【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
268 / 556
ずっとそばに

■番外編■クリスマス🎄4 完

しおりを挟む
 
【side*大翔】


 クリスマス。
 どうすんのかなあ、この人は。

 気になる人と過ごしますってのは無いとは思うけど……誰か友達とパーティするとかはありそう。誘うか、どうするか。この人から言ってくんないのかなあ。こんだけ一緒に居るんだから、クリスマスどうすんの、とかたまには奏斗から聞いてくれたらいいのに。なんかいっつもオレからばかりだし、ちょっとどうしようかなとか思っていたんだけど。

 抱いた後、気怠そうに水を飲んでる姿が何だか色っぽくて。

 やっぱり、オレから聞いてしまった。クリスマス、どうすんのか。
 意地張っててもしょうがないやと思ったからだったのだけれど。

 どうやら、誘われていたのに、行くと答えてはなかったみたい。
 そっか。……意外と、オレのこと、気にしててくれたとか? きっと、そうだよな。それ以外に、理由は無さそう。

 オレがいつもいつも無理無理居るから、ということが理由だったとしても。なんだか、とても、嬉しくなる。


 翌日、やっぱりちゃんと断って、オレと居てくれることにした奏斗を連れて、昼間はちょっとのんびり観光して、夕方から、イルミネーションを見に行った。遊園地とかも好きだけど、水族館とかイルミネーションとかそういうところ、大好きみたいで、無邪気な感じがほんと可愛いなと思いながら、ご機嫌の奏斗と、帰ってきた。

 寄ったデパ地下は、クリスマスのものしかないんじゃないだろうかみたいな感じ。

「せっかくだから、美味しいもの食べよー」

 渋々オレと過ごすのOKしてくれた感だった気もするけど。
 もう出かけてからはずっと、オレよりウキウキしてるし。今もすごく楽しそう。

 いくつかクリスマスっぽい料理の、チキンとかサラダ、ピザや飲み物を購入。ケーキもすぐに決まったし、車に戻って、荷物をトランクに入れて帰ろうという時に、奏斗がオレを見上げた。

「なあ、プレゼント交換する??」
「……いいよ? 何を?」

 頷くと、奏斗は、「じゃあ、三千円以内で何か」と笑う。

「安くない?」
 言うと、「いいじゃん、それくらいで、良いもん選んで」と笑んで、オレを見上げる。

「じゃあ三十分後にここで待ち合わせしよ」

 ウキウキしてる奏斗に頷いて、店内に戻ったところで、別れた。
 その後ろ姿を見送りながら、んーと、考える。

 オレもう、奏斗にはプレゼント買っちゃってるんだよなー。
 すごく肌触りの良い、手袋。……三千円では、全然ない。

 まいっか。あれは普通にプレゼントで、今から探すのは、プレゼント交換用ってことで。

 つーか。プレゼント交換とか……。子供みたいな。
 ……なんだか顔がほころんでしまう。



◇ ◇ ◇ ◇


 買ってきたものを温めて並べて、飲み物も出して、二人でクリスマス。

「あ、このチキン美味しい」
「どれ?」
「これ」

 奏斗がオレの皿にのせてくる。

「ほんとだ」
「うん」

 ふ、と穏やかに笑う。そんな笑顔が、結構好きだったりする。
 色々食べ終わったところで、そう言えばと思って。

「そろそろプレゼント交換、する?」
「ん、いーよ。取ってくるね」
「ん」

 そうだ、買って来たもの、わざわざ自分ちに置きに行ってたっけ。
 別に、置いといたって見ないのにと思ったけど。

 玄関まで一緒に行くと、出て行ってすぐに、奏斗の家のドアが開く音がした。すぐに戻ってきて、待ってるオレと目が合うと、「ただいま」と言って鍵を閉めて上がってくる。

 ……ただいまって。
 笑ってしまいそうになる。

 うちに来て、ただいまって。
 ……奏斗には何の意味もないのかもしれない。ただ、行って帰ってきて、ただいまって言っただけ。

 ――――……でもなんか。
 オレんちに来て、ただいまって言ったことが、なんだか、可笑しくなるくらい嬉しい。とか。

「奏斗」
「え?」

 腕を引いて、びっくりして奏斗に、口づけた。

「……っん……?」

 深く、合わせると、疑問のついたくぐもった喘ぎ。
 ゆっくり離すと、つか、なんなの?、と怒られる。
 つい、と言うと、ますます怒られたけど、笑ってしまった。

 
 その後、プレゼント交換で、お互い渡したのは。
 どちらも、香水だった。

「ていうか、何で買うもの、かぶるの?」
「奏斗は、何で香水にしたの?」

「香水なら、あっても困んないかなと思って」
「そっか」

 ……奏斗はあんまり意味無さそうだけど。

 香水って――――……意識してる人につけさせるのは、大分意味があると思う。香りをまとっててほしいとか。……独占欲に近いものもあると思うけど。
 オレは明らかにそれな気がする。

 見てる目の前で、奏斗がしゅ、と手首にひと拭き。

「……あ。好きかも、これ」
「あ、ほんと。良かった。……オレも、好きだよ、この香り」
「そっか。良かった」

 ふ、と笑んで。
 それから、奏斗がオレをふと見つめる。

「? 何?」
「……あと。……なんか、いつもさ、色々作ってもらったりしてるから」
「――――……?」
「クリスマスプレゼントっていうか……どっちかというと、お礼」

 とか言いながら、何かを差し出してくる。
 受け取って、「お礼」とやらのリボンを外して中を見ると。

 すごく手触りのいい、マフラーが入っていた。
 でも何だか不思議で、オレは奏斗をじっと見つめた。

「ていうか……何で三千円とか、言ったの? プレゼント交換とか」

 そう聞くと、奏斗は、ちょっと眉を寄せた。

「……お礼に何か買いたかったけど、ずっと一緒だったしさ……離れる口実っていうか……でも、金額決めないとお前、なんか、高いの買いそうでお礼になんないじゃん? だから」
「だから、その提案だったの」
「……うん。そう」

「何で律儀に香水も買ったの?」
「……マフラー見に行った店に、色んなもの置いてあって、これ、良い香りだったから。プレゼント交換はこっちでして、お礼はお礼で渡そうと思って」

「……じゃあさ。奏斗のこれはありがたくもらうからさ」
「うん?」

「オレからも、お礼」
「え??」

 用意してた手袋を渡すと、中を見て、奏斗はそれを手に取る。

「なんの、お礼?」
「……オレと過ごしてくれて? かな」

「…………何言ってんの、お前。ていうか、これ、すごい高そうだし」

 もー、とため息をついてる奏斗に苦笑してしまう。

「……値段はいいよ。お互い、プレゼントしあえて良かったよね」
「まあ……そ、だね」

 肩を竦めながら、笑って、奏斗は頷いた。

「手触り、似てない? マフラーと手袋」
「似てる」

 クスクス笑いながら答える。

「意外と好きなもん、似てるのかもな」

 そんな風に言って、奏斗が笑う。


 なんかそういうの言って笑うの。
 ――――……ほんと、かわいい。

 顔傾けて、近づくと。引かれる。

「何で引くの」
「……っまたキスしようとしてるだろ」
「してるけど。だめ?」
「…………っ」

 至近距離で聞くと、言葉に詰まって、何も言えなくなる奏斗に。
 何だか顔が綻んでしまう。

 後頭部に手を置いて、引けないようにして、唇を重ねた。


「……来年も、しようね、プレゼント交換」
「――――……一緒に、居たら、な」
「居るよ」
「……居ないと思うけど」
「……じゃあ居たらね。 ……居るけど」
「…………」

 なんだかムッとして黙る奏斗に。
 ふ、と笑ってしまう。

 居ないっていう前提の方が楽なんだろうけど。
 ……居るって思ってて居なくなるのが嫌なんだろうけど。


「絶対居るから。しようね」
「……居たらね」



 あくまで言う奏斗から。
 オレがあげた香水の香りがする。


 何だか嬉しくなって。
 ゆっくりゆっくり、キスをした。
 




 
 
(2022/12/31)








あとがき♡
◇ ◇ ◇ ◇

今現在の関係でクリスマスが来たら、て話でした……(笑)
本編は今、夏前なのでもはや、パラレル世界のようなものだと思って下さいませ♡
パラレルと思って。少し甘い感じに……なってました?(*´艸`*)ウフ。

次回から本編に戻ります♡

しおりを挟む
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡

感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷

投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。

Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷 
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵

感想 331

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...