【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
335 / 555
ずっとそばに

「うれしいこと」*大翔

しおりを挟む


 翌朝。
 ……起きたら奏斗が、ベッドに居なかった。
 時計を見るとまだそこまで遅いわけじゃない。でもいつもはオレのが早く起きて、寝てる奏斗を見ていることが多いから、なんとなく、起きれなかったか、とただぼんやりと思った。昨日、なかなか眠れなかったからなと思い出し、考えていたことも舞い戻ってきてしまった。

「――――……」
 
 額に手を置いて、瞳を閉じ、ゆっくりと息をついた。

 今、恋人でもないのに、そういうことをしてる関係をセフレだって言っただけで、別に、オレがそういう風に奏斗を扱っていると思ってる訳じゃないだろうとは、思う。

 ――――……どうしようかな。今日から。

 距離感が、難しい。
 奏斗のことが大事だと思うのは、本当なのに。伝わってない、のかもな。
 ……最初の抱き方がまずかったのかな。あれから始まって……。
 和希のことだって何にも綺麗になってないのに、体だけ繋いで。
 ……でも、奏斗が他の奴のところに行くのは、絶対嫌だし。

 あー。もう ……どうすっか。
 とりあえず、起きて、考えるか。

 ……奏斗、シャワー浴びたかな。

 ゆっくり部屋を出る。バスルームには居ないし、リビングにも居ない。
 ……自分の部屋、帰ったのか。

 スマホを取って、奏斗の画面を開く。
 なんて入れようか考えて、なんだか何も適当なものが思いつかなくて、テーブルに置きなおした。
 とりあえず、シャワー浴びよ。頭はっきりしねーし。
 そう思ってバスルームに向かう。少し熱めに設定して、シャワーを出した。

「――――……」

 目が覚めていく間に、色々考える。

 奏斗が色々あって、特にこういうことで考え方が後ろ向きなのは知ってる。
 ……いちいちそんなのでダメージ受けんな。バカか、オレ。

 できるだけ側にいて。
 ……できるだけ、笑顔を見てたい。

 できるなら、変なトラウマを、跳ねのけさせられたらいい。
 オレがしたいのは、それだ。

 そこまで考えてやっとすっきりして、シャワーを止めた。

 朝飯作るからって、連絡しよう。そう思いながら身支度を整えて、髪を適当に乾かしてからリビングに入ると。

「あ。おはよ」
「――――……」

 キッチンの方で奏斗が立ってて、オレの方を見て笑う。

「奏斗……」
「ん? あ、ごめん、勝手にキッチン借りてる」
「いいけど……え、さっき居なかったよね?」
「あ、うん。シャワーと着替えと、あと、コーヒー淹れたりしてきた。あと、ごめん、玄関にあった鍵、借りた」
「いい、けど……鍵あげた位だし」
「それオレの家にあったからさ」
「――――……」

 部屋戻ったのに、自分から帰ってきてくれたんだなと思うと、なんだかすごく。……気持ちが、浮つく、というか。

 ……ああ、なんかオレ、すげー嬉しいのかも、これ。

 なんだか、言葉が出てこないまま、奏斗の側に歩み寄る。
 コーヒーを入れてるのかと思ったら、カウンターには皿が並んでいて、気付いて振り返った時、ちょうどトースターがチンと音を立てた。

「あ、焼けた。ちょうどよかったね」
「――――……」

 チーズトーストを取り出して、包丁で三角に切って皿に並べてから、黙ったままだったオレを振り仰ぐ。

「四ノ宮みたいに凝ったの作れないけど……良いでしょ?」
「ん。……つか、なんかすげー嬉しいし」

 言うと、きょとん、という顔をした後、ふ、と微笑んで。

「チーズのせただけだよ」

 クスクス笑う。

 そうじゃないけど。
 別にチーズトーストが嬉しいとかじゃなくて。

 ……一回帰った奏斗が、自分からオレんちに戻ってきて、一緒に食べる朝ごはん、作ってくれてるのが、嬉しいんだし。

 ていうかオレ、こんなことが、こんなに嬉しいのか。
 と、自分で驚く。
 



(2023/5/20)

しおりを挟む
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡

感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷

投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。

Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷 
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵

感想 331

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

処理中です...