341 / 557
ずっとそばに
「突然の」*大翔
しおりを挟む「シャワー浴びてきて。何分位で来れそう?」
「十五分位、かな」
「分かった。鍵、開けて入ってきて? オレ色々してると思うから」
オレがそう言うと、少し考えるようにしながらも、ん、と頷いた奏斗と別れて、部屋に入った。
手を洗ってから、色々準備を始める。
あー……たこ焼き、終わってからシャワーの方が良かったかな。匂いそう。
あとで一緒に入ってもいっか。……嫌がるかな。
めちゃくちゃ嫌がられそうで、そんな奏斗を思い浮かべると、苦笑いが浮かぶ。
とりあえず、換気扇は回しとくか……。
ホットプレートの電源を入れて、温め始める。
たこ焼きの粉を計って、水を入れて混ぜているところで、スマホが鳴った。ボールを持ったままスマホを見ると、葛城からだった。
さっきの話の続きか、無理無理切ったから小言か。とにかく今出なくてもいいかなと判断。しばらくして鳴りやんだが、表示を何気なく見ると、着信が二件、となっていた。
……あれ。さっき、歩いてる時にでも鳴ってたのか? 気づかなかった。
二回目か……。仕方ねーな、掛けなおすか。
粉も混ぜ終わったし、あとは流し込んで焼くだけだから、奏斗が来てから一緒にやればいいしと思い、スマホを持った瞬間。
インターホンが鳴った。しかも、一階のエントランスのとこじゃなく、部屋の前についてる方の音。
「早いな……」
時計を見て、首を傾げる。鍵を使って良いって言ったのにな。そう思いながら、スマホを持ったまま、玄関に向かった。サンダルをひっかけて、鍵を開けると同時にドアを開けた。
「勝手に入っていいよって――――……」
いいよって言ったのに。
言いかけた言葉は、相手の顔を見た瞬間消え失せて、硬直。
「……は?」
「大翔、元気か?」
スーツ姿。仕事帰りっぽい、父親の突然の来訪に、言葉が出てこない。
「おや、じ? は? なんで?」
「まあ話は中でする」
言いながら、靴を脱いで部屋に上がると、洗面所で手を洗い、ネクタイを少し緩めながら、当然のようにリビングに向かう親父に。
「ちょっと待って。何しにきたんだよ? こんな突然」
なんとなく止めてしまったのは、中にたこ焼きの準備がされているから。
……絶対、オレっぽくねーって思うに違いない。そう思って止めはしたけれど、なんかすげー気まずい。
「……何か見られたくないものでもあるのか?」
「いや、別に……」
「一人暮らしを始めたのに、様子も見に来てなかったからな。仕事がこっちの方だったから、様子見がてら寄った。見合いの件も話しにきたぞ」
「だからそっちはしないって葛城に……って、葛城は?」
「車で待たせてる。すぐ戻るからと言ってきた」
親子水入らずで話したいと思ってな、とか言いながらリビングに足を踏みいれた親父は、数歩先で、固まっている。
「――――……変わってるな、大翔」
「……は?」
「一人でたこ焼きパーティか?」
ちょっと呆れたように言われて、はー、と脱力。
「んなことするか……」
「じゃあ誰か隠れてるとか?」
「……今は居ないけど」
「これから来るのか? じゃあ早めに話をするか。葛城も待ってるしな」
……奏斗に連絡しよう、連絡するまで来んなって。
91
お気に入りに追加
1,686
あなたにおすすめの小説
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる