315 / 551
ずっとそばに
「独占欲」*大翔
しおりを挟む
【side*大翔】
……しくじった。
今オレが言ったのって、まんま嫉妬じゃん。
……ダサすぎる?
昼、食堂で奏斗を見つけた。もうなんだか一瞬で奏斗を見つけられるような気がする。
あ、奏斗だと思ったけど、声をかける気はなかった。先輩達と居たし、今日は帰りも待ち合わせしてるし。でもすぐ後ろを通ろううかなと思って、別に隣の通路でも良いところを、友達らの先頭に立って奏斗の後ろを通った。素通りするつもりだったのだが、奏斗はこっちを向いて友達と話して眉を寄せてて、変な顔してンなーと思った瞬間。
その友達の手が、奏斗の額に触れた。でもって、くすぐったい、とでも言うようにクスクス笑ってる奏斗。
……ムカッとしたのが我慢できなくて、素通りしようと思ったのも忘れて、ぽん、と頭に手を置いてしまった。オレが近づいてるのに何も気づいてなかった奏斗は、びっくりした顔でオレを見上げた。
今、葛城の車に乗ってから、何で頭触るのなんて言われたけど。
……つか何で触らせんのっつー話で。ムカつく。とオレは思ったし、今もそう思って、口に出したんだけど。
……奏斗がびっくりした顔をして、更に何か言いたそうだけど、多分葛城が居るから、我慢してるみたいだった。
……言葉に出してしまってから、あきらかに嫉妬っぽい言い方だった気がしてくる。気安く触らせんなって、オレ今別に彼氏でもないのに、独占欲丸出しみたいな。……言わなきゃよかった。と思ってるオレの横で、奏斗もなんだか黙ってる。
少し黙っていたら、何か感じ取ったのか、葛城がバックミラー越しに、こっちに視線を投げてきた。
「雪谷さんは、スーツを着る機会はありますか?」
「……ないです。入学式の時には着ましたけど」
「まあ、普通は着ないですよね」
そうですね、と奏斗が頷いてる。
「成人式は来年ですよね?」
「あ、はい」
「成人式でも着れるようなものを選んだらいいかもしれませんね。そしたら、パーティの後も使えますし」
「……奏斗、似合うと思うよ、スーツ」
我慢できなくなってそう言うと、さっきのまま、じろ、と見られる。
ぷ、と笑いが漏れてしまったオレに、むむ、と睨んでくるけど。奏斗がスーツ着るとこ想像すると、なんだかそこらへん吹き飛んで、楽しくなってきた。
「体に合わせて作ってもらうとほんと気持ちいいから。奏斗に似合うの、一緒に選ぼうね」
「って、四ノ宮も作るんだよね?」
「オレのは別になんでもいいから、奏斗のを選ぼ」
「大翔さんのもなんでも良くはないですけどね?」
苦笑いの葛城がツッコミを入れてくる。
「奏斗がすごい似合ってたら、それだって宣伝になるだろうし」
「そんなうまくいかないと思うけど……」
「いくって。絶対目立つと思うよ、奏斗」
「……ダントツ目立ちそうな奴に言われても……」
苦笑いの奏斗に、はは、と笑いながら。
「……あの場では、社長の息子で有名だから目立つけど、面倒なだけだし。まあ、奏斗が居るから今回はまあ、いっか。……ウマいもん食べて帰ろーね」
「――――……」
ちらっとオレを見て、奏斗はちょっとため息。
「雪谷さんは楽しんでもらっていいですけど、大翔さんは、少しは真面目にお願いしますね」
クスクス笑いながらも、釘をさしてくる葛城。
はいはい、と頷きながら。横で、葛城の言葉にふ、と笑った奏斗を見ると。
なんか楽しい。
……似合うだろうな、スーツ。
(2023/4/14)
……しくじった。
今オレが言ったのって、まんま嫉妬じゃん。
……ダサすぎる?
昼、食堂で奏斗を見つけた。もうなんだか一瞬で奏斗を見つけられるような気がする。
あ、奏斗だと思ったけど、声をかける気はなかった。先輩達と居たし、今日は帰りも待ち合わせしてるし。でもすぐ後ろを通ろううかなと思って、別に隣の通路でも良いところを、友達らの先頭に立って奏斗の後ろを通った。素通りするつもりだったのだが、奏斗はこっちを向いて友達と話して眉を寄せてて、変な顔してンなーと思った瞬間。
その友達の手が、奏斗の額に触れた。でもって、くすぐったい、とでも言うようにクスクス笑ってる奏斗。
……ムカッとしたのが我慢できなくて、素通りしようと思ったのも忘れて、ぽん、と頭に手を置いてしまった。オレが近づいてるのに何も気づいてなかった奏斗は、びっくりした顔でオレを見上げた。
今、葛城の車に乗ってから、何で頭触るのなんて言われたけど。
……つか何で触らせんのっつー話で。ムカつく。とオレは思ったし、今もそう思って、口に出したんだけど。
……奏斗がびっくりした顔をして、更に何か言いたそうだけど、多分葛城が居るから、我慢してるみたいだった。
……言葉に出してしまってから、あきらかに嫉妬っぽい言い方だった気がしてくる。気安く触らせんなって、オレ今別に彼氏でもないのに、独占欲丸出しみたいな。……言わなきゃよかった。と思ってるオレの横で、奏斗もなんだか黙ってる。
少し黙っていたら、何か感じ取ったのか、葛城がバックミラー越しに、こっちに視線を投げてきた。
「雪谷さんは、スーツを着る機会はありますか?」
「……ないです。入学式の時には着ましたけど」
「まあ、普通は着ないですよね」
そうですね、と奏斗が頷いてる。
「成人式は来年ですよね?」
「あ、はい」
「成人式でも着れるようなものを選んだらいいかもしれませんね。そしたら、パーティの後も使えますし」
「……奏斗、似合うと思うよ、スーツ」
我慢できなくなってそう言うと、さっきのまま、じろ、と見られる。
ぷ、と笑いが漏れてしまったオレに、むむ、と睨んでくるけど。奏斗がスーツ着るとこ想像すると、なんだかそこらへん吹き飛んで、楽しくなってきた。
「体に合わせて作ってもらうとほんと気持ちいいから。奏斗に似合うの、一緒に選ぼうね」
「って、四ノ宮も作るんだよね?」
「オレのは別になんでもいいから、奏斗のを選ぼ」
「大翔さんのもなんでも良くはないですけどね?」
苦笑いの葛城がツッコミを入れてくる。
「奏斗がすごい似合ってたら、それだって宣伝になるだろうし」
「そんなうまくいかないと思うけど……」
「いくって。絶対目立つと思うよ、奏斗」
「……ダントツ目立ちそうな奴に言われても……」
苦笑いの奏斗に、はは、と笑いながら。
「……あの場では、社長の息子で有名だから目立つけど、面倒なだけだし。まあ、奏斗が居るから今回はまあ、いっか。……ウマいもん食べて帰ろーね」
「――――……」
ちらっとオレを見て、奏斗はちょっとため息。
「雪谷さんは楽しんでもらっていいですけど、大翔さんは、少しは真面目にお願いしますね」
クスクス笑いながらも、釘をさしてくる葛城。
はいはい、と頷きながら。横で、葛城の言葉にふ、と笑った奏斗を見ると。
なんか楽しい。
……似合うだろうな、スーツ。
(2023/4/14)
81
お気に入りに追加
1,602
あなたにおすすめの小説
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる