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ずっとそばに

「母親?」*大翔

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【side*大翔】


 朝。少し早く目が覚めた。奏斗はまだぐっすり寝てる。
 そうっとオレから離して、布団をかけてから、立ち上がった。ふと、落ちてるぬいぐるみに気づいて、昨日奏斗が抱えて寝ていたのを思い出すと、顔が綻んでしまう。

 ……まあ、最後は邪魔だったから、どけたけど。
 抱えてた奏斗は、なんだかめちゃくちゃ可愛かった。

 拾い上げて、オレが今まで寝ていたところに置いた。
 目が覚めたら、一番にこれが見えるだろうと思って、その時の奏斗を思うと、なんだかものすごく和む。絶対、笑ってそう。

 ……ツナの入ったホットサンドか。
 くす、と笑ってしまいそうになりながら、着替えを出して、シャワーを浴びた。コーヒーをセットしてから、ドライヤーをかける。髪が乾いて、リビングに行くと、椅子の上に置いたままの、遊園地の袋に気づいた。

 ああ、そうだ。昨日の写真……。
 中から取り出して、ジェットコースターでやたら笑顔の変な写真を、カウンターの上に置いた。

 ……嫌がりそうだな。ここに置くの。
 そんな風にも思うのだけれど、それも面白くて、そのままにする。

 コーヒーを注いで、一口飲んでから、朝食の準備。ツナと薄切りの玉ねぎと、サニーレタス。スクランブルエッグも好きだから焼こう。……でも起きてからでいいよな。
 玉ねぎだけ水にさらして、ツナに味をつける。

 料理は教わったけど、自分のためにはあんまり凝ったものは作らなかった。やっぱり手間だし。食べられればいいやと思ってたし。料理の見た目もそんなに気にすることもなく、適当にやってた。

 奏斗がおいしそうに食べるの想像すると、なんだか手間を手間だと思わないのが不思議な位で。……せっせと料理を作る、新妻の気分が分かるような……。……って、何考えてんだオレ。そんなもん、分かんねえわ。

 …………でもなんか、あれだよな。

 オレが作ったものを、奏斗が美味しいって言って食べて、それで奏斗が元気で居るのは、嬉しい気がする。
 むしろこれは、母親っぽい気分かな……? まあ、そっちもよく分かんねえけど……。
 そんな色々を考えながら手を動かしていると、焼く前の準備までは出来てしまったので、そろそろ奏斗を起こすことにした。寝室のドアを開けて、一瞬足が止まる。

「――――……」

 置いてたぬいぐるみが見えない。落ちたのかなと思いきや、なんだか布団が妙に膨らんでて、もしかして、と可笑しくなる。

 近づいて、奏斗を覗き込むと。まだ、すやすや寝てるんだけど。
 なぜか、ぬいぐるみが、布団の中に入っていて、奏斗がこれでもかと密着して抱き付いていた。

 ふ、と笑ってしまう。
 ……可愛い。昨日からの、こんな姿だけでも、買ってきて良かった。

 最初に土産の店を見てたら、奏斗にこれを抱かせたらあの座り方しなくて済むんじゃないかと、思い当たった。
 でも、相当邪魔だし、オレの部屋にこれかと思うと、園内を回りながらしばらく考えていたのだけれど。キーホルダーの顔を選ばせた時の、笑った顔を見たら、もう買おうと決めていた。


 ……でも、寝室は持ち込み禁止にしようかな。
これ、いつ、布団に引き入れたのかと、可笑しくなりながら、奏斗の背に触れた。






 
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