【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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きづいたら

「好きって」*奏斗

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「好き……て」

 好きって。何……好き?
 何かを言おうとした、その時、だった。

 ガチャ、とドアが開いた音。こんな瞬間だったのですごく驚いてしまって、咄嗟に振り返ると小太郎だった。

「あ、ユキ居たー」何だか寝ぼけ声で言いながら、近づいてくる。

「びっくりしたじゃん、居ないからーって四ノ宮も居たの? なにしてんの?」
「あ。うん。ちょっと、水飲んで……」
「そっか。早く寝ようよ、ユキ、腹痛かったんだし、ちゃんと寝なきゃだろ」
「あ、うん。そう、だよね」

 どうしよう、と思いながらも、小太郎に腕を引かれて立ち上がらされてるオレを見て、四ノ宮はにっこりしながら、いいよ、と口だけで言った。

 目を合わせて、ん、と頷くだけ頷いて、オレは、小太郎に引かれながら、部屋まで歩く。

「ユキ、もしかして全然寝てないの?」
「うん。なんか、眠れなくて」
「四ノ宮も?」
「オレは少し寝て起きたとこなんで」
「そっか。明日も朝からグループワークだし、早く寝よ」

 静かな声で話しながら、部屋のドアを開ける。小太郎が先に入って、ふすまを開けて、自分の布団に倒れた。
 部屋に入る前に、四ノ宮がオレのすぐ隣にきて、オレを見つめた。

「さっきのはまたちゃんと話すから。あと、帰りのことは、任せる。考えて」

 それだけ、こそ、と伝えて、四ノ宮はオレが頷くのを確認すると、にこ、と笑って見せて、部屋の奥の方に入っていった。

 オレも小太郎の隣の布団に入って、おやすみーと言ってくる小太郎に、おやすみ、と返した。
 そのまま、ドアの方を向いて、さっきの会話を考える。


『好きだから、大事にしたいし、一緒に居たい』

 ……嫌われてるとは、思ってはなかった。嫌いな奴にはあそこまで構わないだろうとは思うし。

 でも、あんな風に、「好きだから」なんて、普通言う? と考えてしまう。
 好きだからなんて、はっきり言葉にされると、なんだかすごく驚く。

 …………好き?
 どういう意味……??
 
 好き。
 ……好き?

 好きって、四ノ宮……。
 何だろう。――――……そういう、意味?

 さっきのまっすぐな視線を、思い出す。
 とく、と、鼓動を感じる。

 何だろう。
 ……なんか。ドキドキ、する?


「――――……」

 手を握って、口を押える。
 好き。……すき?

 あれ。でも。
 ……四ノ宮、男には興味ないって言ってたよな。
 ……てことは、違う? 好きって、違う意味か。ただ好きってこと?
 先輩としてとか。人として?
 あ、そっちかな……。でもそれって、あんな風に言う……?

 …………ちょっと待って。落ち着け。
 自分に向けて唱えてしまう。静かに、深呼吸。

 ……でもどう考えても、そういう意味で、オレを好きって。
 全然、分かんないよな。

 ……オレ、特に、四ノ宮には、変なところばっかり見せてる。
 和希とのことも、その後トラウマみたいになってることも知られてるし。
 それで恋なんかいらないって言って、してたことも、全部四ノ宮は知ってる。泣いたり、媚薬盛られたり、和希に会って動けなくなったり、正直、オレってば、四ノ宮にはみっともないところしか見せてないよな。

 ……好き、なんて、ある???
 そういう意味の好きじゃない、よな。

 てことは。やっぱり、人として?
 ……それですら、ちょっと良く分かんない。オレ、いいとこ、無くない??
 先輩として、もうちょっと、色々やってあげてて、とかならまだしも、むしろ、世話されてるのって、オレなんじゃ……?
 …………って、考えれば考えるほど、さっきの「好き」の意味は、分からなくなっていく。

 何で、「好き」なの、オレのこと。分からない。
 あんなにまっすぐに、見つめて、人に好きっていうのって何。

 「好き」

 ……でも。なんか。
 さっきの四ノ宮の、まっすぐな瞳を思い出すと。
 なんだか。心がじんわり。する。少し、とくとく鼓動が早くて……喜んでる、みたいな。


 ……どんな意味かは、分からないけど。
 人に知られたくないようなことも全部知ってる四ノ宮が、言ってくれた、から。

 ……なんか。それが、どんな意味だとしても。


 すごく――――……嬉しい、ような……。


 思った瞬間、ふ、と涙が滲んで。
 あれ? と瞬きをする。


 泣きそうなのがばれないように、静かに息をして。 
 オレは、瞳を閉じた。



 結局、全然眠れなくて。
 相当遅くに、ようやくうとうと、眠りについた。







(2023/8/27)
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