【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
290 / 556
ずっとそばに

「嫌な夢」*奏斗

しおりを挟む

   
 多分、これは夢だと、分かってる夢を見ることがある。
 今見てるのは、これはきっと、夢だって、今も思ってる。

 ……和希が居る夢。側にずっと。
 好きで好きで。和希もオレが好きだと言ってくれて。
 何度も、抱き合った。とにかく、夢中だった。和希が大好きだったから、気持ちよくて。
 抱かれるのも、好きだった。あの頃の、夢をたまに見る。

 和希を大好きで、ずっと笑ってる、オレを、上から見てる。

 そんなに大好きでも。……別れたいって、言われちゃうんだよ。
 ゲイは、嫌だって。 ……告白なんか、しなきゃよかったんだ。
 そしたら、和希はオレをそんな目では見なかっただろうし、キスしたり抱かれたりすることも無ければ、オレだって、友達で居られたかもしれない。

 ……無理か。
 友達で居られないから、告白したのか……。

 見てる目の前で、昔のオレと和希の姿が、流れていく。
 楽しそう……。何も考えず、和希だけを好きだった、日々。

 ……もうすぐ。

 別れを告げられる、頃かな。……見たくないな。
 もう何度も、夢に見てる。見たくない。目、覚めればいいのに。

 願い虚しく、夢がその時に、近づいてく。


「――――……と……」

 いつも通り、最後、和希に……。


「奏斗」

 びく、と体が震えて、それのせいで、目が覚めた。
 視界が少し滲むのは……涙、かな。ごし、と、目をこすった。
 こすり終えて見えたのは――――……。

「しのみや……?」
「……なんか、うなされてたから」

 ……まだ部屋は暗い。
 あぁ、そっか。……さっき、抱かれて……そのまま寝ちゃったのか。

「怖い夢でも見た?」

 笑いながら、四ノ宮はその手をオレの頬にかける。

「……やな夢、見てた」

 その手から避ける気もしなくて、そう言うと、すり、と撫でられる。

「もっと早く起こせば良かったかなー……なんか、悪夢見てる時起こしちゃだめ、とか聞かない?」
「……知らないけど…………今度そうだったら、起こして」
「――――……ん、分かった」

 何故だか、少し長い沈黙があって、その後、四ノ宮は、ふ、と微笑んで頷いた。そのまま、引き寄せられて、抱き締められる。

「……まだ眠いでしょ」
「…………うん」

「今度はいい夢見なよ」

 クスクス笑ってる四ノ宮の腕の中に、なんで大人しくはまってんのか。
 ……もうなんか、自分が分かんない。自分のセリフにも、少し経って、違和感を感じる。

 ……今度そうだったら起こしてって。
 今度そうだったら、って。

 今度も一緒に寝てる前提みたいだと、四ノ宮の腕の中で気づいて、自分の発言を訂正したい気持ちにもなるのだけれど。
 訂正しても無駄か、もう一回言っちゃったし。……さっきの沈黙と笑顔は、もう絶対それに気づいてるんだろうなーと思うと、何とも言えない。

「もっかい、おやすみ、奏斗」
「……うん。おやすみ」

「あー……明日、朝、何食べたい?」
「……朝?」
「食べたいもの言って」
「……ん……ホットサンド……ツナ入ってるやつ……」

 言うと、四ノ宮が笑うので、オレを抱き締めてるその体が少し揺れる。

「了解」

  笑みを含んだ声でそう言って、四ノ宮は、もう一度オレを抱き締め直した。

 振り解こうっていう気が起きないのが。
 ……自分で意味が分からない。





  
しおりを挟む
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡

感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷

投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。

Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷 
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵

感想 331

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

処理中です...