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揺れる
「たまには」*奏斗
しおりを挟む自分のは適度に注いで、牛乳を入れる。
こくん、と飲んで。
四ノ宮がまだ電話してるのを後ろから見つめる。
なんか四ノ宮とばかり、一緒に居て。
他の人とはしないことを四ノ宮として。
……結果的に四ノ宮のことばかり考えているけど。
「――――……」
でも別にこれは……恋愛感情、とかじゃないよな。
――――……そういう意味で、四ノ宮のことが好きなわけじゃないし。
ドキドキするとか、そういうのも、別に無いし。
和希のことが好きだった時の、見てるだけでドキドキとかも無いし。
……変な奴、とか。宇宙人とか、詐欺師とか……お母さんとか……。
いっぱいあだ名付けてるけど、とにかく意味が分かんない、変な奴……。
……ていうか、四ノ宮も、オレを恋愛の相手として見てるんじゃないしな。
四ノ宮はオレに恋人が出来たら、身を引くから大丈夫って、言ってたし。
……ほんと。変なの。
そこまで考えた時に、四ノ宮がやっと電話を切って、オレのそばに歩いてきた。
「火曜、授業終わったら、裏の駐車場んとこで待ち合わせたよ」
「……ん、分かった」
「なんかちょっと張り切ってたよ、オレとは違う感じのスーツを着せたら、良い宣伝になりそう、だってさ」
「オレがオーダースーツなんか着たって、絶対七五三みたいになるって」
「んなことないでしょ。絶対似合うって」
ふ、と視線が緩んで、オレを見つめる。
それには特に何も言わず、オレがコーヒーを口にすると、四ノ宮も飲もうと思ったのか、カップを見て……。
「――――……あのさぁ、このコーヒー、オレの?」
「牛乳入れられないし、もうこのまま飲んでもらおーかなーと……」
「何これ……」
四ノ宮は並々注がれて、表面張力で零れてないようなそれを見下ろして。
ものすごーくそー--っと、カップを持ち上げて、そーっと飲んでる。
「……あっぶな」
「あ、すごい。良くこぼさなかったね」
クスクス笑って言うと、四ノ宮は苦笑い。
「何考えてたの、これ淹れてた時」
そう聞かれて、じっと見つめられる。
「なんだっけな……忘れちゃった」
そう答えながら、マグカップを持って、ソファに向かう。
ソファに腰かけて、コーヒーを飲んでいると、四ノ宮がオレの隣に腰かけた。
「今日どうする?」
「――――……」
「どっか行く?」
「――――……んー……」
「それとも家に居たい?」
「……四ノ宮の好きでいいよ」
「オレの好き? ……何で?」
じっと見つめられて、何でって言われると……別にそこまで大した理由もないのだけれど。
「んー……なんかいっつも、付き合わせてる気がするから……たまには、付き合おうかなって」
「――――……ふぅん?」
そう一言呟くように言った後。
なんかものすごく嬉しそうに笑って、んー、と考えてる。
「奏斗、疲れてる?」
「――――……??」
どういう意味? どっか疲れるようなとこ行くってこと?
「夜も朝も、付き合ってもらったし」
「……っっ! もう何なの、お前……」
「別にからかってるわけじゃなくて。睡眠足りてないかなあって」
「…………ッ」
普通に話してる時に、それをつっこんでくるの、マジやめて。
ムッとして、四ノ宮を見てると、四ノ宮は楽しそうに、クスクス笑う。
「奏斗、どれくらい元気?」
「どれくらい……運動できる位は、元気」
「なんでもできる?」
「なんでも……? うん、まあ。元気だよ?」
「分かった。コーヒー飲んだら、出かけよ?」
「――――……うん」
「つくまで内緒ね」
何だかものすごく楽しそうなので、とりあえず、うん、と頷いておいたけど。
……どこいくんだろうと、ちょっと不安。
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