上 下
345 / 551
ずっとそばに

「くるくる」*奏斗

しおりを挟む


 電話で呼び出された葛城さんがやってきて、なんとなく三人で出迎えたオレ達を見て、何も言わず苦笑したのが、なんかもう色んな意味がありそうで、なんかもう、本当にもう、脱力して、へなへな座り込んでしまいたい気分だった。
 とりあえず二人の上着を別の部屋に掛けてから、たこ焼きパーティ……いや、パーティって何。四ノ宮のお父さんが言ったんだよな、パーティじゃないじゃん。別に、ただたこ焼き食べるだけだし。
 なんでたこ焼きパーティなの……。とまた脱力しかけながらも、オレはさっきまで四ノ宮のお父さんが抱っこしていた二号を、ソファの方に移動させたのだけれど。

「……雪谷さん、それって大翔さんのですか?」

 四ノ宮の家にあるんだから、絶対そうなはずなのに、あまりにも意外に思ったのか、そういうことあんまり聞かなそうな葛城さんに、聞かれてしまった。

「こないだ遊園地に行った時に、ノリで……」
「……なるほど」

 クス、と笑われて。ああ、もう何を思われてるんだろう。いや、ここにあるってことは買ったの四ノ宮だから……似合わないって思ってるだけに違いない。気にしないし、笑った理由も聞かない聞かない。
 と、思いながらテーブルの方に戻ると、そこで、今更目に飛び込んできた、カウンターに飾られてる、ジェットコースターの写真。

 ちーん……。
 もう無理。良く分かんないけど、もう無理。

 ……と、なってるんだけど、排除しなきゃと思い、なんとか普通に、言葉を絞り出す。

「四ノ宮、これ、片付けようよ。ふざけて買ったけど、やっぱ変だよ、飾ってるの」
「……ああ。そう、だね」

 何を思ってるのか知らないけど、「ふざけて買った」で押し通そうとしてるオレの一生懸命な対応に、あんまりな気のない反応……。もっと、ふざけたというところを強調して応えてほしい。……でももういい。無視だ。
 立てるようになってる後ろの部分を折って平らにしてから、カウンターの端に、伏せた。
 こんなの飾った横で、四ノ宮のお父さんと葛城さんと、たこ焼き作るなんて無理。

 もう本当ならその場で倒れたい気分になってるんだけれど。四ノ宮が色んな材料を冷蔵庫から出してきてテーブルに並べてから「座ろ」と言った時は、ささっと超素早く動いて四ノ宮の前の席に座った。絶対四ノ宮の隣に座るのはやめようと思って。だって、並んでるとこを、前から、お父さんと葛城さんに見られるとか絶対嫌だと思ったから。なのに、四ノ宮ときたら、「は? 何でそっち行くの」みたいな顔するし。何で隣に座ろうと思ったのかを逆に聞きたい。……聞けないけど。もう無視。ひたすら無視。

 なんだかもう、色々な意味でたこ焼きの前から、勝手に一人、疲れ果ててる。
 四ノ宮がホットプレートにたこ焼きの液を流し込んでいくのを眺めた後、具を詰めてくのだけど……。

「もう、好きにしていーよ。はい」

 四ノ宮の苦笑いの投げやりとも言えるセリフとともに、中に入れるものを配られた。オレがタコを入れてって、その後、ほかの三人が揚げ玉やネギや紅ショウガを入れていく。

「下が固まるとくるって回るらしいから……奏斗、やりたいでしょ?」
 四ノ宮がクスクス笑ってそう言いながら、ピックをオレに渡してくる。

 別にやりたいなんて言ってないけど……。
 ……でもちょっとやりたいけど。

「親父と葛城はやんなくていいよね?」
「二人に任せるよ」

 四ノ宮のお父さんは笑いながら、そう言ってくる。

「大翔さん、買ったんですね、ホットプレート」
「そう。焼肉もできるし」

 ……焼肉も。……オレと、かな??
 思いながらオレはそれには反応せず、たこ焼きを回すことにとりあえず、全神経を集中させることにする。
 じゃないと色々考えて、ほんと疲れるから。

「翔一さま、すぐ戻られるとおっしゃいましたよね?」
 葛城さんが苦笑しながら、そう言ってる。

「ああ、そのつもりだったんだけど……たこ焼きの準備してるからさ」

 笑いながら答えつつ、オレと四ノ宮がくるくる回してるのを眺めてくる。



 
(2023/6/8)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

ドS×ドM

桜月
BL
玩具をつかってドSがドMちゃんを攻めます。 バイブ・エネマグラ・ローター・アナルパール・尿道責め・放置プレイ・射精管理・拘束・目隠し・中出し・スパンキング・おもらし・失禁・コスプレ・S字結腸・フェラ・イマラチオなどです。 2人は両思いです。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

処理中です...