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ずっとそばに

「バカだな」*大翔

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 八人も居ると、注文もバラバラ長いし、デザートを食べだしたり何だりで、やっぱりすごく遅くなった。なんだかんだいって、奏斗が出てってから、かなりの時間が経っている。

「どーする? カラオケとか行く?」

 そんな風に言ってる奴に、速攻心の中では、「帰る」と思っている。
 とりあえず、奏斗に連絡して、今どこか聞かねーとと思いながら、スマホを弄る。

「今焼肉出た。どこに居る?」
 奏斗にそう入れて少し待つが既読はつかない。カラオケだと気づかないかもな、と思い、どうすっか、と考えていると。

「大翔くん、カラオケ行く?」
 香織にそう聞かれて、速攻で「行かない」と返したいところだが、それもやっぱりどうかとは思うので、ちょっとぼやかして断ろうとする。

「まだ月曜だしな。明日も一限からだし……」
「一時間位ならいけそうじゃね? そんな早く寝ないだろ? ちょうどここにカラオケあるし」

 確かに焼肉屋のビルの隣の一階、目の前にカラオケはあるけれど。
 オレが香織に言ってるのを聞いて、そんなことを言ってくる奴に、内心、断ろうとしてんの分かんねえのかなと、ムッとするのだが。

「んー、また次の時にしようかなぁ……」
 と言いかけながら、震えたスマホに目を向ける。

『あと一時間あるから、先帰ってていいってば』

 一時間、か。

「……やっぱ行こうかな」
「え? いいの?」

 一時間暇だし。

「もしかしたら途中で抜けるかもだけど」
「そうなん? まあいいや、おし、いこーぜー」

 奏斗に合わせて出よ。
 ……もしかして、ここにいるかな? 出てそのまま行ったなら、可能性は高いよな。

 奏斗に、オレが今入ろうとしてる店の名前を打って、そこに居るか聞いてみる。すぐ既読がついたのだけれど、しばらく返ってこない。
 あれ? と思って。「今からオレそこ入るんだけど」と追加で入れると。

『……マジでストーカーなの?』

 と入ってきた。

 何でだよ……と思ったけど、ああ、ここに居るってことか、とすぐ思い直して、苦笑い。

「だって焼肉の隣じゃん。ちなみにオレが言い出したんじゃなくて、友達が入ろうって言いだしたんだし」

 ……まあ、奏斗が一時間いるっつーから、付き合うことにはしたけど。

「奏斗の帰る時間に合わせるから連絡して。相川先輩達と別れたら、奏斗んとこ、行く」

 そう入れると、返事は、あっかんべー、というスタンプ。
 ……ちっ。可愛くねーな。

 こっちだって、あんたがそんな、狙われそうな顔してなかったら、こんなに一緒に帰ろうなんてしてないし。……あと、クラブとか、行かれても嫌だし。……とは言わないが。

 スマホで揺れてるスタンプを見て、なんだかすごくムカつくのだけれど。でも。


「置いて帰んないでくださいね」

 ちょっと下手に出てみる。
 ……多分こういう方が、効く。

『……もうなんなの、こども?』
「帰り道一緒のが楽しいでしょ?」

 またしばらく返信がない。
 案内された部屋に入って、香織が座ってから、少し離れた席に座った。その瞬間。

『一応連絡するけど、あわせなくていいからね』

 と、入ってきた。

 ――――……バカだな。
 合わせるに決まってるし。

 ふ、と顔が綻ぶ。


「大翔、スマホ見てニヤニヤしてないで歌えー」

 ぽい、とマイクを投げられる。

「してねーし。 いーよ、何歌う? 何でも歌う」


 ――――……とか。
 勝手に口から出てくる自分に少し疑問は持ちつつも。
 うるさくても気づけるようにスマホはバイブにして持ってよ、と思った。
 




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