【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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きづいたら

「いい仕事…」*大翔

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  その後、五人で風呂にやってきた。

 先に洗おうよ、と奏斗だけに言って、ん? 何で?という視線を受けながらも、とっとと先に洗い場に向かい、さっさと洗わせて温泉に浸かった。

 だって、あとから洗わせたら、洗い場は丸見えだし。
 ……つか、マジで、男湯でそんなことを考える日が来るとは、思いもしなかったが。

 先に洗ってますねとオレが言ったから、佑と相川先輩と冴島さんは少しゆっくり入ってきた。三人も体を洗い始め、シャワーを使ってるので、オレは奏斗に少し寄った。

「……?」
 怪訝そうな奏斗。

「出たら、ささっと拭いて、服着てね?」
「……もー。馬鹿宮」

 ため息交じりのセリフが返ってきた。
 奏斗はオレから離れると、窓の方に移動していって、暗い空を見上げた。何となく、隣には行かず、後ろの方の壁に寄りかかった。
 
 ほんとオレ、何やってんだか。と思うけど。
 ……もうしょうがない。心配だし見せたくないし。

 なんとなく上を向いて、はーと息をつく。
 ふと視線を感じて、奏斗の方を見ると、ぱち、と視線が合う。

「ん?」

 首をかしげて見せると、むー、と口が尖る。
 ……可愛いんですけど。何だろ。

 クスクス笑ってしまうけど、奏斗は何も言わない。
 またぷい、と顔を背けて、外を見上げてる。

 上を見てる、奏斗の首とか、顎のラインとか。
 ――――……なんか綺麗っつーか。可愛いなあ。
 
 今度、絶対奏斗と温泉に行く大作戦を決行しよう。
 浴衣とか似合いそうだし……。浴衣着て、温泉街散歩とかもいいな。
 川とか。あー神社も、奏斗と行きたかったな。明日帰りの前に行くってのもあり? 十六時解散だったよな……行けるかな。

 温泉に沈みながら、なんとなくボーっとしていると、後から洗ってた三人が中に入ってきた。
 別に誰も体を隠さないので、自然と目に入ってきたけど。

「――――……」

 やっぱりオレ、絶対男が好きな訳じゃねえな……。
 一瞬、可能性を考えかけてみて、げんなり。

「どした? のぼせた?」
 知らず変な顔をしてたのか、少し離れたところに座った佑に、首を傾げられてしまった。

 ……奏斗じゃなかったら、無いな。
 つか。奏斗だとあり。ありというか、奏斗しか見てないとか。ほんと、自分の気持ちの変化がすごすぎて、なんだかなーと少し考えてしまう。

 ほんの少し前までは、なんだか鋭くて近づきたくない、ただの先輩だったのに。オレ、男に興味なかったし。

「のぼせたなら一旦出たら?」
「……いや、のぼせてはないけど」

 オレが佑にそう答えていたら、相川先輩が奏斗を見て、苦笑しながら言った。

「ユキ、顔、真っ赤」
「え、そう?」
「なんかユキって、白いから余計かなあ。大丈夫?」
「え、全然大丈夫だよ。赤い?」
「うん、赤い」

 相川先輩に言われて、奏斗がクスクス笑ってる。

「ていうか、肌白すぎじゃね?」

 相川先輩が言ってても腹が立たないのに、冴島さんが言うと、何だかムカつくのはなぜだろうか。

「そうですか?……てか、確かにオレ、冴島さんと色、全然ちがいますね」
「オレ、もともと黒いかも。にしても……日に当たってる?」
「うーん、オレ部活もバスケだったので、ずっと白いかも。サッカー部とか、真っ黒でしたね」

「なーユキ、オレと比べてみる?」

 相川先輩が腕を伸ばして、それに合わせて、奏斗も伸ばしてる。

「……うーん、確かにオレ、白いかも。夏、焼こうかな~」

 のんきに奏斗は言ってるけど。

 ……出たい。奏斗を連れて。
 腕とか出してると、上半身も出るから、胸とか丸見えだし。
 ……って男、だけど。

 はー。何であんな可愛いのかな、くそ。
 ざ、と、立ち上がる。

「先シャワー使うから出てる」
「ああ、うん。どーぞ」

 佑が頷いて、壁に寄りかかるのを見てから、奏斗の方は見ずに、シャワーの前。すると、案の定。奏斗も出て、隣に来た。

 今の言い方すれば、きっと、先にシャワー使わなきゃと、奏斗なら思うかなと思って。しかも、これで目を合わせたら、一緒には来ないだろうなと思ったので、視線を向けなかったんだけど。

 正解、かな。今のは。
 とりあえず、とっとと、ここ出よう。

「流しましたか?」
「うん」
「出ましょ?」
「……ん」

 ちょっと、間があったけど、頷いてくれたので。
 もちろん奏斗を前に歩かせて、後ろから視線をガード。さっさと脱衣所に連れ出すことに成功。


 いい仕事したのでは、と。とりあえず自画自賛しつつ。
 前を歩いてる奏斗。
 普段は、ベッドとバスルーム以外で奏斗の裸は見ないので、こんなに明るいところで見ると、なんだか綺麗すぎな気がして、目をそらしてしまう。

 あっちの三人の裸には、勝手に見といて悪いが、心底げんなりしてたのに。
 と自分に呆れる。





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