【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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きづいたら

「何してんの」*奏斗 ※

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 自分でするの、本当に、久しぶり。
 何も考えないように。和希のことは思い出さないように。

「……っ」

 なんか。いけそうかも。
 シャワーを流したまま、もうさっさと終わらせてしまおうとしていると。
 は、と息が漏れた時。昨日の四ノ宮に触られてる感覚が、ふっとよぎった。

 うわ、待って……。
 今、四ノ宮を思い出すって……。

『良いよ、出しちゃって』
 囁かれる言葉。首筋にキスされる感覚。
 
「――――…………ん……っ」

 ぞく、と震えて。それに焦ってる間に、イっちゃって。
 熱を吐き出して、それをシャワーで流し、ながら。

「……は……?」

 自分でイけて良かった……とは、とてもじゃないけど言えず。
 
 待ってよ。……四ノ宮でイっちゃったじゃん……。
 嘘だろ……。

 瞬間的に熱くなった快感が消えていくにつれ。
 それを認識して、かぁっと顔に血が集まった。

「……っ」

 もうなんか、体をゴシゴシ擦って洗ってから、湯船に沈み込んだ。
 顎まで。というか、口元まで、ぶくぶくぶく、と沈み込む。

「~~~~……っ」

 最近、四ノ宮にばかり触られてて、それを、イく時に思いだしちゃっただけかもしれないけど……。

 ……絶対四ノ宮には言わない。ていうか、言う訳ないけど。
 ていうか、もう、思いださない、今の!

 忘れよう、オレ。 
 何してんの、ほんとに、馬鹿じゃないの、オレ。

 そのまま頭まで、ぶくぶくとお湯に潜って、少ししてから、浮上。
 そのまま、バスタブの縁にもたれて、下に手を伸ばして、俯いた。


「バカ……オレ……」

 なにしてンだよ、ほんとに。
 ……和希のせいでできなくなって。四ノ宮のこと思い出して、するなんて。
 ああもうほんと、何してんの……。

 顔が熱いのは、お風呂のせい。……だけじゃない気がする。


 もう駄目。
 なんか、ダメージが大きすぎる……。

 最後に少し冷たくしてシャワーを浴びてからバスルームを出て、髪を乾かして、歯を磨く。

 二十二時か……。四ノ宮、遅いなー。

 あーでも……十九時過ぎくらいにこっちついて、四人でご飯を食べて、三人送って帰ってたら……もう少しかかるかも、か。

「お疲れさま。眠いから、寝てると思う。運転気を付けて」

 四ノ宮宛てにそれだけ入れて、スマホはテーブルの上に。
 久しぶりに、自分のベッドに、横になった。

 やっぱり寝てないだけあって、すぐに、ウトウトして。
 そのまま、寝れそう、と思った。


◇ ◇ ◇ ◇


 もぞもぞ動いて、手を伸ばす。
 あれ、居ない……。眠くて眠くて、ぼんやりした中、そう思って。
 ふっと、瞳が開いた。

「――――……」

 あれ……どこ。起き上がって、すぐ気づいた。……自分のベッドか。
 …………今オレ。なんか探す夢、見てたな……。居ないって。

 無意識で探してたものを、ちゃんと認識したくなくて、ぶる、と頭を振った。

 時計を見ると、二十二時半。……三十分しか寝てないじゃん。
 ……あーなんか、目ぇさめちゃったな……。

 ため息をつきながら、ベッドから降りて、キッチンへ向かった。
 テーブルのスマホを確認。四ノ宮からは連絡がない。

 ……遅いな。何してんだろ。
 まだ一年皆で一緒に居るのかな。それとも。
 笠井は、四ノ宮のことが好きだから。一緒に居たがったりしてる、のかな。

 四ノ宮は、男は恋愛対象じゃないって言ってたし。
 ……笠井が一生懸命な感じで、四ノ宮を好きなのは、可愛いしな。そういうことになったりする可能性も、ありえるんだよな。

 水を一口飲んで、リビングの電気を消したのだけれど。

 ――――……。

 なんか眠れそうにない。
 三十分しか寝てないのに。

 オレは、電気を消したままリビングからベランダへの窓を開けた。サンダルに足を突っ込んで投げ出し、窓の桟のところに腰かけた。

 帰ったら、連絡あるよな。無いってことは、帰ってないてことだよな?
 ……あ、寝るって入れたから、入れてないだけかもしんないのかな……? まあそしたら寝てるかも?

 そんな事を考えていたら、なんとなく体育座りみたいになって、そのまま膝を抱えた。少ししてふと、丸まって座んないでっていう四ノ宮の言葉を思い出して、むく、と起き上がった。
 そのまま、空を見上げる。

 少しだけの星と、月が見える。

 ……四ノ宮に会う前は。眠れない時、よくここで、星を見てたっけ。
 最近、しなくなってたなぁ、と思いながら、瞬いている星を、眺めた。




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