416 / 557
きづいたら
「けじめ」*奏斗
しおりを挟む「あの時は、四ノ宮がほんと心配しまくりだったから……」
大地はそんな風に言って、クスクス笑いながら、オレを見つめる。
「……あー。ごめん、な? 大地にも心配、かけたよな」
「大丈夫です。もとはと言えば、オレのうかつな言葉からってとこも、あるし……」
「お前のせいじゃないから」
そう言うと、大地はちょっと苦笑いで、困ったように頷く。
「……にしても、四ノ宮って、ほんと変な奴ですよね」
変な奴?
……って、思うってことは。
「……大地って、四ノ宮と仲いい?」
「え、全然? 仲良くはないですよ」
言いながらも、何だか笑っている大地。
「あいつの王子説って嘘だと思いません? どこが王子だって感じ。皆、まんまと騙されてますよね?」
そんな風に言う大地に、苦笑してしまう。
この感じだと……大地の前では、素なのかな、四ノ宮。
「まあでも、カナ先輩のこと大好きっつーのは一緒だから、とりあえずそこは認めてますけど……ってこういうこと勝手に言うとヤバそうだな……」
大地が最後の方ぶつぶつ言ってるけど。
……カナ先輩のこと大好き、って……。何それ。
「カナ先輩?」
「え?」
「なんか顔、赤いですけど」
「ぇ。赤くないけど」
「――――……」
赤くなってた? オレ。
ちょっと待って、何で。
「……今日暑いよね」
言いながら、手でパタパタしていると、オレをじっと見ていた大地が「もしかして」とオレをさらに覗き込む。
「な……なに?」
「告白でもされちゃいました? カナ先輩、大好き、とか」
大地は、あはは、と笑って言うけど。
……そうなんだよ、もう、こいつ、ほんとにこういう奴なんだよね……。
鋭いし。……すぐ口に出すし。
はあ、とため息をついてしまった。
「え。もしかしてほんとにそうですか?」
「ち、ちが……」
「あー、つかあいつ、ちょっと前まで認めなかったくせに、早やー」
オレの否定などものともせずに、話を進めてく。
「まあ必死って感じですかね、あ、でも、カナ先輩は、ちゃんと考えた方がいいですよ、王子はまやかしですからねっ」
クスクス笑いながら、大地は言う。
「あー、でも……オレ、何でかあいつのこと、気に入ってはいるんですけど。まあ同志ですしね」
「……同志って何の??」
不思議に思って聞くと、大地はニヤッと笑って、オレを見下ろす。
「えーと。カナ先輩を守る同志? みたいな。んー、合ってるかな。カナ先輩を可愛がる会? とか?」
「…………」
何言ってんだ、もう。どう返せばいいのやら。
「あ、オレ、四ノ宮のこととか、そこら辺だけは鉄壁の箝口令をしくんで、安心してくださいね」
「――――……」
もう辛うじて頷くしかない。
「……カナ先輩」
「ん?」
「オレ、こないだ、カズ先輩と話したんですけど」
「……」
「……もし、カナ先輩ができるなら、話、聞くのもありかなと思いました」
「――――……」
「って、もちろん、無理はしないでほしいですけど」
大地はそう言って、にっこり笑う。
「けじめ、つけるのも、ありかなって」
「――――……」
大地の言葉を聞きながら、オレは、ん、と小さく頷いた。
101
お気に入りに追加
1,686
あなたにおすすめの小説
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-
悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。
拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。
逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。
兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる