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ずっとそばに
「自分のこと」*奏斗
しおりを挟む「なんか、嫌だったなら言いなよ」
「嫌じゃないってば……」
「じゃあ何でそんな顔してンの。さっきまでと違うし」
「――――……」
……ああ、なんかもう。ほんとオレって、馬鹿。
四ノ宮が他の奴より敏すぎるからなんだけど。それも知ってるんだから、もっとちゃんと隠さないとなのに。……つか、こいつに何か、まともに隠せたこと、あったっけ……。
「だから……四ノ宮がどうとかじゃなくて」
「……オレのことじゃないの? じゃあ何? 今更、隠すなよ」
腕に触れられて、まっすぐ見つめられる。
……なんかもう言うまで離してくれない気がするし、嘘もつけない気がしてきて、仕方なく思ったことを話し始める。
「だから……なんか、そもそも迷惑かけたの、オレだし。葛城さんにもそうで。……そのお礼を買うの、付き合ってくれたのに」
「うん……?」
「……バレたくないし、変に思われたくない、とか言って……お前に、嘘、つかせて……」
「――――……」
「なんかオレ、やだなと思ってただけで……別に、四ノ宮に怒ってた訳じゃないから」
ぼんやり嫌だったことが、口にしてくとはっきり、それが嫌だったんだなと分かる。なんとか言い終えると、「……何なのそれ」と呟いた四ノ宮に、不意に引き寄せられた。すぽ、と腕の中に抱き締められて、固まってると。
「……あのさぁ……奏斗が、色々あって、バレたくないって思ってるの、オレ知ってるよね?」
「……うん」
「知ってるから、納得もしてるし、さっきも一瞬困った顔したから、ああ言ったけど……何でそんなので、そんな自己嫌悪しちまうの」
「……だから……なんか迷惑ばっかりかけてる気が、して」
そう言うと、四ノ宮はおおげさに、息をついた。
「あのさぁ……言っとくけどオレ、軽い嘘なんかつくの、いつも通り過ぎて、何とも思わねーけど」
は? と、上向いて、まじまじと見つめてしまう。
「それはそれでどうかと思うんだけど……」
思わず言うと、苦笑いを浮かべた四ノ宮は、オレを見つめ返した。
「だから……めんどくせーから適当にうまいこと言って生きてきたって知ってるでしょ? オレが全部本音言ってるの、奏斗だけだかんね。まあ葛城も、オレがそうしてんのは知ってるけど」
「――――……」
「……はー。もー……」
ぎゅ、と抱き締められてしまう。
「……確かに奏斗と居ると、色々あるけど……オレが自分の意志で一緒に居るんだから、迷惑だろうが世話だろうが、なんでもかけてくれていいんだけど」
「――――……」
「……つか、それ、他の奴に任せる気ないし。オレが居るから、オレにかけていいよ。あれくらいのこと回避すんの、オレ何ともないんだから、そんなことで落ち込まないでくんない? ……ていうか、さっきから変になったの、オレがさらっと嘘ついたから怒ってんのかと思ったじゃん」
「……その嘘、オレのせいなのに怒る訳ないし……」
「せいって言う考え方も、無しにして?」
……なんかそう言われると、ほんと。
…………オレの考え方って、めんどくさいな。
「奏斗」
「……?」
「オレ、あんたと居たいから居るし。あんたには嘘はつかない」
「――――……」
「奏斗が大事だって言ったよね? ……つか、多分和希とかも……すげえムカつくけど、あんたのこと、大事に思ってたと思う。先輩や先生とか真斗とかも、皆、奏斗のこと、大事だって思ってるから」
「――――……」
「奏斗も、自分のこと、大事だって、思えよ」
まっすぐに見つめられて、そんな風に言われると。
何だか、ぽかん、として、ただ四ノ宮を見つめてしまう。
自分のことを、大事?
……なんかあんま、考えたこと無かったかも。
「何それ。初めて考えたみたいな、顔して」
……やっぱり、エスパーなのかな??
頷くのも何だかなと思って、眉を顰めていると、四ノ宮が苦笑いを浮かべた。先に靴を脱いで玄関に上がりながら、オレを振り返る。
「靴脱いで、あがって」
「え? あ、ちょ……」
腕を引かれて、靴のままあがってしまいそうで、慌てて靴を脱いだ。
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