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ずっとそばに
「なんか可愛いし」*大翔
しおりを挟む「奏斗……起きれる?」
「ん……」
「……奏斗?」
ん、と声を出しながら、薄目でオレを見る。
「四ノ宮……」
「……ね、これ、いつ抱いたの?」
「……さっき……」
むにゃむにゃした感じで、答えながら、ぬいぐるみに抱き付く。
「さっき起きたの?」
「目、覚めたら目の前に座ってて……なんか……可愛いから、抱き締めたら……」
「うん」
「……またすぐ寝ちゃった」
そんな言葉にクスクス笑ってしまう。
「きもちい、これ……」
「まあ分かるけど……」
……分かるけど、これ、もう、寝室持ち込み禁止。決定。
「奏斗」
ぎゅうう、としがみついてる手からぬいぐるみをひっぱり出して、となりにぽんと置くと、奏斗をゆっくり起こす。
「おはよ」
「うん……はよ」
軽く目をこすっている、寝ぼけた感じが可愛くて、ふ、と笑っていると。
「……これ、抱いてると、ずっと寝ちゃうかもしんない……」
奏斗はぬいぐるみを見下ろして、クスクス笑う。
……いいんだけど、なんか、ちょっとだけは、むかつく気がするような……。
「奏斗、ホットサンド、あと焼くだけだよ」
「……あ、そうなの? ごめん。起きる」
「全然ごめんじゃないよ。シャワー浴びて?」
「うん」
立ち上がりかけて、奏斗は止まった。
下着だけは昨日はかせたけど、ズボンははいてないし、うえもボタンが外れて乱れたままで。
なんか乱れてる……みたいにちょっと困った顔をして、ボタンをとめだした奏斗が……なんだか、すごく可愛く思えて。オレは立ち上がると、座ったままの奏斗を、よいしょ、と抱き上げた。
「う、わ、何……」
「バスルーム、連れて行ってあげるよ」
「っやだやだ、なんなの、お前……っ」
「暴れると落ちちゃうよよ」
「……っ」
そのままスタスタ早足で歩いて、脱衣所に奏斗を降ろした。
「奏斗の置いてってる服、持ってきとくから」
「……ていうかオレ、荷物じゃないし、何そんな軽々抱いて運ぶとか……」
軽々運ばれたのが不服なのか、むむむ、とオレを睨んでくるが。
……可愛いしかないので、その唇にキスをした。
「…………っ」
何か言いたげな視線を無視して。
「ごはん作っておくから。待ってるね」
そう言うと、む、と黙る。
運んだところから、キスしたところまで、言いたいことはたくさんありそうだったけど、なんかもう言っても無駄だと思ったのか、奏斗は、ちょっと眉を寄せたまま、頷いた。
「髪はあとで乾かしてあげるから、タオルでちゃんと拭いてきてね」
「……自分で」
「あとでオレがやるから。じゃ、待ってる。何分位?」
「……十分で行く」
「OK。じゃね」
なんだか複雑そうな顔をしながらも頷く奏斗に笑ってしまいながら、キッチンに戻る。
ほんと、なんだかな。
――――……押しに弱いというか。
……好意を無下にできないというか。
奏斗のそういう部分が、オレを断り切れないんだろうけど。
複雑そうな顔しながら頷いてるのも、なんか可愛いし。
別に今はそれで良いやと、オレは朝食の支度を再開した。
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