437 / 551
きづいたら
「パーティー色々」*奏斗
しおりを挟む「雪谷くん。こんばんは。こないだはありがとうね。それから今日も、来てくれてありがとう。本当にとても似合ってるよ」
四ノ宮のお父さんが、オレの前に立って、そう言った。「いえ、こちらこそ、ありがとうございます」と笑うと、隣で、なんだかすごく可愛い感じの四ノ宮のお母さんが、オレを興味津々に見つめる。なんだかすごく若く見える。瑠美さんや四ノ宮のお母さんといわれても、パッと見、信じられないくらい。
「大翔と仲良くしてくれてるみたいで、ありがとう」
「雪谷奏斗です」
名乗ると、四ノ宮のお母さんはクスクス笑い出した。
「ふふ。主人がふたりのたこ焼きパーティーに乱入したって聞いておかしくて……しかも葛城も一緒にって」
可笑しそうに笑って、じっと見つめられる。
「潤が一目で気に入ったって瑠美が言ってたけど。分かる、とっても素敵」
あんまりまっすぐに褒められて、なんだかものすごく照れてしまう。
「潤、オレのとこ来ないよ、奏斗の方ばっかで」
「あら。今まであんなに大翔大好きだったのにねー」
からかうように言われた潤くんは「ヒロくんも好きだよ」と言う。「でも、ユキくん、大好き」なんて言って、皆に笑われてる。
「葛城、奏斗と潤が居やすいところに連れて行ってやって」
四ノ宮が葛城さんにそう言うと、葛城さんは、にっこり笑って頷く。
「じゃあ挨拶いってくるね」
「ユキくん、潤をよろしくね」
四ノ宮と瑠美さんがそう言うので頷くと、二人は四ノ宮のお父さんやお母さんの進んだ方に歩いていった。
「雪谷さん、テラスの方が居心地はいいと思うので……こちらです」
「あ、はい。潤くん、いこ」
「うん」
潤くんと一緒に葛城さんの後をついて、人の間をすり抜けていく。
「潤くんのお母さんも、四ノ宮も、皆、カッコいいね」
そう言うと、潤くんは嬉しそうに笑って頷く。
パーティーは四ノ宮の言っていた通り立食。テラスにはおしゃれな丸テーブルとイスが並んでいて、そこで食べることにした。
まだ始まったばかりなので、出席してる人たちは色々話をしてるみたいで、テラスにはほとんど人が居なかった。
葛城さんは、食べ物の取り方や飲み物の頼み方など、色々教えてくれてから、奥に入っていった。
「潤くん、何か取りに行こ?」
うふふ、と笑いながら頷く可愛い潤くんと、食べ物を取りに歩き始める。
「潤くん、今日はオレと一緒に居てね」
「うん! 楽しみにしてたのー」
満面の笑顔で言われると、とっても可愛い。微笑みながら、やっと周囲を見回す余裕が出てきた。
会場は広くて、たくさんの人が居る。
世の中にはこんなパーティーに出席する人達が、こんなに居るんだな。ていうか、こういうのって、テレビだけじゃないんだなぁ、とさっきからかなりのカルチャーショック。
お偉いさんの誕生パーティーとか、会社とかの創立記念パーティーとか、ドラマや映画とかには出てくるけど、実際出るのは初めて。縁がないもんね。
「あの……すみません、さっき紹介されてた方ですよね?」
「え?」
急に女の子たちに話しかけられて、一応頷くと、大学生ですか? どこの大学ですか? と、色々質問が飛んできた。
しばらくなんとなく答えていたのだけれど、連絡先がどうのこうの言い出したあたりで、ナンパなのかな? と気づいた。
大翔さんと一緒に、というセリフも聞こえるので、あ、もしかして、四ノ宮と連絡とりたいのかな、とも思いながら。
「今日はそういうのは……すみません。潤くん、ごめんね、いこ」
潤くんにそう言って、手を繋ぐと、それ以上は話しかけてはこなかった。ああ、潤くんと居ればって、四ノ宮が言ってたのってこういう意味か……。
同じようにちょこちょこ話しかけられて、なんとなく少しだけ会話してから、潤くんが居るから、と離れる。
ある程度、潤くんの好きな食べ物を取ってから、潤くんと一度テーブルに戻った時には、もう大分疲れていた。全く接点のない人に話しかけられるって、そういえば今まであんまりないことなのかも。向こうから見たら、社長の息子の友達、なのかな。スーツが似合うって褒めてもらえるのは、宣伝としては、役に立ったのかな? と良かった気もするんだけど……。
でも疲れるからもう誰とも目を合わせないようにしよ。なんとなく視線を感じて、目を合わせてしまうと話しかけられてしまう気がする。
75
お気に入りに追加
1,593
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる