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きづいたら
「笑った顔」*奏斗
しおりを挟む「パーティー、なんだかちょっとドキドキする……結婚式の披露宴みたいな感じ?」
「んーどうだろ? 披露宴とは少し違うかな」
「小さい頃に親戚の披露宴に出たけど……見慣れない料理が出てきて、皆がすごくおしゃれしてて、キラキラしててってイメージ……そんな感じ?」
「皆がスーツとかドレスでオシャレはしてるけど……。あ、立食だよ。座って食べるとこも用意されてるけど、挨拶や情報交換で立ってる人が多いかな。偉そうなおじさんたちが、娘とか奥さん連れてくるから女の人も多いし」
「へー」
「オレみたいな社長の息子とかもさ、パーティーとかよく参加する人は顔見知り同士も多いから……若い奴らだけで話してるってこともあると思う」
「四ノ宮はパーティーの間は、どうしてるの?」
「最初に親父が挨拶する時に側に居て、後はしばらく一緒に挨拶回りすると思う。……超めんどくて、嫌いなんだけど」
心底嫌そうな顔で言って、べ、と舌を出す。
「嫌いそう……」
笑ってしまうと、「大嫌い」と四ノ宮も笑う。
「でも、外見には出さないんだろ、それ」
「出さないよ。奏斗居てくれるから、今回は特に頑張るし。あ、奏斗はさ、潤と居てやってくれる?」
「うん。いーよ。むしろ潤くんと居れるなら楽しいと思うし」
そう言うと、四ノ宮は、むーと口を少し尖らせて不満そう。
「何その顔?」
「奏斗は一人で置いとくと、めちゃくちゃ餌食になりそうだから、そういう意味でも、潤と居てほしいんだよね」
「餌食?」
「んー……イイ男探しに来てる女子達、居るから」
「オレ別に、社長の息子とかじゃないし」
あは、と笑うと、「イイ男とみれば来ると思うから、気を付けてね」と四ノ宮が眉を寄せてる。
「迫られてそうならすぐ助けに行くから」
「……お前、忙しいんだろ」
「奏斗、助ける方が重要」
意味分かんないな。呆れて苦笑しながら、その話は終える。
なんとなくパーティーを予想しながら、食事を終えて「ごちそうさま。美味しかった」と手を合わせると、「ん」とまた嬉しそう。
「次のカレーの時、これ作ってみるね。ていうか、これ作りたいからカレー作るかも」
そう言うと、四ノ宮は「また作ろうね」と笑う。一緒に、てことなんだろうな。
四ノ宮は、オレの笑った顔が嬉しいっていうけど、気付けばオレも、四ノ宮の笑った顔は嬉しい気がする。
これは、誰でも笑ってくれた方が嬉しいってことではあるかもだけど、一緒に居る時間が長いっていうのは、こういう感情の大小にかなり影響あると思う。
やっぱり一緒にいすぎかなあ、オレ達……。
と。オレがそんな事を考えてるとも知らない四ノ宮は。
食器の片づけを終えると、オレの淹れたコーヒーとともに、四ノ宮の家にオレを連れて帰る。
例によって断れずに、連れていかれるオレが悪いとは思うのだけど。
並んでソファに座って、コーヒーを飲みながら話すのは明日のパーティーの話の続き。
「紳士服の会社の創立十周年のパーティーなんだっていうのは、言ったっけ」
「ん、言ってた」
「軌道には乗ってるみたいなんだけど……まだまだ新参だから、業界の人とも仲良くしたいみたい」
「四ノ宮も、そういうのするの?」
「オレは仲良くするってよりは、ちょっと挨拶しながら、若者部門のスーツを着て一緒に回って宣伝」
「へえ……宣伝になる位に似合うって、すごいね」
「奏斗も宣伝要員だってよ」
クスクス笑われて、「オレはそんなの無理だよ」と、笑い返す。
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