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ずっとそばに
「ずっと居る」*奏斗
しおりを挟む「ん。……まあ。そう、だね」
大好きだったけど、思い出があるところは、避けてた気がする。
でも、確かに、今も大好き、だ。
そんなことを考えていたら。
四ノ宮の手が、頭に置かれて、見上げると、よしよしと撫でられる。
……何考えてるかは、分かんないはず、なのに。なんで今、撫でてんのかな。ほんと、変な、奴……。
と、その時、付近を照らしていたライトが消えて、真っ暗になった。
「あ。始まるみたい」
四ノ宮の声がしてすぐ後、音楽が鳴り始めて、不意に目の前のプールから、水が立ち上った。噴水みたいに。
たくさんのライトに照らされて、水がキラキラ光る。
音楽に合わせて、次々と色んなところから、水が噴き出して、ライトに照らされる。
「うわ……すご」
水と光と、音楽のショーなんだ。
突然目の前で広がった光景に自然と笑顔になった。
次々繰り広げられる光景に見惚れたまま。どれくらい経ったんだろう。
最後、ますます盛り上がって、ふっとすべてが消えた。
見ていた人達から自然と拍手が起こって、「ありがとうございました、引き続き園内でお楽しみください」というアナウンスが流れると、皆、バラバラと散り始める。
「……すごかったね。初めて見た。こんなのやってたんだ」
「今年からだって書いてあったよ」
「そうなんだ。すごかった」
「プール開きの前で終わっちゃうらしいから、見れて良かったね」
「うん……」
頷いて、もう、さっきまでが嘘みたいに静かで暗い、プールの施設を見下ろす。
「こういうの、好きでしょ?」
「うん。好き……綺麗だった。もっ回見たい」
「どうだろね。プールが終わったらまたやるかな?」
「好評だったら来年もやるのかな」
時間にしたら二十分くらいだったのかな。何曲か聞いた気がするから。
――――……なんかでも、あっという間だった。
「来年もやってたら、連れてきてあげるから」
四ノ宮がクスクス笑いながら、オレを見つめる。
……来年も。連れてきてくれる。とか。
「四ノ宮って、軽く言うよな……」
「ん? 何が?」
「来年、とかさ。……分かんないじゃん。そんな先のこと。言わない方が、いいと思う」
「――――……」
もう静かで暗くなった、下方に視線を落として、そう言ってから。
……あ、これも言わない方が、良かったか。
言わないで、社交辞令位で受け取って、そのまま流して。
……その方が良かったな。何でこんなこと、わざわざ言っちゃったんだろ。
「あーと……ごめん、余計なこと言った。……そだね、来れたら、来……」
そう言いかけていたら、不意に、腕を掴まれて、ぐい、と引き寄せられて。
驚いてる間に、キスされた。
「――――……っ……っ」
引けないように押さえられてて、押し返せないように、うまく掴まれてて、短い時間で、深く、キスされて。辛うじて、顔をそむけたけれど、また追われて、塞がれる。
「……っン……ッ……」
息が出来なくて、声が漏れると。
四ノ宮は、ゆっくりと、オレの唇を、離した。
「…………ッ」
少し視界が開けて、周囲をぱっと見ると、四ノ宮は、べー、と舌を見せて、笑った。
「止まって話してる内に、さっきからもう誰も居なかったよ」
その言葉にホッとすると共に、なんだか無性に腹が立つ。
「何で、急にこんなキス、すんだよ」
「――――……なんかムカつくこと言うから。塞ごうと思って」
「…………何がだよ……っ」
「オレが言ってるのは、行く気もないのに適当に言ってる訳じゃないから」
「――――……」
「ずっと居るって、言ってるじゃん。なのに、軽く言うなとか言ったりさ、そのくせ、適当に、来れたらとか言いだすし」
「――――……」
「……来れたら、じゃねーの。 やってたら、来るからね」
「…………」
ほんと、奏斗は……はー、とか、ぶつぶつ言いながら、四ノ宮は、オレの手首を掴んだ。
「ほら、行くよ。閉園まで一時間ちょっとしかないんだからさ。まだたくさん乗るんでしょ?」
言いながら、歩き出す。
「……うん。乗る」
「早くいこ」
「……でも、手、離せよ」
軽く振りほどくと、ち、と四ノ宮が軽く舌打ちの真似。
「何から乗りたいの?」
クスクス笑いながら、背中に触れてくる。
なんだかな。ほんとに。
……ずっと居るって。
――――……まるで本気みたいに、聞こえてくる。
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