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ずっとそばに

「良い奴」*奏斗

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 出口の前のショップは、本当にこれでもかと言う位広くて、山ほど商品がある。

「……四ノ宮、オレ、ここで葛城さんに買うものないよー」
「あ、そう?」
「オレはなんか、お酒とか、葛城さんが好きなもの買いたい」
「ああ、日本酒、好きだよ」
「じゃあ、明日日本酒買ってくる」
「一緒行く」
「一人で行けるけど……あ、でも葛城さんが好きなお酒分かる?」
「多分」
「じゃあ頼んだ」
「ん」

 てことで、葛城さんのお土産はないけど、真斗には買っていこ。
 ここらへんのお菓子、好きそう。チョコクランチみたいな……。
 いつ渡せるかな。次の試合が、今週末ならオレ、ゼミの合宿で行けないけど……。どこかで待ち合わせればいっか。

 家までもそんなに遠くないんだから、帰ってもいいのだけど。
 そもそも実家に行きづらいのもあるんだけど……和希が帰ったと聞いてからはますます、帰る気がしない。地元の駅。近所だし。……和希だけで帰って来てるなら、家はもしかしたら、近所だったあの家じゃなくて、アパートとかかも……? でももうそうなるとどこで遭遇するか分からないし。
 そう思ってしまうと、実家に帰る気が無くなってしまってた。
 でも昨日、顔見て……。思ってたより、オレ、もっとどうかなるんじゃないかと思ってたけど……。

「奏斗、この顔とこの顔、どっちが可愛い?」
「え?」
 お菓子の箱の包装紙に描いてある、この遊園地のキャラクターの顔。
 にっこり笑ってる顔と、目をつむって笑ってる顔。

「……ええ……どっちだろ。どっちも可愛いよ?」
「見てると和むのどっち?」
「えーと……この矢印みたいな目の方。すごく楽しそうだから」
「オッケー」
「……? このお菓子買うの?」
「いや、これは買わないけど」

 四ノ宮はクスクス笑いながら、オレを見る。

「美味しそうなお菓子選んでくれる? うちで働いてる人たちに適当に買ってくから。葛城に渡す」
「どれくらい?」
「多めので三箱くらいかなあ……」
「偉いね。そういうの買ってったりするんだ」
「……外面よく生きてきたからね」

 苦笑して見せる四ノ宮。「そんなことないよ?」とすぐに否定したオレに、四ノ宮は「ん?」と不思議そう。

「別に外面とかじゃないでしょ。買っていこうかなって思ってる時点で、偉いよ? そういうの、気付かない奴は、気付かないからさ……」
「――――……」

「あれだね、基本的なとこで、すごく良い奴なんだろうね、四ノ宮」

 だからオレなんかにも、こんなに構って、大事とか言っちゃうんだろうなと思いながらそう言ったら。

 不意に。ふ、と、照れたみたいに笑った四ノ宮は。
 手で自分の口を覆って、んー、と考えてる。

「……オレ、良い奴ではないと思うけど」
「――――……」

「奏斗に言われンのは、嬉しいかもしれない」

 何だか、何も言えないまま。
 四ノ宮が嬉しそうに笑うのを見ていたオレは。

 四ノ宮が、「あれがいいかも」とか言って、ちょっと離れたお菓子のところに歩いていくまで、ちょっと固まってた。


 ……なんか。
 …………照れるとか。あんな風に笑われると。

 調子狂う。つーか。こっちが照れるっていうか。


 ……オレが昨日、和希に会っても、なんとか底まで落ちずに、普通で居られたのは。
 …………四ノ宮が居てくれた、から。というのは、分かってる……。


 …………なんなのかな、四ノ宮。
 もう、オレの中で、印象が変わってく人間、ダントツナンバーワンの称号をあげよう……。
 





(2023/1/25)



(≧▽≦)
↑ 奏斗が可愛いって言ったのはこういう顔♡
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