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きづいたら

「なんか変」*奏斗

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 色々考えながら、トイレから出たところでちょうど、今度は椿先生と遭遇。

「あ、先生」
「ん?」
「あの……やっぱり帰り、乗せてもらっても、いいですか?」
「ん。分かった、いいよ」
「すみません」
「学校の駅の近くなんだよね? 近くまで送るから」

 快く了解をもらえて少しほっとする。お礼を言ってから先生と別れて歩き始めた。

 今オレが全然落ち着けないことも含めて。
 もう少し、考えてから、四ノ宮と話したい。

 今のこの感じだと、へんな風にどうにかなって。なんかもう訳が分からなくなりそう。
 別に四ノ宮と一緒に居たくない訳じゃないけど。
 オレ、今ほんと。なんか変。寝不足なののもいけないかも。

 ちゃんと寝て、ちゃんと考えよ。
 今日帰ったら、四ノ宮の家に行くのはやめよ。

 あ。そうだ。真斗のバスケの試合結果は、夕方かなあ……。勝てるといいな。そう思いながら、スマホで真斗に、頑張れ、と送った。

 教室に入って、四ノ宮が一年の皆と話してる姿を見つける。ちら、とオレを見て、大丈夫かな、みたいな顔をした。

 オレは、四ノ宮の席に近づく。
 ……これ、別に変な話じゃないよね。どうせあとで知られるんだし、今、言おう。普通に。

「四ノ宮、あのさ」
「はい? ていうか、平気ですか?」

 見上げられると、ドキ、とする。
 あ、やっぱだめだ。

「ん、平気。あのさ、オレ、椿先生の車に乗せてもらうことにした」
「……分かりました」

 一瞬、固まったけど、すぐに頷いてくれる。……そんな気がしてた。

「もう決まりですか?」
「ん」
 頷くと、四ノ宮は苦笑しながら、頷いた。
 
「え? 先輩、大翔くんの車に乗らないんですか?」
 笠井に聞かれて、うん、と頷くと。

「え、じゃあ、乗せてってもらいたいなー」
「え、じゃあオレも」
「あたしもー」

 一年皆、すっかりその気で。
 四ノ宮は、ふー、と息をついて、イイよ、皆こっちで、と言った。笠井が嬉しそうなのも分かる。これは想定内。一年が皆でワイワイ始めたら、小太郎も聞きつけて、何々?と寄ってきた。

「相談があって、先生の車で帰ることにしたんだ。一年は、四ノ宮の車に乗ることになったみたい」
「ああ、そーなんだ。じゃあオレ達の車も少しメンバー変えようかな。きつきつで乗ってたから」

 そう言うので、オレが、そうだね、と頷いた後、ふと。

「何、先生に相談って? 何か困ったことあんの?」

 小声で聞いてくる小太郎に、「そんな大したことじゃないんだけど」と笑顔で返す。小太郎ってほんと、心配性というか。優しいというか。

「先輩、ちょっと」
 四ノ宮に笑顔で呼ばれる。ちょっと外、と言いながら、四ノ宮が立ち上がった。仕方なく、四ノ宮の後をついて、教室の外に出る。

 とりあえず、誰もいないのを確認してから、少しドアから離れたところで四ノ宮がオレを見下ろした。

「ほんとにいいの?」
「いいのって?」
「オレの車、里穂たち乗るけど、大丈夫?」
「……何、大丈夫って」
「へんな誤解、しないでね?」

 こそ、と囁かれる。

「しないってば」
「オレ、その気ないからね」
「あっても関係ないし」
「――――……そういうこと、すぐ言うし」

 むっとした四ノ宮に不意に頬を掴まれて、ぶに、と伸ばされる。

「ほんといいの? ――オレが里穂と付き合っても関係ない?」

 めちゃくちゃ小さな声で、そんな風に言われる。

「それ、嫌かどうか考えといて、帰ったら聞かせてよ」
「……っ別に嫌じゃないし、何なら付き合えばいいじゃんか」
「あーもームカつくなー。ほんと素直じゃないんだから」

 ぶにーーーと伸ばされて、マジやめてと引き離したところに、後ろから椿先生が笑いながら近づいてきた。

「子供みたいなじゃれ方してるね」

 うわわ。なんつーとこ見られてるんだ。
 そうださっきトイレ行ってたんだから、注意すべきだった……。

 ちーん、とへこんでると、四ノ宮が、「ちょっとムカついたので、ふざけただけです」と、笑ってる。

「終わったら、入ってきて。もうすぐ始めるから」

 クスクス笑いながら先生が教室に入って行ってしまった。

「もー、何してンの、絶対変に思われたし……」
「つか、あんたが素直じゃないからでしょ」
「素直だし!」

「もう帰りは、満足するまで話してきてください。何か話したいことがあるんでしょ? ……でも、帰ったら、オレと話してね」
「……寝不足だから、元気だったらね」

 ……今日は、元気の予定じゃないけど。
 それを言うと、また長くなりそうだから、言葉には出さず、心の中でそう言った。

 オレ達が教室に入ると、椿先生が「はーい、皆、始めるよー」と声を上げた。
 その声に、皆が午前中の席に座りなおした。



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