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きづいたら

「矛盾」*奏斗

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 シャワーを浴びて、髪を乾かす。
 カレーOK、サラダOK、ごはんも炊けたし、よし、と思って時計をみた瞬間。またインターホンが鳴った。
 鍵を開けようとして、あ、と気づいて一応ドアから確認。
 ……ていうか、四ノ宮なんだよな。と可笑しくなりながら、鍵を開けた。

「確認」
「今はしたよ。どうぞ」
「ずっとしてね」
「……ん」

 苦笑しながら、四ノ宮の前を歩いてリビングに入る。

「待ってて、すぐ準備できるから」
「運ぶよ」
「あ、じゃあサラダとかドレッシング、出して」
「はーい」

 楽しそうに冷蔵庫を開けて、テーブルに運んでいく四ノ宮を横目に、オレはカレーをお皿によそる。

 なんかすげー楽しそうだな。

 つか。なんかオレ、今気づいたけど。
 四ノ宮に何も言われてないのに、一緒に食べる用のとんかつ買って帰ってきてたり、二人で食べてもなくならないくらいのカレーを作っちゃってたり。
 なんか四ノ宮がオレと食べるって、決めてたみたいなことをしてることに、ふと気づいてしまった。
 一緒に食べるなんて決まってないとか、いつも四ノ宮に言うくせに、何してんだろ、と思う。思うけど。

「カツカレーなんだ」
 と、喜んでる顔を見ると、なんか嬉しく感じるし。

 自分の気持ちと行動の矛盾に、うーん、と悩みつつ、テーブルに座る。
 四ノ宮の家と違って、二人がけなので、向かい合う。

「いただきます」
 手を合わせて食べ始める。

「美味しい」
「なら良かった」
 笑顔の四ノ宮に、ふ、と笑って頷く。

「あ、そうだ。今日さ、里穂と話した?」
「あーうん。帰ろうとしてたら、会って」
「そっか。……いつもわりと、里穂が隣とか近くに座って受けてる授業があってさ。今日はどうするんだろうと思ってたら、来なかったんだよね。きまずくて来れないのかなと思ってたら、なんだか結構遅れて入ってきて」
「うん」
「終わってから、話しかけられて……昨日はありがとう、とか。これからもよろしく、とか」
「うん」

 ……ほんと、強いな、笠井。
 もう、明日からは、四ノ宮に会っても普通に過ごせるんだろうな。……好きな気持ちのままで。

「休講で帰ろうとしてる奏斗と会って話してから来たって言うからさ」
「ん」
 
 なんか、変に口をはさむのもなあと思って、全部に、ただ頷いて答えていると。

「――――何か聞かされちゃった?」

 苦笑の四ノ宮。

「少し聞いた、けど……なんか、笠井はちゃんと四ノ宮を見てるんだなーって思った」
「ちゃんと?」
「四ノ宮の王子っぽいとこじゃなくて。なんか、そんな気がした。あと、強いなーって、感心した」
「まあ、そうだね。強いかもね……オレ、今日はさすがに話しかけられないかなって思ってた」

 ふ、と微笑む四ノ宮。

「でも、色々近くに居る子だから、気まずくなるのも避けたかったから、よかったけど。これでもう、友達で居られそうだし」
「うん」

 頷きながら、考える。

 多分、友達でいるつもりとかは、ないんだろうなと思うけど。
 だってまだまだ好きそうだったし。
 ……ていうか、笠井だけじゃなくて。四ノ宮はほんとにモテるだろうに。

「あ、そうだ、さっき葛城から連絡あった」
「――――あ、何て?」

「スーツできたって。あと、明後日は学校終わる時間に迎えに来るって」
「授業終わってからで間に合うの?」
「向こう着いたら、すぐ着替えて準備すれば、ギリギリ間に合いそう」
「そっか、わかった」

 頷くと、四ノ宮は、ふ、と笑う。

「奏斗のスーツ、楽しみなんだけど」
「……きも」
「キモ宮はなし」

 めちゃくちゃ鋭く止められて、は、と笑ってしまう。

「あ、でもオレ、潤くんのスーツ、楽しみ。ちっちゃい子のスーツなんて、めったに見ないもんね」
「まあ可愛いとは思うけど」
「けど?」
「ちょっとはオレのスーツも楽しみにしててよ」
「――――……」
「そこ黙んないで、返事!」

 黙ったオレに、ははっと四ノ宮が笑う。

「オレも超似合うと思うんだけどなぁ。見違えてくれていいからね?」

 クスクス笑う四ノ宮に。

「オレが七五三みたいでも笑うなよな。似合うと思えないし」
「はー? 絶対可愛いしカッコいいでしょ。あんま、笑顔ふりまかなくていいからね?」
「え、何それどういう意味?」
「え、ていうか、分かるでしょ、そういう意味」
「別にふりまかないし……」
「妬くからね、オレ」

 めちゃくちゃ堂々と宣言されて、もー、ほんと何言ってんだと呆れつつ、笑ってしまう。




(2023/9/26)
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