【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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きづいたら

「約束」*大翔

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 割と空いてて、順調。
 次のパーキングエリアは、大きくて、店も多いので休憩を入れることにした。

「ちょっと寄って、何か飲み物でも買お。トイレも」
「うん」

 道は空いてて良かったけれど、結構このパーキングは混んでる。空いてる端の方に停めて、奏斗と車を降りた。トイレに向かって歩き出しながら、隣の奏斗を見つめる。

「奏斗が好きな曲、子守歌みたいなのが多いね」
「はー?? いい歌、でしょ?」

 ぶー、と膨らんでオレを見上げてくるその顔。わざと言った言葉にすぐ反応するの、素直。

「うん。いい歌。しっとりしてて。うとうとしそう」
「ほめてんの、けなしてんの?」
「ほめてる。オレも好きだよ」
「ほめ方、変。じゃあ、次、四ノ宮の曲かけよ」
「ん、いーよ」

 クスクス笑いながら頷いて、トイレを済ませる。手を洗って、一緒にトイレから出たところで、前方に、見知った顔が見えてしまった。内心、うわ、と思うが。当然、顔には出さない。

「あー! 大翔とユキ先輩!」
「あれーユキと四ノ宮ー!」

 同学年たちと、相川先輩達が近づいてくる。奏斗は、わー皆ー!とか言って、素直に喜んでるけど。
 オレはなんとなく、せっかく今だけは二人の空間なのに、という気持ちがあるから、少し気分は落ちる。

「偶然会えるのすごいね」
 里穂が笑顔で言って、オレを見上げてくるので、「まあ、ここ、一番大きいしね」と、一応笑顔で頷いた。

 ……向こうで会うんだし、別にここで会わなくてよかったけど。という心の声とは逆に、なんとなく、一緒に飲み物を買いに店内に進むことになってしまった。

 奏斗は先輩達に取られたし。オレの隣には里穂が居るし。
 ……女子と楽しそうにしてるとか、奏斗に思われたくないんだよな。そんなことを思いながら、ふーと息が漏れる。やっと飲み物を買い終えて、店の外で立ち止まった時、相川先輩が、そうだ、と皆を見回した。

「車、メンバーチェンジする?」
「え?」
「一年同士がよければそれでもいいと思ってさ。オレらと一緒だとちょっとは気ぃ遣うだろ?」
 なんて言ってるけど、相川先輩にそんな気を遣う奴はいないと思うが。いい意味で、ものすごく気安い。

「そんなことないですよー楽しいですよ?」
 一年の三人、口をそろえて言って、相川先輩は、それに笑って頷きながらも。

「どーする? ユキ、こっちの車来る?」
 と、奏斗に聞いた。

 は? なんつー提案してくんの。何の意図も無さそうだし、思い付きで楽しそうに言ってくるのが厄介。……断りにくいし。
 なんとなくいつもどおりの王子の仮面がはがれて、思い切りムッとしてしまいそうになった時。

 奏斗がちらっとオレを見て、それから相川先輩に視線を戻した。

「んー……でも、四ノ宮の車でいいよ。その予定だったし。荷物とか移動すんのもめんどいし」

 奏斗が普通にそんな風に言って、ふ、と笑った。相川先輩は、「まあそっか、じゃあ向こうでな~」なんて即言って、笑ってる。オレの中に波風を立てるだけ立てて、けろっとしているのが、なんか、先輩らしい……。

「じゃね、またあとで」
 里穂がそう言って、オレを見上げるので、ん、と頷いて別れた。
 なんとなく向こうが歩いていくのを見送りながら、無言。

「四ノ宮、いこ」

 奏斗がそう言って歩き出す。すぐに隣に並んで、車に向かって歩き始めながら、数歩黙っていた。

「……良かったの、向こう。行かなくて」

 行って欲しいなんてかけらも思わないまま、そう聞いてみると、奏斗は黙ったままふっとオレを見上げた。

「んー……小太郎は、一年を一緒にしてあげようと思って、言ったんだと思うんだけどね」
「ん」
「まだ四ノ宮の好きな曲聞いてないし。さっき聞くって約束したろ」
「――――……ん。そだね」
「……あと、一緒に行くって約束したし」
「そだね」

 約束、か。微笑んでしまう。
 なんか。嬉しい。

 ……なんかっつーか。
 すごく嬉しい、かも。

 一緒に車に乗り込む前に、辺りを確認。端に停めたから、あまり車もない。
 コーヒーをドリンクホルダーに入れてすぐ、奏斗の腕を掴んで、引き寄せた。

「え……んっ」
 逃げられないように、後頭部を押さえて、キス。
「……っ」
 すぐに離したら、これでもかと開いたでっかい瞳が目の前にあって、笑ってしまった。

「……ごめんね」
 何か言われるより先に、苦笑いで謝ると。
 ぐい、と押しのけられた。

「……見られたらどーすんだよ」

 何だか、すごく睨まれる。
 ……ちょっと赤い。すぐ赤くなる。

「大丈夫、この車、中見えにくくなってるし。人居なかったし」

 と言うと、「次したら絶交」と言われて、あ、また絶交がきたなぁ、なんて苦笑い。

「つかさ。だってなんか、奏斗がオレと居てくれるの、嬉しいなーと思って」

 言いながらエンジンをかけて、奏斗を見ると、奏斗は、オレを見つめてから、ふい、と視線を逆側に向けた。そのままシートベルトをしめてから。

「もー出発! あ、四ノ宮のスマホで音楽、かけて」
「あ、はいはい」

 スマホを取りだして、たまに使う音楽アプリを開き、奏斗に渡す。

「はい。好きなのかけて」
「あ、うん」

 受け取って、並んでるプレイリストに、あ、これ好き、とか言ってる奏斗を見ると、何だか気持ちがすごく緩む。


「車、だすよ」
「ん。お願いします」
「ん」

 くす、と笑ってしまいながら、オレは車を発進させた。



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