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ずっとそばに

「嫌な夢」*奏斗

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 多分、これは夢だと、分かってる夢を見ることがある。
 今見てるのは、これはきっと、夢だって、今も思ってる。

 ……和希が居る夢。側にずっと。
 好きで好きで。和希もオレが好きだと言ってくれて。
 何度も、抱き合った。とにかく、夢中だった。和希が大好きだったから、気持ちよくて。
 抱かれるのも、好きだった。あの頃の、夢をたまに見る。

 和希を大好きで、ずっと笑ってる、オレを、上から見てる。

 そんなに大好きでも。……別れたいって、言われちゃうんだよ。
 ゲイは、嫌だって。 ……告白なんか、しなきゃよかったんだ。
 そしたら、和希はオレをそんな目では見なかっただろうし、キスしたり抱かれたりすることも無ければ、オレだって、友達で居られたかもしれない。

 ……無理か。
 友達で居られないから、告白したのか……。

 見てる目の前で、昔のオレと和希の姿が、流れていく。
 楽しそう……。何も考えず、和希だけを好きだった、日々。

 ……もうすぐ。

 別れを告げられる、頃かな。……見たくないな。
 もう何度も、夢に見てる。見たくない。目、覚めればいいのに。

 願い虚しく、夢がその時に、近づいてく。


「――――……と……」

 いつも通り、最後、和希に……。


「奏斗」

 びく、と体が震えて、それのせいで、目が覚めた。
 視界が少し滲むのは……涙、かな。ごし、と、目をこすった。
 こすり終えて見えたのは――――……。

「しのみや……?」
「……なんか、うなされてたから」

 ……まだ部屋は暗い。
 あぁ、そっか。……さっき、抱かれて……そのまま寝ちゃったのか。

「怖い夢でも見た?」

 笑いながら、四ノ宮はその手をオレの頬にかける。

「……やな夢、見てた」

 その手から避ける気もしなくて、そう言うと、すり、と撫でられる。

「もっと早く起こせば良かったかなー……なんか、悪夢見てる時起こしちゃだめ、とか聞かない?」
「……知らないけど…………今度そうだったら、起こして」
「――――……ん、分かった」

 何故だか、少し長い沈黙があって、その後、四ノ宮は、ふ、と微笑んで頷いた。そのまま、引き寄せられて、抱き締められる。

「……まだ眠いでしょ」
「…………うん」

「今度はいい夢見なよ」

 クスクス笑ってる四ノ宮の腕の中に、なんで大人しくはまってんのか。
 ……もうなんか、自分が分かんない。自分のセリフにも、少し経って、違和感を感じる。

 ……今度そうだったら起こしてって。
 今度そうだったら、って。

 今度も一緒に寝てる前提みたいだと、四ノ宮の腕の中で気づいて、自分の発言を訂正したい気持ちにもなるのだけれど。
 訂正しても無駄か、もう一回言っちゃったし。……さっきの沈黙と笑顔は、もう絶対それに気づいてるんだろうなーと思うと、何とも言えない。

「もっかい、おやすみ、奏斗」
「……うん。おやすみ」

「あー……明日、朝、何食べたい?」
「……朝?」
「食べたいもの言って」
「……ん……ホットサンド……ツナ入ってるやつ……」

 言うと、四ノ宮が笑うので、オレを抱き締めてるその体が少し揺れる。

「了解」

  笑みを含んだ声でそう言って、四ノ宮は、もう一度オレを抱き締め直した。

 振り解こうっていう気が起きないのが。
 ……自分で意味が分からない。





  
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