上 下
408 / 553
きづいたら

「意識」*奏斗 ※

しおりを挟む


 自分の部屋に帰って、ズボンからスマホを取りだす。
 四ノ宮からの連絡はまだなかった。そのままリビングのテーブルに置いて、先にお風呂に入ることにした。疲れたし、湯舟に浸かることにして、お湯をためてから、服を脱いだ。熱いシャワーを浴びながら、この二日間のことを思い出す。

 なんか。……この二日間。色々あったなぁ。
 四ノ宮に、好きって言われたり。
 先生やリクさんと色々話したり。
 なんか、自分の中になかった考えが聞けて、すごく良かった、気がする。

 頭を洗いながら、あー、そういえば、皆の前で、隆先輩にキスされたんだっけ、と思い出した。酔っ払いだし。キス魔だって話だし。他にもされた人達が居て、なんか、もう、オレよりも皆がギャーギャー騒いでくれたから、オレは特にそこまで、何もしなかったというか。
 ……四ノ宮が、助けに来たし。
 めちゃくちゃ笑顔だったけど、絶対あれ、怒ってたよなぁ。……隆先輩に? オレにもかな。気をつけろって言ってたし。多分、周りの皆は、四ノ宮が怒ってるなんて、思わないんだろうけど。見事な外面というか、笑顔というか。王子はいつも通りだったなぁ。

 ていうか、キス、されても。
 隆先輩のキスなんて、別にオレにとって何の意味もないし。

 うわ、と思うだけで、なんか別に……何ていうか、何も感じないっていうか。完全に事故みたいなもんで、さわっちゃった、って感じなだけで。
 キス、として認識してないから、別に四ノ宮が怒ることはないんだけどね……。
 そういえば、隆先輩にキスされても、ゲイがばれそうとか、そっちの心配とか、全く浮かばなかったっけ……。

「――――……」

 ……あれ。
 もし、あれが四ノ宮とのキスだったら、オレ。どうしてただろ。
 あんな風にただ嫌がってるそぶりで居られたかな……。

 いや、無理だな。
 四ノ宮としたキスだったら、慌てて否定とかしてたような。……意識の違い?? ……そういえば、四ノ宮にも、意識しすぎ、みたいなこと言われたっけ。オレと四ノ宮が仲良くたって、別に誰もそんなに気にしないとか……。

 ……意識、し過ぎ?
 …………意識。

 四ノ宮とはそういうことしちゃってるから……だからなんか余計意識しちゃってるっていうのはあると思うけど……。

 髪を洗い終えて、泡を流す。

 確かにオレ、四ノ宮を意識しすぎかな。
 ……でも色々あるから、そういうのもバレたくないし。でもバレないか。家で何してるかなんて。だったら意識、しなくていいのかな。
 でもなぁ。
 隆先輩のキスと、四ノ宮のキスなんて、正直、全然違うし。あえて意識なんかしなくたって、全然違う……? ってなんでだ。

 ――――……。

 ざー、と流れるシャワーを浴びたまま、少し考える。 
 隆先輩としたキスは、うわ、と思っただけ。
 その後、トイレで、四ノ宮に、キスされた時は……動けないようにされたままキス、されて――――……。

 ぞく、とした感覚。思い出した。
 ――――……うわ……やば。緩く反応した自分に、ものすごく焦る。

 あれ。なんか……なんでこんなんで、反応すんの。
 たまってるっけ……? ……て、そんなこと、無いな。合宿行く前々日も。ていうか、昨日もトイレで、オレ、四ノ宮に。

「……っ」

 あ、なんか。思い出してしまったら、ますます――――……。
 何で? と思うけど。
 出しちゃったほうが、すっきり、するかな……。

 恐る恐る、触れてみる。

 和希とばかりそういうことしてて別れてから、自分でしようとしても、和希の触れたのがよみがえって、萎えるというか、心が冷たくなって、とても最後までできない日が続いて。
 ……それも、あって。外に行ったんだけど。 

 久しぶりに、自分で触れる。
 ――――……媚薬飲んでホテルに行った時も、オレ、自分でしなかったって四ノ宮に聞いた。あんな状態でもしないとか、自分に呆れたっけ。

 ……できる、かな。

 ただ自分で触れるだけなのに、可笑しいくらいの物凄い覚悟を決めて、ドキドキ、しながら。
 集中、してみた。





しおりを挟む
感想 327

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...