上 下
299 / 554
ずっとそばに

「バカだな」*大翔

しおりを挟む


 八人も居ると、注文もバラバラ長いし、デザートを食べだしたり何だりで、やっぱりすごく遅くなった。なんだかんだいって、奏斗が出てってから、かなりの時間が経っている。

「どーする? カラオケとか行く?」

 そんな風に言ってる奴に、速攻心の中では、「帰る」と思っている。
 とりあえず、奏斗に連絡して、今どこか聞かねーとと思いながら、スマホを弄る。

「今焼肉出た。どこに居る?」
 奏斗にそう入れて少し待つが既読はつかない。カラオケだと気づかないかもな、と思い、どうすっか、と考えていると。

「大翔くん、カラオケ行く?」
 香織にそう聞かれて、速攻で「行かない」と返したいところだが、それもやっぱりどうかとは思うので、ちょっとぼやかして断ろうとする。

「まだ月曜だしな。明日も一限からだし……」
「一時間位ならいけそうじゃね? そんな早く寝ないだろ? ちょうどここにカラオケあるし」

 確かに焼肉屋のビルの隣の一階、目の前にカラオケはあるけれど。
 オレが香織に言ってるのを聞いて、そんなことを言ってくる奴に、内心、断ろうとしてんの分かんねえのかなと、ムッとするのだが。

「んー、また次の時にしようかなぁ……」
 と言いかけながら、震えたスマホに目を向ける。

『あと一時間あるから、先帰ってていいってば』

 一時間、か。

「……やっぱ行こうかな」
「え? いいの?」

 一時間暇だし。

「もしかしたら途中で抜けるかもだけど」
「そうなん? まあいいや、おし、いこーぜー」

 奏斗に合わせて出よ。
 ……もしかして、ここにいるかな? 出てそのまま行ったなら、可能性は高いよな。

 奏斗に、オレが今入ろうとしてる店の名前を打って、そこに居るか聞いてみる。すぐ既読がついたのだけれど、しばらく返ってこない。
 あれ? と思って。「今からオレそこ入るんだけど」と追加で入れると。

『……マジでストーカーなの?』

 と入ってきた。

 何でだよ……と思ったけど、ああ、ここに居るってことか、とすぐ思い直して、苦笑い。

「だって焼肉の隣じゃん。ちなみにオレが言い出したんじゃなくて、友達が入ろうって言いだしたんだし」

 ……まあ、奏斗が一時間いるっつーから、付き合うことにはしたけど。

「奏斗の帰る時間に合わせるから連絡して。相川先輩達と別れたら、奏斗んとこ、行く」

 そう入れると、返事は、あっかんべー、というスタンプ。
 ……ちっ。可愛くねーな。

 こっちだって、あんたがそんな、狙われそうな顔してなかったら、こんなに一緒に帰ろうなんてしてないし。……あと、クラブとか、行かれても嫌だし。……とは言わないが。

 スマホで揺れてるスタンプを見て、なんだかすごくムカつくのだけれど。でも。


「置いて帰んないでくださいね」

 ちょっと下手に出てみる。
 ……多分こういう方が、効く。

『……もうなんなの、こども?』
「帰り道一緒のが楽しいでしょ?」

 またしばらく返信がない。
 案内された部屋に入って、香織が座ってから、少し離れた席に座った。その瞬間。

『一応連絡するけど、あわせなくていいからね』

 と、入ってきた。

 ――――……バカだな。
 合わせるに決まってるし。

 ふ、と顔が綻ぶ。


「大翔、スマホ見てニヤニヤしてないで歌えー」

 ぽい、とマイクを投げられる。

「してねーし。 いーよ、何歌う? 何でも歌う」


 ――――……とか。
 勝手に口から出てくる自分に少し疑問は持ちつつも。
 うるさくても気づけるようにスマホはバイブにして持ってよ、と思った。
 




しおりを挟む
感想 329

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...