【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
320 / 557
ずっとそばに

「へんなこと」*大翔

しおりを挟む


 なんて答えようか。……ていうか、もうなんて答えても意味無さそうなんだよな……。
 半分諦めモードでそう思っていたところに、採寸を終えた奏斗が近寄ってきた。

「次、四ノ宮だって」
「あー……ん、了解」
「……? 何? どうかした?」

 奏斗も奏斗で、ほんの少しの雰囲気の違いにすぐ気づいて、不思議そうに聞いてくる。
 
「なんでもない。行ってくる」

 姉貴、変なこと言うなよ、と口に出そうだったけど、言っても無駄だし、言う方が怪しまれると、なんとか飲み込んだ。

「雪谷さんは、シャツとネクタイも決めましょうか」
「それ、オレもあとで一緒に選ぶから、靴、決めといて」

 葛城のセリフにオレがそう返すと、え、靴も選ぶの? と奏斗の顔が明らかに言ってる。

「靴も良さそうなの履いて決めといて?」

 何か言いたげだったけど、葛城がすぐ動いたので、オレはその場を少し離れた。

 採寸が進んで、カルテに書き込んでいくのをなんとなく見ながら、「サイズ、変わってる?」と聞くと、「そうですね」と微笑まれる。

 何やら楽しそうに姉貴が笑ってるのが、どうにも気になる。
 奏斗はいつも通り。人当たりの良い感じで、ニコニコしてるけど。……まあ、オレが外面繕うのとは違って、ほんとに楽しそうなんだと思うけど。
 ……潤もすぐ、懐いたな。人見知りというほどではないけど、オレが居ると、オレの腕にのっかってることが多かったのに。奏斗みたいなのが好きなのかな。

 ……つか、奏斗みたいなのは、誰でも好きかな。……顔、可愛いし、優しそうだし。誰にでもモテるだろうな。

 そう思いながら、でも実際は、全然違う奏斗の色んな顔を思い出す。
 
 ……大体にして、自分のこと、好きじゃないもんな。奏斗って。
 他人のことは好きっつーか……多分「人」は好きなのに。
 自分のことが、好きじゃない。男にも女にもモテるとか言ってくせに、そいつらが、奏斗とずっと居るとは、思っていない。
 好きじゃなくなる日が、来るって、思ってる。

 ……和希。……マジで責任重大だと言ってやりたいが。
 奏斗がそんなに振り回されてるのを伝えるのも癪だし。はー、ムカつく。

 ……顔が険しくなりそうで、前髪を掻き上げて和希を頭から追い出す。奏斗の方を見ると、まあ奏斗の膝に潤がちゃっかり乗っかってて、すごく楽しそうにしてる。

 少し距離があるから奏斗たちの会話には参加できないので、ひたすら考えながらメジャーをあてられていると、部屋にある内線電話が鳴った。

「出ていいよ」

 そう言うと、失礼しますね、とスタイリストが少し離れた。
 それに気づいた奏斗が近づいてきて、「あのさ」となんかちょっと困った顔をしている。

「何? どうかした?」
「靴、これは? って葛城さんが」
「ん? ああ」

 奏斗の履いてる靴を見て、「いいんじゃない?」と言うと、そうじゃなくて、と奏斗。

「なんかこのままだと色々買われそうなんだけど……」
「うん?」
「……なんか、ほんとに良いの? って気になってきたんだけど」
「いいよ。奏斗が着たら宣伝になるって葛城も言ってたし」

 こそこそ言ってくるので、オレもこそこそ答える。

「オレ、宣伝になるかな? そんなところ、ちゃんとおかしくないように居られるのかも心配なんだけど」
「大丈夫。立ってるだけで、目立つから。いい意味でね?」

「……だから……死ぬほど目立つ奴に言われても……」

 奏斗が、もー、と頭を掻いてるけど。

「それよりさ」
「……ん?」
「姉貴に何かへんなこと言われてない?」
「……へんなこと??」

 不思議そうにオレを見てるので、とりあえず、特別何も言われてないのかなと一安心してると、奏斗はますます不思議そうな顔でオレを見上げてきた。






しおりを挟む
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡

感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷

投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。

Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷 
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵

感想 331

あなたにおすすめの小説

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

幼馴染の御曹司と許嫁だった話

金曜日
BL
親同士の約束で勝手に許嫁にされて同居生活をスタートすることになった、商社勤務のエリートサラリーマン(樋口 爽)×国立大一年生(日下部 暁人)が本当の恋に落ちてゆっくり成長していくお話。糖度高めの甘々溺愛執着攻めによって、天然で無垢な美少年受けが徐々に恋と性に目覚めさせられていきます。ハッピーエンド至上主義。 スピンオフも掲載しています。 一見チャラ男だけど一途で苦労人なサラリーマン(和倉 恭介)×毒舌美人のデザイナー志望大学生(結城 要)のお話。恋愛を諦めた2人が、お互いの過去を知り傷を埋め合っていきます。 ※こちらの作品はpixivとムーンライトノベルズにも投稿しています。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

箱庭の子ども〜世話焼き侍従と訳あり王子〜

真木もぐ
BL
「他人に触られるのも、そばに寄られるのも嫌だ。……怖い」 現代ヨーロッパの小国。王子として生まれながら、接触恐怖症のため身分を隠して生活するエリオットの元へ、王宮から侍従がやって来る。ロイヤルウェディングを控えた兄から、特別な役割で式に出て欲しいとの誘いだった。 無理だと断り、招待状を運んできた侍従を追い返すのだが、この侍従、己の出世にはエリオットが必要だと言って譲らない。 しかし散らかり放題の部屋を見た侍従が、説得より先に掃除を始めたことから、二人の関係は思わぬ方向へ転がり始める。 おいおい、ロイヤルウエディングどこ行った? 世話焼き侍従×ワケあり王子の恋物語。  ※は性描写のほか、注意が必要な表現を含みます。  この小説は、投稿サイト「ムーンライトノベルズ」「エブリスタ」「カクヨム」で掲載しています。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【BL】初恋はこじらせると怖い

のらねことすていぬ
BL
<現代風パラレルワールド> この世界には、『亜人』という人間によく似た異星人が住んでいる。亜人は人間に比べはるかに力が強く筋骨隆々としていて、浅黒い肌に赤い瞳なのが特徴の生き物だ。 サラリーマンの差山は、大昔に亜人に助けられて以来、亜人の男しか愛せなくなってしまった。だが亜人は人間に似ているが『絶対に人間と恋をしない』種族。 だからもう恋愛は諦めようと思っていた。そんな諦めきった恋だったのに、同僚の亜人であるゼンは差山にやたらと構ってきて……。 巨大な体と強い力を持つ亜人×サラリーマンのすれ違いラブ

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...