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ずっとそばに
「突然の」*大翔
しおりを挟む「シャワー浴びてきて。何分位で来れそう?」
「十五分位、かな」
「分かった。鍵、開けて入ってきて? オレ色々してると思うから」
オレがそう言うと、少し考えるようにしながらも、ん、と頷いた奏斗と別れて、部屋に入った。
手を洗ってから、色々準備を始める。
あー……たこ焼き、終わってからシャワーの方が良かったかな。匂いそう。
あとで一緒に入ってもいっか。……嫌がるかな。
めちゃくちゃ嫌がられそうで、そんな奏斗を思い浮かべると、苦笑いが浮かぶ。
とりあえず、換気扇は回しとくか……。
ホットプレートの電源を入れて、温め始める。
たこ焼きの粉を計って、水を入れて混ぜているところで、スマホが鳴った。ボールを持ったままスマホを見ると、葛城からだった。
さっきの話の続きか、無理無理切ったから小言か。とにかく今出なくてもいいかなと判断。しばらくして鳴りやんだが、表示を何気なく見ると、着信が二件、となっていた。
……あれ。さっき、歩いてる時にでも鳴ってたのか? 気づかなかった。
二回目か……。仕方ねーな、掛けなおすか。
粉も混ぜ終わったし、あとは流し込んで焼くだけだから、奏斗が来てから一緒にやればいいしと思い、スマホを持った瞬間。
インターホンが鳴った。しかも、一階のエントランスのとこじゃなく、部屋の前についてる方の音。
「早いな……」
時計を見て、首を傾げる。鍵を使って良いって言ったのにな。そう思いながら、スマホを持ったまま、玄関に向かった。サンダルをひっかけて、鍵を開けると同時にドアを開けた。
「勝手に入っていいよって――――……」
いいよって言ったのに。
言いかけた言葉は、相手の顔を見た瞬間消え失せて、硬直。
「……は?」
「大翔、元気か?」
スーツ姿。仕事帰りっぽい、父親の突然の来訪に、言葉が出てこない。
「おや、じ? は? なんで?」
「まあ話は中でする」
言いながら、靴を脱いで部屋に上がると、洗面所で手を洗い、ネクタイを少し緩めながら、当然のようにリビングに向かう親父に。
「ちょっと待って。何しにきたんだよ? こんな突然」
なんとなく止めてしまったのは、中にたこ焼きの準備がされているから。
……絶対、オレっぽくねーって思うに違いない。そう思って止めはしたけれど、なんかすげー気まずい。
「……何か見られたくないものでもあるのか?」
「いや、別に……」
「一人暮らしを始めたのに、様子も見に来てなかったからな。仕事がこっちの方だったから、様子見がてら寄った。見合いの件も話しにきたぞ」
「だからそっちはしないって葛城に……って、葛城は?」
「車で待たせてる。すぐ戻るからと言ってきた」
親子水入らずで話したいと思ってな、とか言いながらリビングに足を踏みいれた親父は、数歩先で、固まっている。
「――――……変わってるな、大翔」
「……は?」
「一人でたこ焼きパーティか?」
ちょっと呆れたように言われて、はー、と脱力。
「んなことするか……」
「じゃあ誰か隠れてるとか?」
「……今は居ないけど」
「これから来るのか? じゃあ早めに話をするか。葛城も待ってるしな」
……奏斗に連絡しよう、連絡するまで来んなって。
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