403 / 551
きづいたら
「椿先生と」2*奏斗
しおりを挟む高速に乗って、半分くらい来たところで、先生が「パーキングに寄っていい?」と言った。
「もちろん、いいですよ」
「お土産を見たくてね。あと、ついでに少し何か食べようか。家に着くのは十九時過ぎそうだし」
「そうですね」
少し先のパーキングに入って、バッグで駐車をしてる椿先生に気づく。
ほんと、先生、イケメンだなあ。運転姿、本当に様になるというのか。
ほんと、モテそう。
そんなことを思いながら、ふ、と四ノ宮を思い起こす。
……助手席。多分、笠井だろうけど。楽しそうに乗ってるんだろうな。
大好きだもんな、四ノ宮のこと。
そんな風に思いながら、なんとなく息をついて、車を降りた。
「ユキくんと二人で歩いてると、兄弟に見えるのかな? 親子かな?」
「え、親子はないですよ」
意外過ぎて、あは、と笑う。先生、すごく若く見えるし。
「兄弟がちょうどいいかもですね」
そう言うと、先生も、そうだね、と笑う。
そういえば行きのパーキングでは、皆に会ったっけ。
ここには居ないかな……。周囲を見たけど、知ってる顔は無さそうだった。
「おみやげ、ユキくんも見る?」
「あ、はい。見たいです」
一応実家には買ったんだけど、見ていると、美味しそうなアップルパイがでかでかと売り場展開されていた。真斗に買っていこ。と、アップルパイで思い出すのは、リクさんもだ。何の話でそうなったのかは覚えてないけど、大好きって言ってたのを覚えてる。なんだかんだ一年位ずっとクラブでお世話になってて、特に最近はまた余計なお世話もかけてたし。ただの店員さんという枠は飛び越えちゃってた感じだし……買っていこうかな。お酒は渡したけど、あれはあの日のお詫びだし。
オレ多分、しばらくあの店に行かないと思うから。ついでにこれ渡して挨拶してこよ。
「――――……」
少し前までは、あの店に行って、誰か見つけて発散するのが、普通だったのに。……なんであんなに、気持ち悪くなっちゃったんだろう。
やっぱり、トイレで迫られたり、変な薬飲まされて襲われそうになったり、怖いなって思ったからかなあ。今となっては、触れられなくても、そういう視線で見られるのもちょっと嫌かも。……勝手だなぁ、オレ。
そんなことを思いながら、ぶらぶら歩いてると、いくつか品物を持った先生に会った。
「ユキくんも買う?」
「あ、はい」
「美味しそうだね、アップルパイ?」
「はい」
あ、先生も好きそう、と思って、じゃあ運転のお礼にしようと思って、もういっこ取りに戻った時。通りかかったところに、すごく美味しそうな生ハムが売ってるのを見かけた。
……なんかこれ、すごい美味しそう。
四ノ宮の作ってくれるサンドイッチに、これ、入れてほしいかも。
じー、と見つめながらそんなことを思ってる自分に、はっと気が付いた。
何、さっきからずっと、思い出してるんだろ。と、ちょっと自分で焦りながらも。
……いいや。とりあえず、これは、買っていこう。食べたいし。
アップルパイのついでに、生ハムとチーズも買って、保冷材も貰って押し込んで、先生のもとに戻った。
今川焼をつまんだり、焼き立てパンを食べたりして、小腹を満たしてからまた車に乗り込んだ。
「色々美味しかったね」
「そうですね」
「そういえば、ユキくん、一人暮らしでご飯はどうしてるの?」
「えーと……」
最近はずっと四ノ宮と一緒だったけど……。
「食べに行ったり、自分でも作ったり……ですね」
ちょっと前までずっとそうしてた。
「偉いね、ちゃんと作ってるんだね」
そんな風に言いながら、先生が車を発進させた。
その時、ポケットのスマホが震えて、メッセージを見ると。
真斗が、準優勝したっていうメッセージ。全国には届かなかったみたいだけど、優秀選手で表彰されたらしくて、トロフィーを持ってる写真が送られてきていた。
「わ」
思わず声が出て、ん?と聞いてくる先生に、そのことを説明した。
すごいね、おめでとう、と言ってもらって、はい、と、笑顔で返しながら。
――――また四ノ宮が、浮かんでしまう。
一緒に帰ってたら、今、すぐ言えたのにな。
きっとめちゃくちゃ喜んでくれてた――――……と、ちょっと待て。
帰ったら。いや、明日言えば、いいじゃん。そうだそうだ。
そう思いなおして、真斗に返信してから、スマホをしまった。
78
お気に入りに追加
1,593
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ドS×ドM
桜月
BL
玩具をつかってドSがドMちゃんを攻めます。
バイブ・エネマグラ・ローター・アナルパール・尿道責め・放置プレイ・射精管理・拘束・目隠し・中出し・スパンキング・おもらし・失禁・コスプレ・S字結腸・フェラ・イマラチオなどです。
2人は両思いです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる