレは視線を逸らして、隣でご飯を食べてる潤くんに目を移した。

「ユキくん、これ食べたら、ジュースとりにいこ?」
「ん、いいよ。何飲みたい?」
「りんごー」
「いいよ」

 微笑んで答えながら、ぼんやりと考える。

 こないだたこ焼きの時に、言ってた子だよね。一回会ってみるだけでもいいって。四ノ宮は何の話か分かってなかったみたいな気がしたから、お父さん同士が引き合わせた感じなんだろうな。プチお見合い、みたいな感じかな。

 ……確かに、すごく可愛い感じだった。顔も、話し方も。なんか性格も良さそうで。
 ふうん。……あの子が、四ノ宮を好きなのか。似合うかもな。横に並ぶの。

 そう思っていると、瑠美さんが呆れたように笑いながら言った。

「でも選ぶのは大翔だからね。会わせるのは自由だけど、大翔に聞いてからの方がいいんじゃないのかな」
「えー、何かすごくノリがわるいね、瑠美ってば」

 四ノ宮のお母さんが、瑠美さんの返事にちょっと不満げな感じで、むー、と文句を言っている。

 四ノ宮のお父さんて、こんな感じの可愛い人が好きなのかぁ。お見合いをして良かったから四ノ宮も、みたいなこと言ってたっけ。
 大分年上なはずなのに、すごく可愛らしい感じがする。
 四ノ宮家の他の三人とは違う雰囲気。
 瑠美さんと四ノ宮は、姉弟って感じするし、四ノ宮とお父さんも似てる気がするけど。こういう可愛らしいお母さんで良かったと思ってるなら、さっきの、舞さんだっけ。可愛くて、お父さんも好きそう、なんて思ったりもする。

 四ノ宮たちは、しばらく四人で話してから向こうの二人と別れた。
 すぐに四ノ宮とお父さんが戻ってきて、そのまま家族で再び挨拶周りに行った。四ノ宮が少し何か言いたげにオレを見たけれど、そのまま連れ去られて行った感じ。

 まあ大変だよなと、なんとなく後ろから見送る。
 見てると、四人そろって挨拶をするというよりは、それぞれが知った顔に挨拶してるような感じ。

 四ノ宮のお父さんとお母さんは並んで挨拶してる気がするけど、四ノ宮や瑠美さんは、若い人達と話してるのも見える。
 友達なのかな? でも、友達っていうよりは、こういうところでの知り合い、かな。挨拶嫌いって言ってたもんな……。

 まあ頑張れ。そう心の中で応援しながら、オレは潤くんと過ごしていた。





しおりを挟む
感想 331

あなたにおすすめの小説

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...