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ずっとそばに

「可愛いとしか」*大翔

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「四ノ宮はさ」
「ん?」
「遊園地とか、よくデートに来たの?」
「……いや。ほとんど来たことないな」
「え。じゃあ何で今日来たの? 好きだからかと思った」
「んー? まあ日常ぽくない空間の方が楽しめるかなと思ったから」

 そう言うと、食べながら、んーと考えてる奏斗は、一口飲み込むと。

「もしかして、四ノ宮は実はあんまり好きじゃないの?」
 と、聞いてきた。

「……待ち時間とかさ、暇だと思うし。退屈かなーと思ってたんだけど」
「だけど?」
「奏斗と居るのは、すごく楽しいよ」
「――――……」

「誰よりも楽しそうだから、可愛いし」

 オレが、ぷ、と笑ってしまうと、奏斗は途端にムッとした。

「バカにしてるよね?」
「してないって。……ほんと、可愛いと思ってるよ」

「絶対バカにしてる……」

 本気で可愛いって言ってんのに、むむむむ、と眉を顰めたまま、ぱくぱくご飯を詰め込んでいる。

 ……まあ、そんな姿も、可愛いと思ってしまうんだけど。
 なんでこんなに可愛いかなぁ……?

「バカにして可愛いなんて言わないけどね、オレ」

 クスクス笑うけど、ぱくぱく食べ続けてるし。
 ……隣の女子は聞き耳立ててるけど、この店、音楽結構うるさくて、あんまり聞こえてはいなそう。うるさい分、オレが少し奏斗に近づいて話してるのも、女子たちには余計興味津々らしいが。

「四ノ宮」
「ん?」
「可愛いって次言ったら……」
「ん」
「もうしゃべんない」
「――――……」

 なんだそれ。ムクれた上でそんなこと言われると。
 ……可愛いなと思ってしまうけど。
 いやいや、絶対言うけどね。そう思いながらも、ここではあえてそれ以上は言わなくてもいいかなと思い、しばらく無言で食事を続けた。

「食べ終えたら、何乗りに行きたいの?」

 そう聞くと、奏斗は、んー、と考えた後。

「食べてすぐ、オレが乗りたいもの乗ったら、吐く自信がある」
「何その自信……」

 苦笑しつつ、食事を終えたオレは、奏斗の横のパンフレットを手に取った。

「ちょっと見せて」
「うん。ていうか、四ノ宮、パンフ初めて見たでしょ」
「つか奏斗がずっと見てるから、見る必要なかったし」

 笑いながらパンフレットを開いて、何か穏やかそうなアトラクションがないか、探してみる。

「……気持ち悪くならないような乗り物がいいよね?」
「うん」

 もぐもぐ食べながら、頷いてる。

「……関係ないけどさ」
「うん?」
「……奏斗の食べ方って、可愛いよね」
「ぐ」

 ……ごほごほごほ。
 すっかりむせて、げほげほ咳き込んでる。

「こ、んど言ったらしゃべんないって……っ」
「食べ方の話だから、いいじゃん?」
「……っ一緒だってば」

 何だかなぁ。リスとか。そんな感じに見える。
 ……二十歳近い男がリスってなぜ。そう思うのだけれど、可愛いと思って浮かんでしまうものは、どうしようもない。

 すっかりオレから顔を背けて、ご飯を食べてるが。
 面白いので放っておく。

「……あ、観覧車は?」
「観覧車、好きだけど……夜乗りたいなぁ」
「ん? 何で?」
「夜、上から景色見るの、綺麗だからさ」
「あぁ、なるほど……」

 そう返事をしながらも。

 ……この人、当然のように夜まで居るつもりなんだな、ということに。
 笑ってしまいそうになる。

「……じゃあさ」
「何笑ってンの?」

 あ。笑ってた。突っ込まれて、結局自分が笑ってたことに気づいて、苦笑しながらも。

「昼も乗って、夜も乗るってのは?」
「…………」
「昼は昼で、上から見るの、楽しいんじゃない?」

 そう言うと。

「うん。そーしよっか」

 ふわ、と笑う。


 ――――……だから。
 ほんとに、可愛いなあ。もう。

 だめだな、オレ。この人を可愛いって認めてから。
 可愛いとしか、見られなくなってる。




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