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きづいたら

「強さ」*奏斗

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 笠井の言葉を待って黙っていたら、笠井は少しして、噛んでいた唇を解いて息をついた。

「それで……すごく好きすぎて……昨日帰りに、告白しちゃったんです」
「……そっか」

 知ってるとは言えないので、それだけ言って、頷いた。

「夏休みとか、一緒に居られたらいいなとか……なんか考えちゃって」
「ん。そっか……」
「……断られちゃったんですけど」

 苦笑しながらそう言って、ふ、とまた息をつく。

「……何でかって、大翔くんに色々聞いちゃったんです、私……」
「……ん」
「――――好きな人が、居るんですって。なんか、生まれて初めてこんなに好き、とか言ってました」

 ふふ、と笠井が笑う。

「大翔君、可愛いなーって思って、ますます好きになっちゃいました」

 クスクス笑いながら言って、でもすぐまた黙って、ため息。

「……付き合ってるとかじゃないし、全然まだ片思いらしいんですけど……馬鹿だなって思うとこいっぱいある人って言うんですよ。どんな人なんだって気、しません?」

 笠井が、むー、と口を膨らませている。

 ……それって、オレのこと???
 馬鹿だなって、いっぱいって……まあ、オレか……。
 なんか複雑な思いで聞いていると。

「でも放っておけないんですって。絶対ずっとそばにいたい、とか。あと、笑っててほしいから、とか……なんかそういうの言われちゃうと、もう諦めるしかないかなって思うんですけど……でも、そんな風に言う大翔くんのことが、もっと好きだなって思っちゃったりして。すごく、困っちゃって」
「――――……」

 なんだか、ほんと。
 ……聞かなきゃよかった。

 ……それって、オレのこと…… だよな、きっと。

 何でそんな風に、言うんだろ。
 オレのことなんか、どうして、そんなに。

「あっ。ごめんなさい、わーって話しちゃって……。昨日の今日なのでまだ全然落ち着いてなくて……お昼も仲良い子だけじゃなくて皆いたので、誰にも話せなかったので……すみません、大翔くんには内緒でお願いします」
「あ、うん。分かってるよ」

 頷くと、笠井は、苦笑い。

「今この時間、大翔くんの側に座って楽しく受けてた授業なんです。でも今日はさすがに、と思って、でも離れて座るのもなんか微妙だし、じゃあもうサボっちゃおうかなって……今日が終われば、来週からテストで夏休みなので時間は空くし」
「うん。……そうだね」

 なんかうまく応えてあげられてないけど大丈夫かな。
 なんかすごく答えにくくて。どうしよう、と思った時。

「……先輩、きいてくれてありがとうございます。すみません、わーって話しちゃって……でも聞いてくれるだけで、ちょっと楽になります……」
「……うん」

 そっか。なら良かった。

「……失恋って辛いよね」
「――――……」

 オレが言ったら、笠井が、ぱっと顔を上げて、オレを見つめてくる。

「ん?」
「先輩、失恋したことあるんですか?」
「何その質問……あるよ?」
「先輩を振る人なんています??」
「――――居るよ。結構ひどく振られた感じ」
「ええっ信じられない……それこそどんな人って思っちゃいますね」

 はは、と笑ってしまう。

「そっかー……先輩でも失恋なんてあるんですね……」
「あるよ。そんなうまくいかないよね……」
「……そうですよね……」

 笠井は、またため息。

「何か飲む? 甘いものでも買ってきてあげるよ」
「いいんですか?」
「ん」

「……じゃあめちゃくちゃ甘そうなカフェオレ、がいいです」
「了解」

 オレはベンチから立ち上がって、近くの門から出た所にあるコンビニで、カフェオレとチョコレートを購入して笠井のところに戻った。

「はい。……元気出して」
「ありがとうございます。あっチョコまで」

 嬉しそうににっこり笑った笠井に、食べてね、と伝える。

「――――……あー、私」
「ん?」

「……授業。出てきます」
「え?」

「……居ないともしかしたら大翔くん、気にしちゃうかもだし。となりは空いてないだろうから、近く、座ってきます。……あと。振られても、私が大翔くん、好きなのは変わらないので。頑張ります!」

「……うん。頑張れ」

 それしか言う言葉が出て来なくて、そう言った。

「はい! ありがとうございました!」

 笑顔で頷いて、走り去っていく笠井の後ろ姿を見ながら。


 えーと……ちょっと無理、してるとしても。話したら、結局四ノ宮のことが好きだってことが分かって、元気になったのかな……?
 オレもあんな風だったら、よかったのかなぁ……なんて、無理なことも考えつつ。


 強いなぁ。と、感心してしまった。






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