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きづいたら

「超迷惑…」*大翔

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 食堂の奥に、宴会場みたいな畳の部屋。隣に別の団体が居るみたいだけど、仕切られていてほぼ貸し切り状態。
 飲み会というか情報交換というか、そんな感じで、皆好きなように座って、好きなように話してる。

 オレも話すメンバーをチェンジしながら適当に。
 とりあえず冴島さんは要注意だけど、奏斗のことばっか見てる訳にはいかないので、なんとなくたまに目に映す程度にしている。

「先輩たち、三年の秋には起業してたってことですもんね。すごいなぁ」

 奏斗がご機嫌で話してるのが聞こえる。
 卒業生、女の先輩は用事があるって言って夕方帰っていったけど、男の先輩達は泊っていくらしい。
 奏斗はずっと、明るい感じで話してる、楽しそうで何より。冴島さんも横には居ない。なんとなく、あの人はずっと奏斗の側に居るんじゃないかと思ったけど、そこまでじゃなかったのは良かった。

 オレ、心配しすぎか。
 可愛い顔してる、とかも、口に出して言っちまうあたり、他意はないのかもしれないと、ここにきて逆に思えてきた。風呂場で腰に触ってたのもあるから、要注意ではあるけど。

 それよりも、少し気になるのは、里穂がオレと一緒のとこによく居るよなぁってこと。別に嫌いじゃないけど、そういう意味では興味はない。でも、告られた訳でもないのに断るのもおかしいし、ただ、あんまり近くに居られるのもな……。

 今は椿先生が前に移動してきて、親父の仕事の話とかを聞かれて話し始めたので、里穂は反対側の先輩達と話し始めた。神社に二人でみたいなことはそうそうないだろうけど。……つか、オレが気にするほど奏斗はそれを気にはしてないと思うから、適当に同じ学部のゼミ仲間としていればいいのも分かってる。

 オレが気にするのは、こっちもまた、考えすぎなのかもだけど……。

 ふ、となんとなく息をついたところで、話していた椿先生と四年の先輩の酒が少なくなってきたことに気づいて、オレはメニューを差し出した。

「何か頼んできますよ」
 言うと、気が利くなー四ノ宮、と先輩が言い、オレからメニューを受け取った。その時。

「あーあ、なんか、隆、また悪酔いしてんな」

 オレの後ろ側に目をやって、苦笑い。
 隆先輩。……こないだ飲み屋で奏斗に肩組んで絡んでたな。

 振り向くと、案の定。
 また奏斗に絡んでる。

 ち……。またぶつかりに行くか。
 でも見た瞬間に急いで立ち上がって助けに行くのもどうかと思い、一瞬躊躇した。こないだは狭い店だったからぶつかれたけど、ここじゃな。話し途中だし酒を頼むか聞いてるとこだし。奏斗、とりあえず自分で離れろよ。若干イライラしつつ、とりあえず、先生の酒が決まったら、あっちにも酒の注文聞きに行って邪魔するか……。

「何、飲みますか?」
 早く決めてもらおうとそう聞いた時。椿先生が、オレを見た。

「それよりいったん、隆くん止めてきてもらおうかな……」
「ですね、あいつ酔っ払うと……」

 先生の隣の先輩のセリフが気になって、「何ですか?」と聞き返した。

「超迷惑なの、あいつ」
「何が」

 先生と先輩の顔を見比べた瞬間。

 きゃ、みたいな声と、ざわつく雰囲気。振り返ると、ちょうど。
 ――隆先輩が、奏斗にキスしたところだった。……はー。もー。ほんとに……。

「隆、キス魔なんだよね~……。オレもやられたことあるからさぁ」

 椿先生の横でそう言った先輩に、早く言えよと心の中で毒づく。

 奏斗が、バッと離れて手の甲で唇を抑えた瞬間、隣に居た他の先輩達が、隆先輩を止めようとしだす。「ちょっと止めてきます」オレが立ち上がると、椿先生は「よろしく」と苦笑い。
 急ぎ歩きで近づく間に、奏斗と隆先輩と、その近くの先輩達の声が聞こえる。

「お前、そろそろマジで捕まるからなー」
「ほんとそのくせやめろ」
「んー……? だってなんか、ユキって、可愛いじゃん」
「とか言って、お前オレにもしただろがー お前オレも可愛いの?」
「……つか、お前になんかしてねーし」
「忘れんのやめろや! せめて覚えてろ~」

 すごい勢いで言い返してる先輩達の手を振り払い、隆先輩は、奏斗に近づく。

「ユキ、ほんと可愛いよな。オレと付き合う?」
「冗談やめてください」

「冗談じゃないけどなー?」
「先輩、近すぎなので――――……」

 奏斗がかなり引いてるその状況を、超イライラして目に映したまま。そこにたどり着いたオレは、隆先輩が奏斗にかけてる手を掴んだ。



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