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ずっとそばに
「似てるかも」*奏斗
しおりを挟むリビングに入ってすぐ。テーブルのとこの椅子に座ってる二号を発見。
何でこんなとこに座ってんの二号。
ちょっと唖然としていると、四ノ宮のお父さんが二号を抱き上げた。
「雪谷くん、これ知ってる?」
「え。あ、はい」
「あ、知ってるんだね、そっか、部屋にくれば目に入るか」
そうですね、と笑い返しながら、スーツ姿のイケてるおじさんが、ぬいぐるみを抱きかかえてる姿に。しかもそれが、四ノ宮のお父さん。
ヤバい。もう、どうしていいか分かんなくなってきた。
でもって、テーブルの上には、タコ焼き機とその準備。
なるほど、お祭りで食べるものって言ったのは、これか、と思いながらも、どう反応していいのやら。
作ってくれようとしたんだよね。
お父さんが居なかったら、今の気持ちのままなら、うわ、すごいって。ホットプレートもしかして買ったの?て言うとこなんだけど。……いや、なんか変だよね、四ノ宮がオレにサプライズみたいにたこ焼き準備して、オレは勝手に鍵を使って入ってきてって、絶対変だよね?
「二人でたこ焼きパーティー?」
「そう。今からするから、帰って? スーツに匂いつくよ?」
四ノ宮、本気で絶対帰ってほしいんだな。分かってたけど、もうド直球に帰れって言ってるし。
「いやでも……たこ焼きなんて久々だな」
「は?」
四ノ宮はめちゃくちゃ低い声でそう言って、自分のお父さんを見て固まってるけど。
「しかも大翔手作りか。邪魔してもいいかな?」
四ノ宮のお父さんは、何でか、オレを見て、そう聞いてくる。
……え。つか、オレ、これを断ることなんてできる訳がないと思った瞬間。
「ダメ。絶対。奏斗との分しか無いから」
オレが何か言うよりも早くそう言ったのだけれど、お父さんは四ノ宮のそのセリフを聞いて、オレをふと、見つめた。
「そうそう、さっきからどこかで聞いたなーと思っていたんだけど」
何だろう?と思いながら、続く言葉を待っていると、オレをじっと見て、ふふ、と笑った。
「今度、大翔とパーティーに来てくれたりするかな?」
「あ……はい。行かせてもらう予定で……」
「スーツの採寸で、瑠美にも会ったり?」
クスクス笑いながら、もう確信しているだろう質問をオレにしてくる。
「はい」
頷くしかなくて、頷いた後、「スーツ、ありがとうございます」と言うと、四ノ宮のお父さんは、にっこり笑って首を振る。
「葛城の話だと、完全にこちらから誘ったようだし……」
何だかじっと見つめられて、それから、ふーん、と笑われる。
「着てもらえれば良い宣伝になるって聞いてたんだけど。うちのスーツ、着こなしてくれそうだね」
「いやあの……入学式とか七五三感がすごかったので……」
「ん? 大学の入学式?」
「はい……」
「七五三。ふ。そんなことないと思うけどね」
口元を隠して少し笑って、四ノ宮のお父さんはオレを見つめる。その隣の四ノ宮の、すごーく困ったみたいな表情も一緒に目に入って、オレは苦笑い。
なんか、お父さんて、四ノ宮がもうちょっと素直に笑うようになった感じ、なのかなあ。
やり手の社長さんなんだよね、確か。会社いくつかやってるって。
こんな優しい雰囲気で、やり手か……。
四ノ宮が、色々表に出さず、誰から見ても王子だったのは、この人に似てるのかな。今オレはこの人をうさんくさいとは、思ってないけど。もしかして、もう熟練されちゃってて、うさんくささすら、感じさせないとか?
だとしたら、四ノ宮よりも怖いけど。
そこまで考えて、ふと、思い直す。
なんだかんだ言って、四ノ宮って、裏も表も優しいから。やっぱりお父さんも優しいのもしれない、のかな。
「で、雪谷くん」
「はい?」
「たこ焼き。一緒にやってもいいかな?」
「えっと……」
四ノ宮を見るけれど、四ノ宮は小さくプルプル首を振っている。
「……はい」
って言うしかねーじゃん!
あーあー、みたいな顔、すんなよー!
と見るからにがっくりしてる四ノ宮に、心の中で叫んだ。
「葛城も呼ぼうか。タコや粉が足りなかったら、下の店で買ってきてもらおうか?」
「いいよもう……めちゃくちゃ作れるくらい買ってきてるから」
はーとため息の四ノ宮に、お父さんは、ははっと笑いながら、スマホを耳に当てた。
「ああ、葛城? たこ焼きパーティするみたいだから、あがってきてもらえる? ……ああ、そう。雪谷くんも居るよ。じゃあ待ってるから」
そんな会話をして、通話を切ると、スーツの上着を脱いで、ネクタイを緩めた。
やっぱり、すごく似てるかも。
そう思いながら、なんだかすごく嫌そうにお父さんと会話してる四ノ宮を見る。
これから、ここで、葛城さんも含めて、皆でたこ焼きパーティか。
どんな空間だよー。
うう……帰りたい。
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