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きづいたら
「リクさんと」2*奏斗
しおりを挟むサンドイッチを食べながら、自分のセリフに、ふと気付く。
あ、なんかオレ、和希との話。また普通にリクさんにできた気がする。さっきも椿先生にも話せた。
少し克服、できてきたんだろうか……。
「四ノ宮くんは、ここに来ること知ってる?」
オレは、首を横に振って、リクさんを見上げた。
「挨拶に来ただけなので、別に言う必要もないし……そもそも、別に四ノ宮に断ることでも、ないですし」
「そう? 断ることだと思うけどね。四ノ宮くんは、そう思ってそう」
クスクス笑って、リクさんがオレを見つめる。オレは、ちょっと首を傾げる。
「確かに、あの後ちょっと距離感がおかしくはなっちゃってたんですけど……」
「うん」
「……四ノ宮はノンケだし。別にオレ達、付き合ってるとかじゃないですし」
「んー? ノンケがとうかとかは、彼は関係ないんじゃないのかな。四ノ宮くんの場合は、ユキくんだけに興味あるって感じがするけど……もういつでも心配してそうだし」
そう言いながら、リクさんは可笑しそうに笑う。
「まあ。ここで話した限りしか知らないから分かんないけどさ。ユキくんのこと、大好きそうだよね?」
「――――……好き、は好きなのかも、とは思うんですけど……」
「けど?」
「……ずっと居たいとか言うけど、無理に決まってるのに」
リクさんは、四ノ宮とも、オレの周りの他の人とも関係なくて、ここにいるオレをよく知ってる人。この店の中では、一番安心できる人で、もちろんここでだけの関係ではあるんだけど、すごく信頼してる。
だからつい、出てしまったのかも。
あ、ずっと居たいとか言う、って言っちゃった、と思って、口をつぐんだ時には、もうクスクス笑われてて。
「ずっと居たいって言われたの? 好きって?」
「…………」
今更ごまかせなくて、少しだけ頷くと。
「なんか、四ノ宮くん、いいね。分かりやすくて好きだな」
クスクス笑うリクさんに、確かに面白いというか変な奴だけど。分かりやすくはないと思う。あれを分かりやすいって、リクさん、すごい……。と考えていると。
「でも、ユキくんがノンケは怖いのは分かる気はする。過去のことがあったりしたら余計かもね」
うーん、とリクさんは顎に手を置いて、考える素振り。
それから、クスッと笑った。
「まあでも、誰のこともさ、信じきるのは怖いことだよね。それは、男同士とか関係なくて、男女だって一緒だよ」
「――――……」
「男だから恋できないっていうのも、違うよね」
「……そう、ですね」
「皆、信じるのはこわいけど、好きな人と居たいから頑張って、踏み出すんじゃない? でもその結果、一緒に居れなくなる時も、そりゃ色々な理由であると思うけど……」
「……」
「でもそれは、男同士に限ったことじゃないよね?」
……そっか。
男だから駄目だったとか、思い込んでたけど……。
怖いのは、皆一緒、か。
頑張って、一緒に居る……。そっか。
「……なんか、オレ」
「ん?」
「目からうろこがポロポロしてる感じで」
「何それ」
クスクス笑われて、苦笑い。
挨拶に来たのに、結局色々相談しちゃって、お礼を言ったら、リクさんに、今度は四ノ宮くんと普通に遊びにおいで、と言われてしまった。
リクさんと別れて店を出て、ふー、と息をついた。
ここから誰かと一緒に店を出て。
ホテルに向かってたのは、そんなに遠くない過去なのに。
なんか、あの時の自分とは、全然違う感じ。
歩き出しながら、何があの頃と違うんだろうと考えてしまう。
和希に、あれを言われて振られた事実は変わらないし。
大好きでも、オレとは居られないっていう結論を突きつけられて、オレの全部否定された気がして。父さんにも、全否定されて。
あれから二年経つけど、何も変わらないまま、ついこないだまでは、二年前のまま、ずっと生きてきてたのに。
――――……四ノ宮と、絡んだから、かなあ……。
なんか、あれから変わったことは、それしかないような気がしてくる。
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