上 下
293 / 551
ずっとそばに

「好きそう」*大翔

しおりを挟む



 朝食を奏斗に食べさせて、支度をしてから一緒に登校。
 もうこの流れが、普通になってきた。オレの中では。
 ……奏斗の中ではまだ、なんで、て感じな気がするけど。まあ、そこらへんのモヤモヤはスルー。


「今日、オレ五限迄だから。奏斗は?」
「四限」
「そっか。じゃあ……待ってる?」

 そう言うと、奏斗は、ふ、とオレを見上げて、ぷるぷる首を振った。

「今日ごはん行くと思う。さっき連絡入ってたから」
「そっか。……じゃあオレも、たまには外で食べてこようかな」
「うん。そうしなよ。なんかいっつもオレと一緒だし。楽しんできて」

 ……なんか、そんなに明るい感じで言われると、内心はムッとしてしまう。
 奏斗と居るのが楽しいから居るんだし、むしろ、奏斗がそっちに行くから、たまにはいっか位で言ったのに、なんか奏斗の方は違うような気がする。

 ……と、いちいち言っても仕方ないから、言わないけど。

「分かった。じゃあね、奏斗。気を付けて帰ってよ?」
「……だからオレ、女の子じゃないし」

 はー、とため息をつきながら、じゃあな、と言って奏斗が離れていく。
 その後ろ姿を見ながら。

 女の子じゃないから、全然自覚しないし、だからある意味余計危ないから言ってるんじゃん。……そこらの女の子より可愛いし、変な奴らにモテモテなのも、もう分かってるし、だから心配だから言ってんのに。
 はーもう……自覚無いって、ほんと、危険。
 
「おはよ、大翔ー」
「何固まってんの」
「別に」

 そう答えて、歩き出すと、隣に二人が並ぶ。

「大翔が今一緒に居たのって、雪谷先輩だろ?」
「ああ……つか何で知ってんの」

 全然接点無さそうなのに。
 そう言ったら、有名じゃん、目立つし、と笑われた。

 ……あぁ、そうか。そういや、ゼミに入る前から、見たことはあった気がする。

「なあ、あの人、彼女居る?」
「……何で?」
「こないだそんな話になったんだよ。告ってみようかなーって言ってる女子が居て、でも、当然彼女居るんじゃねえのって話になってさ。あ、大翔、仲いいみたいだから聞いてみようってことになったんだけど」
「……さあ。そこらへんは、聞いてないから知らないな」

 えー、なんだよー、じゃあ今度聞いといてな、と言われて、聞けたらな、と返した。

 ……彼女、ね。

 ……まあ確かに、抱かれる方だなんて、思わないか。
 オレにとってはもう可愛くしか見えてないけど、普通の奴らにとったらたぶん、普通にイケメンの男、だもんな。アイドルとか言われてたっけな……。

 オレは王子で、奏斗がアイドルか。
 ……ほんと、噂なんて、適当だな。

「なあ、今日さ、飯くいに行かない?」
「良いけど」
 オレももう一人もそう言うと、「あ、マジ?」と笑いながら。
「今日オープンのさ焼肉屋があんの。今週はすげー安いらしいんだよ」
「混むんじゃねえの?」
「オレ、今日四限だから! 速攻行って、並んでおく」
「ああ、じゃあ入れたらな?」

 笑ってしまいながら答える。

「何人か誘っといて良い?」
「良いけどあんま誘うと入れないんじゃねえの?」
「じゃあ適度に」
「わかった」

 焼肉か。
 家にホットプレートとか無いから、奏斗とはしてないな。

 ……買うか、今度。ホットプレート。
 好きそう。焼肉とか、そういうの。
 たこ焼き焼けるのがついてるのもあるの、どっかで見かけたような……。

 ますます好きそう。
 嬉しそうにたこ焼き回してる姿が思い浮かんで、絶対買おうと決めた。

 
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...