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きづいたら

「操られ?」*奏斗

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 食事を終えて一緒に片付け始めると、「奏斗はコーヒーを淹れて」と言われて分担。またテーブルで向かい合わせで、四ノ宮が買ってきたアイスを食べ始めた。
 お腹がいっぱいになって、落ち着いたからかもしれないけれど、さっきからあくびばっかり。合宿であまり眠れないまま帰ってきて、昨日も割と遅かったからか、しょうがないかと思う。

「なんかすごい眠い」
「みたいだね。まあ、寝不足だよね」
 言いながら時計を見上げた四ノ宮が、でもまだ二十時半だけど、と笑う。

「ちょっと寝るには早いかな」
「ん……」
「あ、でもこれ食べて、寝る準備して、二十一時過ぎに寝ればいっか」
「うん。そーする」

 はわはわ。またあくび。
 だめだ、しゃべってても、アイス食べてても、もう眠すぎ。

「うちで寝るでしょ?」
「……あのさぁ」
「ん」

「……絶対毎日一緒、とかはやめようよ」
「何で?」
「なんか当たり前みたいになるのも変じゃん。夕飯もさ、たまに一緒になる位で良いんじゃないかなと思うんだけど……」

 言いながらもまた、あくび。もう話してる内容関係なく、眠い。
 涙が滲む。

「とか言って、今日カレー用意してくれたじゃん」
「たまたまカレーが食べたくなって、やっぱり作りすぎちゃうから」
「とんかつも、オレのも買ってきてくれてたじゃん」

 ぐ、と言葉に詰まった後。

「あれは、明日食べてもいいやと思っただけだし」
「……何でもいいけどさ」
「とにかく毎日一緒って思ってるのもめんどくさいでしょ」
「めんどくさくなんかないよ」

 そう言うと、四ノ宮はクスクス笑いながら、オレを見つめる。

「あ、まだカレー残ってたじゃん? 明日、ちょっと違う感じにしていい?」
「違うって何? カレーうどんとか?」
「んー。奏斗、ドリア好き? チーズ好きだし、好きだよね?」
「うん。好き」
「カレーライスをグラタン皿にのっけて、卵とチーズかけて焼いて、黒コショウ」
「何それ。超美味しそう」
「でしょ。明日それにしてあげるね」
「うん!」

 ……はっ。
 …………超わくわく頷いてしまった。

 まんまと明日の約束をしてるアホすぎる自分に、何度か瞬きを繰り返していると、四ノ宮は口元を軽く握った右手でかくしてる。……けど、明らかに笑っている。

「お前、なんか、オレのこと操ってない?」

 もうムカついて、パクパクアイスを口に詰め込んでいると。

「……ぷ。おもしろ、奏斗」

 あは、と笑って、それから、不意にガタン、と立ち上がると、四ノ宮の顔が急に近づいてきて。

「……っ」

 舌が触れてくる。なんか、アイス食べてるから、舌がお互い少し冷たい。うなじを押さえられて、動けないでいると。

「――――……チョコアイス、おいしーね。バニラの味、した?」

 クスクス笑われて、かぁっと赤くなる。

「も、なんか……お前、嫌い」
「嫌いじゃないのは知ってるし」
「……っっ一人で寝るからな、オレ、もう。食べたら帰れよなっ!」

 引き離して、またアイスを口に入れていく。
 四ノ宮は、特に何も言わず、クスクス笑っている。


 ……で。結局その日どうなったかと言うと。

 なんでだかあれよあれよと、四ノ宮の部屋に連れていかれ、四ノ宮のベッドで抱き締められたら、ものすごく眠かったのもあって、あっという間に眠ってしまったのだった。……何で断れないのかな、ほんと。



(2023/9/26)



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