上 下
381 / 551
きづいたら

「いい仕事…」*大翔

しおりを挟む


  その後、五人で風呂にやってきた。

 先に洗おうよ、と奏斗だけに言って、ん? 何で?という視線を受けながらも、とっとと先に洗い場に向かい、さっさと洗わせて温泉に浸かった。

 だって、あとから洗わせたら、洗い場は丸見えだし。
 ……つか、マジで、男湯でそんなことを考える日が来るとは、思いもしなかったが。

 先に洗ってますねとオレが言ったから、佑と相川先輩と冴島さんは少しゆっくり入ってきた。三人も体を洗い始め、シャワーを使ってるので、オレは奏斗に少し寄った。

「……?」
 怪訝そうな奏斗。

「出たら、ささっと拭いて、服着てね?」
「……もー。馬鹿宮」

 ため息交じりのセリフが返ってきた。
 奏斗はオレから離れると、窓の方に移動していって、暗い空を見上げた。何となく、隣には行かず、後ろの方の壁に寄りかかった。
 
 ほんとオレ、何やってんだか。と思うけど。
 ……もうしょうがない。心配だし見せたくないし。

 なんとなく上を向いて、はーと息をつく。
 ふと視線を感じて、奏斗の方を見ると、ぱち、と視線が合う。

「ん?」

 首をかしげて見せると、むー、と口が尖る。
 ……可愛いんですけど。何だろ。

 クスクス笑ってしまうけど、奏斗は何も言わない。
 またぷい、と顔を背けて、外を見上げてる。

 上を見てる、奏斗の首とか、顎のラインとか。
 ――――……なんか綺麗っつーか。可愛いなあ。
 
 今度、絶対奏斗と温泉に行く大作戦を決行しよう。
 浴衣とか似合いそうだし……。浴衣着て、温泉街散歩とかもいいな。
 川とか。あー神社も、奏斗と行きたかったな。明日帰りの前に行くってのもあり? 十六時解散だったよな……行けるかな。

 温泉に沈みながら、なんとなくボーっとしていると、後から洗ってた三人が中に入ってきた。
 別に誰も体を隠さないので、自然と目に入ってきたけど。

「――――……」

 やっぱりオレ、絶対男が好きな訳じゃねえな……。
 一瞬、可能性を考えかけてみて、げんなり。

「どした? のぼせた?」
 知らず変な顔をしてたのか、少し離れたところに座った佑に、首を傾げられてしまった。

 ……奏斗じゃなかったら、無いな。
 つか。奏斗だとあり。ありというか、奏斗しか見てないとか。ほんと、自分の気持ちの変化がすごすぎて、なんだかなーと少し考えてしまう。

 ほんの少し前までは、なんだか鋭くて近づきたくない、ただの先輩だったのに。オレ、男に興味なかったし。

「のぼせたなら一旦出たら?」
「……いや、のぼせてはないけど」

 オレが佑にそう答えていたら、相川先輩が奏斗を見て、苦笑しながら言った。

「ユキ、顔、真っ赤」
「え、そう?」
「なんかユキって、白いから余計かなあ。大丈夫?」
「え、全然大丈夫だよ。赤い?」
「うん、赤い」

 相川先輩に言われて、奏斗がクスクス笑ってる。

「ていうか、肌白すぎじゃね?」

 相川先輩が言ってても腹が立たないのに、冴島さんが言うと、何だかムカつくのはなぜだろうか。

「そうですか?……てか、確かにオレ、冴島さんと色、全然ちがいますね」
「オレ、もともと黒いかも。にしても……日に当たってる?」
「うーん、オレ部活もバスケだったので、ずっと白いかも。サッカー部とか、真っ黒でしたね」

「なーユキ、オレと比べてみる?」

 相川先輩が腕を伸ばして、それに合わせて、奏斗も伸ばしてる。

「……うーん、確かにオレ、白いかも。夏、焼こうかな~」

 のんきに奏斗は言ってるけど。

 ……出たい。奏斗を連れて。
 腕とか出してると、上半身も出るから、胸とか丸見えだし。
 ……って男、だけど。

 はー。何であんな可愛いのかな、くそ。
 ざ、と、立ち上がる。

「先シャワー使うから出てる」
「ああ、うん。どーぞ」

 佑が頷いて、壁に寄りかかるのを見てから、奏斗の方は見ずに、シャワーの前。すると、案の定。奏斗も出て、隣に来た。

 今の言い方すれば、きっと、先にシャワー使わなきゃと、奏斗なら思うかなと思って。しかも、これで目を合わせたら、一緒には来ないだろうなと思ったので、視線を向けなかったんだけど。

 正解、かな。今のは。
 とりあえず、とっとと、ここ出よう。

「流しましたか?」
「うん」
「出ましょ?」
「……ん」

 ちょっと、間があったけど、頷いてくれたので。
 もちろん奏斗を前に歩かせて、後ろから視線をガード。さっさと脱衣所に連れ出すことに成功。


 いい仕事したのでは、と。とりあえず自画自賛しつつ。
 前を歩いてる奏斗。
 普段は、ベッドとバスルーム以外で奏斗の裸は見ないので、こんなに明るいところで見ると、なんだか綺麗すぎな気がして、目をそらしてしまう。

 あっちの三人の裸には、勝手に見といて悪いが、心底げんなりしてたのに。
 と自分に呆れる。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

処理中です...