【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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きづいたら

「深呼吸」*奏斗

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 四ノ宮はオーブンを覗き込んでから。

「すげー熱そうだから、オレがやるね」
「つかオレ、できるよ」
「でもオレがやる」

 クスクス笑いながら、四ノ宮は言って、「奏斗はサラダとかお茶出して」と言ってくる。

「引き受けて、やけどしないでね?」
「心配?」
「……別に」
 からかうような口調にむ、としつつ、お茶を淹れてると。

「あっつ……」
「えっ」
 四ノ宮の声に、びっくりして振り返る。

「やけどした? 早く水で冷やして、オレ、氷出してくるか……」

 腕を掴んで水道のところに四ノ宮を引きながら焦って言うと、四ノ宮はクスクス笑って「ごめん、嘘。やけどしてない」なんて言う。

「……つか、お前そういうの、ほんとやめろよ」
 怒って、掴んでた手をぽいっと投げるみたいに離すと、ごめん、と見つめてくる。

「別に、とか言うからさ。ちょっとふざけたら。すごい焦ってくれるから」
「タチ悪い。もう」

 オレは結構本気でムッとしてるのに、そのまま、ぎゅ、と抱き締められてしまった。

「……つか、オレ、結構、嫌な気分なんですけど」
「うん。 ごめんね。そんな心配すると思わなくて」
「するっての、心配。……ていうか、お前じゃなくても心配するからな」

 ほんとにもう、離せよ、と、もがいていると。
 ぎゅ、と包まれる。

「……うん。そんな風に、心配、皆にするんだろうけど。……可愛いなぁ、奏斗」

 クスクス笑ってる四ノ宮に、はーとため息。

「オレ、怒ってるのに、可愛いって何だよ。もう……」
「――――ほんと、優しくてさ。反応、すげー可愛くて……大好き」

 ぎゅううと抱き締められて、動けない。

「……あの」
「ん?」

「――――……ちょっと……加減、してよ」
「ん?」

「ついてけない……」

 それしか言えなくて、言ったら、四ノ宮は不思議そうにオレを覗き込んできて。


「……真っ赤、奏斗。何で?」
「うるさい、もう、恥ずかしいんだよ、全部!」

「はは。可愛い」
「その可愛いっての、マジでやめて」

「だって可愛いし」
「もういいから食べようよ。お腹空いたし」

「ん」

 クスクス笑いながら、やっとのことでオレを離す。
 ふ、と息をつきながら、お茶やサラダをテーブルに運ぶ。

 もう。なんか、疲れた。
 ため息をつくと、四ノ宮が笑う。

「ため息ついてると、葛城に注意されるよ」
「葛城さん? 何で?」

「幸せが逃げるってさ」
「そうなの?」
「だから、ため息じゃなくて、吸って、吐いたら、もう一回深く吸えって」

 言われるまま、すーはー、のあと、もう一回吸う。

「そうすると、深呼吸になるから、体にもいいって。あ、吸うのは、鼻からの方がいいってさ」
「――――……」

 言われるまま、すーはーすーはーしていると。
 ぷ、と四ノ宮に笑われた。

「……なんだよ?」
「いや……怒ってため息ついてたのに、まじめに聞いてくれて、すーはーしてんの、すっげー可愛いなと思ったらつい」

 口元を抑えながら、クスクス笑ってる四ノ宮に、もうお前、ほんと嫌、と呟いてるのに。四ノ宮は変わらず、楽しそうに笑ってる。



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