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ずっとそばに

「もー」*奏斗

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 オレが先にスタート。
 思ったより本格的。ただ狭い決められた道を走るだけとかじゃなくて、ちゃんと運転する感じ。道も広いし、すごい楽しいな。

 昼間通りかかった時に見てた限りだと、後ろが追い付くってことはほぼあり得ない感じ。前が子供だったりすると、後ろの親が追い付いたりしていたけど、それ以外は、十分な距離を進んでから、係りの人がスタートを言い渡してたし。

 ……追いかける、か。
 いつも追いかけてるって。何の話だ。って思ったんだけど。
 さっき言われた言葉が、なんだか引っかかってる。

 …………四ノ宮って何なのかな。
 ……オレのこと、なんであんなに構うの。
 しかも、通常レベルの「構う」は大きく飛び越えてる感じがするし。
 
 オレ、色んな人と寝てたけど……その時間だけで区切って考えてた。
 ……日常生活には、何の関わりも持たせなかった。むしろ関わるのが嫌だから、出会ってその時だけ、みたいなことしてたんだけど……。
 事実として容易くそんなことしてたオレには言われたくないかもしんないけど、軽く寝るのとか、ほんとやめた方がいいと思う。

 女の子と遊ぶって言ってたけど……女の子とすんのと、オレとすんのと、一緒なのかな。……その感覚は、オレにはよく分かんないから何とも言えないけど。

 あとくされない感じの女の子と遊ぶのと……。
 ゼミも家も、めちゃくちゃ距離の近いオレと寝るのは……違うよね、普通。

 ゴールして、車から降りたところで四ノ宮が着いた。

「あれっ、早くない?」
「え、当たり前じゃん、追いつくつもりでやってたし」
「そうなの?」

 ヘルメットを外して、係りの人に渡していたら、ぴこん、と音がして、オレのタイムが出た。五分三十六秒だって。それしか走ってなかったんだ。結構走ってた気分だったけど。

「早い方みたいだよ、今日のベストタイムとか、出てる。奏斗、六位だって」
「やったー。四ノ宮に勝ったかな?」
「さあ。どうだろね」

 少し待ってると、またぴこんと音がして。

「――――……四分五十九秒だって。オレ三位みたいだね」

 ふふん、とご機嫌な感じの四ノ宮に、眉が寄ってしまう。

「……つか、お前、真剣すぎない? もーなんかムカつくー」

 言うけど、四ノ宮はクスクス笑ってる。

「あ、勝ったから、言うこと聞いてくれるんだよね?」
「……変なのやだかんね。普通のお願いだからな」
「普通のって何が普通なのかよくわからないけど」
「…………」

 むむむむ。
 無言で睨んでると、クッと笑い出して、オレを見つめる。

「嘘嘘。なるべく普通のね。考えとく」

 そう言いながら、時計を見た四ノ宮は「あ、やば」と言って、オレの腕をとった。

「行こ、観覧車。最終の時間もうすぐだから」
「あ、うん」

 少し観覧車迄離れてるので、二人で急いで歩く。

「結構ゴーカート、待ち時間長かったもんね。まあでも間に合いそうかな」
「うん」

「ちょうど乗りたかった時間に乗れそう」

 観覧車は五組待ち位。
 小さい子供連れがもうほとんど帰ってるみたいで、園内の人、かなり少なくなってる。

「なに? 乗りたかった時間って」
「ああ……ちょっとね。乗れたらいいなーと思ってた時間なんだ」
「……?? 何、どういうこと?」
「すぐ分かるから待ってて」

 クスクス笑って、四ノ宮はオレに微笑む。


 



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