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ずっとそばに

「嘘」*奏斗

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 その後、デパートから外に出て、駅を抜けようと歩いていた時だった。

「あれ? ユキ?」
 呼ばれて振り返ると、さっき別れたばかりの小太郎たちが後ろに居た。

「あ」
 なんとなく咄嗟に、やば、と思って、何も言えなかったオレに、小太郎は普通に「買い物終わった?」と聞いてきた。

「あ、うん。買ってきた。……抜けてごめんね」
「いいよ。買えて良かったね」
「うん」
「四ノ宮と一緒だったの?」

 小太郎がオレにそう言ったのと同じタイミングで、翠も四ノ宮を見て「何でユキと一緒?」と聞いた。

 ……やっぱり変だよね、抜け出して、四ノ宮と居るって。
 なんて言おうか。そう思った時。オレを一瞬見た四ノ宮が「たまたま一緒になって」と言った。

「オレもデパートに用があったんで、一緒に帰ってきたとこです」

 さらっと出てきたその言葉に、オレが四ノ宮の顔を見上げると、四ノ宮はオレに「ね? 先輩」と笑顔を見せる。辛うじて頷くと、特に突っ込まれることもなくて、そっか、と小太郎たちは頷いた。
 すぐに、また明日ねー、と別れて、二人で歩き始める。

「――――……」

 なんだかな……。
 オレがすぐ答えられなかったせいで、四ノ宮に嘘、つかせたんだよな。
 あんまり仲良しだと思われたくないとか、四ノ宮に言ってるから。

 なんか。……何だかなあ……。
 自分でもよく分からない気持ちになって、少し黙ったまま考えていたら、ふと、顔を覗き込まれた。

「……なんか怒ってる?」

 不意に聞かれて、え?と見上げる。

「怒ってなんかないよ?」
 そう言いながら、なんとなく視線を前に戻すと。

「……奏斗」

 四ノ宮が、オレの腕を引いて、自分の方に向けさせた。顔を至近距離で見上げる羽目になる。

「ほんとに?」
「うん、全然。怒ってなんかない」

 笑顔で言ったオレに、四ノ宮は少しだけ黙ってから頷いて、ゆっくり、オレの腕を離した。

「奏斗?」
「ん?」
「オレと一緒に行ったんだって、言っても良かった?」
「ううん」
「言っていいなら、今度からそう言うけど」

 なんだか困った顔をして続ける四ノ宮に、オレは顔を横に振って、笑って見せた。

「言わなくていい。ていうか、さっきありがと、四ノ宮」

 そう言うと、四ノ宮はなんだか黙ってしまった。

 全然怒ってなんかないのに、何かをすごく気にしてる四ノ宮に、オレの方もちょっと困って。
 なんとなく気まずい感じのまま歩いて、マンションに辿りついた。エレベーターを降りると、数歩先に進んで、四ノ宮が自分の部屋の鍵を開ける。オレも、四ノ宮の部屋を通り越して、自分の部屋に向かおうとしたところ、不意に腕を掴まれた。

「ちょっと来て」
「え、でも」

「いいから、今来て」

 ぐい、と引かれて、そのまま部屋に連れ込まれた。
 玄関のドアに背を押し付けられて、否応なしで、見上げてしまう。


「……何?」
「あのさぁ……」

 四ノ宮は、ふー、と息をつきながら前髪を掻き上げて。
 ちょっと眉を顰めて、オレを見下ろす。

 さっきまでオレに、怒ってる?とか聞いてたけど。


 ……今はむしろ、四ノ宮の方がなんか機嫌悪い気がする。





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