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きづいたら

「どうして」*奏斗

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「目が覚めたら奏斗、居なかったからさ。……大丈夫?」
「なんか眠れなくて」

 そう言うと、四ノ宮は苦笑い。

「そうなの? 疲れてないの?」
 言いながら、さっきまで椿先生が座っていたところに、四ノ宮が腰かける。

「疲れてるは疲れてるんだけど……」

 すごく静かな空間で、ごく小さな声でも、聞こえる。

 なんか……改めて、少し離れて、こうして見ると。

 いつもおかしい位に近い四ノ宮とは、違って見える。

 ……そもそも何で四ノ宮って、オレのことばっか、構うんだろ。と思ってしまう。

 ルックスもだし。……なんか、色々できるし。本人は裏表激しいとか言ってたり、おかしなことは言ってたりしたけど、外から見てれば、コミュ力高い、超人気ある奴だし。女の子にモテるのも分かるし。あと、なんか。

 …………優しい? 多分。すごく。

 オレの、自分でも面倒くさいとこに、面倒くさがらずにずっと付き合ってくれてる。無理矢理オレの中に入ってくることはなくて。相当面倒くさいだろうなって話をしても、なんか……黙って聞いてくれて。少し楽になることを、いつも言ってくれる、ような気がする……。

 最初の頃、めちゃくちゃ胡散臭いって思っててあんまり好きじゃなくて。絡んでからも、なんかため息だったり、しかめ面みたいなの方が多かった気がして、何だろって思ってて……いつからだっけなあ。なんか変わってきたの。

 ぼー、と考えてる間、四ノ宮はオレを見てる。

「……何で、黙ってんの?」
 そう聞くと、四ノ宮は、んー、と苦笑い。

「絶交って言われてたけど普通に話してくれてるなーとか思ったんだけど」
「……ああ。言ったっけ」
「何。忘れてたの?」
「……ていうか、誰も見てないとこで絶交しても意味ないし……」

 そう言うと、四ノ宮は、人の目なんて気にしなくていいのに、と笑う。

「オレが黙ってたのは、奏斗がすげー考えてるっぽい顔してるから」
 そんな風に言われて、まじまじと、四ノ宮を見てしまう。

「何か言いたいことあんのかなーと」
 もう敏いとか通り越して、ほんと、驚く。

「……あの、さ」
「ん」
「明日の帰り、なんだけどさ」
「うん」
「――――……椿先生の車に、乗って帰って、いい?」

 そう言うと、四ノ宮は、少し眉を寄せて、む、としたけれど。

「……理由は?」

 静かな声で、そう聞いてきた。

「さっきここで、少しだけ話してて」
「うん」
「……すごく考えたい、ことがあって」
「うん」
「先生と、話したいなって思った……から?」
「……ふーん……?」

 四ノ宮は、あくまで静かに、聞いてくる。
 
「それって、オレに話すんじゃだめなの?」
 じっと見つめられて、そう聞かれる。

 四ノ宮とのことを考えたいから。
 ……四ノ宮とじゃダメだ。

「……うん」

 頷くと。四ノ宮はしばらく黙っていたけれど、はー、と息をついた。

「奏斗がそうしたいのを、オレに止める権利はないけど」
「――――……」

「オレは奏斗と一緒に帰りたいし。何か考えてるならオレが聞きたい」
「……」

「奏斗が悩んでるなら、全部、知りたい」

 まっすぐな視線が、なんか胸に痛い。

 何だろう。
 ……最近たまに。胸が、痛い。


 どうして。四ノ宮は、いつも、こんな感じなんだろう。





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