295 / 554
ずっとそばに
「ストーカー?」*大翔
しおりを挟む五限が終わって、駅前から五分位離れたビルの中にできた焼き肉屋に到着。
外に列が出来ていたけれど、もう中で待っていることを伝えて、店内に入れてもらった。
オープン初日、張り切ってる感じで、店員の元気な挨拶が飛び交う。
中を見渡すと、サラダバーやドリンクバーが中央にあって、厨房が丸見えになってる。開かれてて、良い感じ。
元々入ってた四人と、今一緒にきた四人で、八人掛けのテーブル席だったが、隣との間は完全に壁があるし、換気がいいのか、煙もそんなにはひどくない。
「良い感じの店だな」
オレがそう言うと、「肉もうまいよ」「サラダもー取っておいでよ」と先に食べてた皆が言う。
「でも値段結構するんだよねー。今日は全品安いけど」
「でもいいよねえ?」
今日は女子三人。男子五人。女子が来るとは思ってなかった。
隣に座ったのは、まあ、わりとよく話す子だけど……多分ちょっと意識されてる子なので、ちょっと微妙。まあスルーするしかない。
なんかもう、奏斗以外に構う気ないしな……。
そんなことを思ってるのは知らないその子は、大翔くんは、と色々話してくる。
色々話しながらも、周りの男子にも話を振りつつ、メニューで注文を決める。注文を終えて、立ち上がった。
「サラダバー行く」
「じゃあオレもー」
と後から一緒に来た皆が立ち上がる。
サラダバー色々種類あるな。……ドレッシングも、普段見ないような味のも並んでる。
……奏斗どれが好きかな。今度ここ、連れてこようかな。どんな味が好きなのか知りたい。
「香織ちゃんて、大翔狙いだよなー」
隣に来て、こそ、と囁かれる。「香織ちゃん」は隣に座った女子の名前。
「そうなのか?」
「えー見てれば分かるじゃん」
……分かるけど。分からない振りが一番楽。
「嘘だろ? 鈍い……ていうか、モテすぎて、麻痺してんのか」
「そういうことじゃないよ」
「だってもうバレバレじゃん、大翔くん大翔くんってずっと」
「つか、お前声でかい」
そう言った時。隣に居た人が、ふっとこっちを見た。
「あ。四ノ宮じゃん」
「え。あ。相川先輩……」
この人が来てる、てことは……。
思わず見える範囲を探してしまう。
相川先輩は、オレを見て笑顔。
「大翔って聞こえたからさ。奇遇だな~……っつか、安いからか。お前も並んだの?」
「いや、オレ今日五限なんで、四限の友達が並んでて」
「あぁ、そうなんだ」
はは、と笑って、相川先輩は、右方向に視線を向けた。
「オレは、翠とかユキとかと並んでてさ」
「そうなんですね」
居るのか、ここに。……ああ、じゃあ、連れて帰れるかな。……つか、時間合わせないとさすがに無理か。テーブルに行ったら嫌がるだろうし。先走って考えていた時。
「う、わー、何でお前、居んのー??」
背後から聞こえてきた、聞き慣れた声。
……ぷ、と笑ってしまう。
「もしかして、ストーカー……??」
「……何でですか」
空のグラスを持ったまま、オレを見上げて、とっても嫌そうな奏斗の顔に、苦笑い。
「お互い、オープンの日に並んで入ろうなんて おかしな友達が居るってことじゃないですか?」
「あ、オレが言ったの、それ。今日四限だし、並べば入れるかなーって。おかしなとか言うなよ」
べ、と舌を出した奏斗に、軽く睨まれる。
隣で、相川先輩も笑ってる。
90
お気に入りに追加
1,662
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる