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ずっとそばに
「大事?」*奏斗
しおりを挟むなんだか、微笑んでる四ノ宮を、ただ見つめる。
ふと、四ノ宮が窓の外に目を向けるので、自然とオレも、窓の外を見た。
目の前に、花火。
……めちゃくちゃ、綺麗。
「いいね、すっごい綺麗」
……なんか四ノ宮って。
話し出した頃から。どんどん印象が変わってって。態度も変わってって。
……うさんくさいなんて思ってた時と比べると、なんだか別人みたい。
その変化に、ついていけず、オレは、取り残されてる気がする。
何発も続けざまに花火が上がって、短い花火が終了した。
瞳の奥に眩しい光の影が残る。
「……良かった、乗ってる間に見れて。見れたらいいなーとは思ってたんだけどさ、花火時間短いらしいし、タイミングが合わなかったらって思って言わなかったんだよね」
クスクス笑って、四ノ宮の視線がオレに戻ってくる。
「結構良くなかった? 観覧車で花火」
「……うん。綺麗だった」
「だよね。オレも、思ってたより近く見えて、結構良かった」
そんなこと言ってる、四ノ宮に、頷いていると。ふ、と見つめられた。
「奏斗、やっぱり言っとく。意味わかんないとか、思われてンのは、嫌だから。覚えといて」
「……?」
「オレ、あんたのこと大事だから」
「――――……」
「……一人で泣かせたくないし、好きでもない相手に、触れさせたくない。……あんたがそれをほんとに望んでるなら仕方ないけど……自分のこと汚いとか、訳わかんないこと言っちゃうようなこと、絶対もう、させたくない」
「……」
「美味しいもの、食べさせたいし。笑っててほしいし。……楽しいと思うとこ、連れて行きたい」
「……」
「オレがあんたにしてること全部、ただの知り合いにすることじゃない。知ってる他の誰にもしない。大事だから。奏斗だけだから。あと、これ……あんたが本気で嫌がらない限り、ずっとだから……覚えといて」
何も返す言葉が浮かばなくて、瞬きだけ繰り返す。
……大事、だから。
よく分からないけど。……大事だから、っていう言葉が。
何だか、心のどこかに、するする、入ってきたみたいな。
「なんで……オレなんか、大事、なの」
そう言うと、四ノ宮は急にムッとした顔をした。
眉を寄せたまま、ちょっと窓の外を見て、あ、という顔をした。
何か見えた? と思った瞬間。
「え」
ぐい、と引かれて。
キス、された。
離れようとしたけど、後頭部にまわってる手に押さえられて、逃げられないまま、数秒、キスされて。
「っ……っだから、見えるから嫌だって……」
「今オレ、一番上で、キスしたからね」
「――――……は?」
「観覧車の一番上で、キス。……オレの方は、もう決めてるから」
「――――……」
「……次ここ来た時は……奏斗からしてくれたらいいけどね」
クスクス笑って、そんなことを言う四ノ宮が。
……オレには、何だかほんとに理解できない。
「何でオレなんかって言うけど。……なんか、とか、ほんといらない」
「……」
「……オレなんか、とか、絶対言わせないように大事にしようってしか、思わない」
まっすぐに見つめられて、そんなことを言われる。
押さえられていた手は解かれたから、少し距離をとって。
何だか何も答えられずにオレは、外の景色に目を向けた。
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