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ずっとそばに

「置物」*奏斗

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「なあ、さっきの続きだけど。大翔はさ」
「何?」
 お父さんの言葉に、四ノ宮は嫌そうに返事。

「何で、少し会うのも嫌なんだ? 軽く考えてくれたらいいんだけど」

 ……あ、お見合いの話かな。
 口出さないようにしてよう。とひたすらくるくる。

「だから、興味ないし。ていうか、奏斗の前でその話すんなよ」
「あ、オレは、全然いいのでどうぞ」

 四ノ宮の声にオレが即返すと、また四ノ宮、ムッとしてオレを見るけど、オレは完全に気付かない振り。
 ……オレを巻き込まないで、二人で話してください。

「少しだけごめんね」
「いえいえ、どうぞ」

 なぜか謝られて、ぷるぷる首を振る。じっとりした感じの四ノ宮の視線は無視。たこ焼きだけを凝視する。

「その相手がさ、父さんの仲の良い友達の娘さんでな。お前のことをパーティで見かけて、会ってみたいんだって。しかも、なかなか言い出せなくてとか聞くと、可愛いだろ? 仕事上の取引先でもあるし、父さん達も同席するから、食事するくらい良くないか?」
「……つか、親父達が同席したら、ますます見合いじゃんか」
「別に二人きりでいいなら、それでもいいけど」
「……マジで、無し」

「写真見たけど、すごく可愛い子だぞー? 良い子そうだし」
「間に合ってる」

 四ノ宮はとりつくしまもない感じで返事をしてる。
 お父さんは、はー、とため息をつきながら、葛城さんに視線を向ける。

「親戚たちからの見合い話は全部断ってやってるだろ。な、葛城?」
「そうですね」
「会って気に入らなきゃそれでいいって、向こうの父親は言ってるからさ」
「会っても無駄だって」
「……ふうん?」

 オレはもはや、ただたこ焼きをくるくる回すだけの置物みたいになっていたつもりだったのだけれど。

「雪谷くん、大翔と仲良いなら、大学生活とかも詳しい?」
「え? あ。仲? ……良くはないです」

 突然聞かれて、とっさに言ってしまった一言に、四ノ宮は「はー?」と超不満気。お父さんはクスクス笑って、「大翔の一方通行か」とか言ってる。

 ん? 一方通行? ど……どういう意味? ん?
 頭の中はたくさんのはてなが飛んでるけど、普通に対応するなら言うだろう言葉を、一生懸命探す。

「ゼミが一緒なんですけど、学年違うから大学は一緒に居ないので」
「そういえば、先輩だって聞いたような……って、大翔、何で呼び捨てしてるんだよ?」
「それ、姉貴にも言われたけど……いいんだよ、仲良いから」
「仲良くはないって言われてるけどな」

 お父さんの言葉に、四ノ宮が分かりやすくムッとしてから、オレを見る。

 スルー、スルー。
 四ノ宮のバカ。いちいち反応すんなってば。変に何か……何かって、それすらよく分かんないけど、とにかく何か悟られたら困るのは絶対お前じゃんか。もう。ほんとバカ。

 あーもう……。
 とか思っていたら、はっと気づく。

 さっきの写真とか二号とかの話で、オレ、遊園地行った時のノリでとか言ったけど……。
 ていうか、大学生の、ゼミが一緒なだけの先輩後輩で、男二人で遊園地行くかな? しかも、それで写真撮って、ぬいぐるみ買って帰ってきて、しかも全然似合わない四ノ宮の家に置くとか……あるかな?

 待って。ある……?
 よーく考えてみるけれど。

 百歩譲って、遊園地位なら。隣だし、久しぶりに行ってみる? とかで行ってもいいかもだけど。写真買ってきて飾ってて、ぬいぐるみ、しかもあんなにくそでかいの買ってきて、四ノ宮の部屋に置くって……無いぞー。もー、ノリだとかそんなんじゃないよー絶対無いよー。
 ああ、もう……。さっきのフォローしてるつもりだった発言すら、思い起こすと、バカみたいで。

 もうただただ、くるっくるっと、たこ焼き回し続けていると。

「奏斗、回すの楽しすぎる?」

 四ノ宮がクスクス笑いながらオレにそんなことを言うけど。
 ……バカ、もう、オレはそれどころじゃないんだよ。

「もう焼けたんじゃない? 皿にのせよっか。親父、皿貸して」
「ん」

 四ノ宮親子が、目の前でお皿をやり取りしてるのを見ながら、そういえば、「親父」って呼ぶんだなぁ、と。「お父様」「父上」とかじゃないんだ。まあそれは無いか。「父さん」とかが似合いそうだけど。
 ……もうそんなどうでもいいことのほうに思考が飛んだりする。

「あ、葛城さん、取りますね」
 そう言うと、葛城さんがオレに皿を渡してくれる。

 いい形で丸くなってるたこ焼きを選んで、葛城さんに渡した。





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