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揺れる

「したいこと」*大翔

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「――――……」

 キスしてる内に、すっかりその気になって、そのまま抱いてしまった。

 キスまでなら諦めてくれてた奏斗は、体に触れだした瞬間ビクッと震えて、噓だろ、とオレを見た。
 若干の制止はあったけれど、無視して、奏斗の感じるところに触れた。

 快感に弱すぎる奏斗は、すぐにオレの思うままで。
 体を繋げて、中を突くと、思うとおりに上がる声に煽られて。
 ……めちゃくちゃイかせてやってたら、ふっと気を失うみたいに眠ってしまった。仕方なく抜いて、後始末。
 寝てるのにやり続けて起こしたら、さすがに朝から、キレられそうな気がして、やめておいた。

 目尻に涙。
 ――――……これは。気持ちいいからだと思う。
 多分シてる間は、何も考えてなさそう。
 反応するのに必死で。我慢したいみたいだけど結局声をあげて。

 ――――……快感に弱いのは……和希のせいなのか。
 色んな相手が居たからなのか。

 ……汚い、とは微塵も思わないけど、この人のそういうとこを見た奴らが何人もいるんだと思うと、そっちはムカつく。


 ……好き。だとは思う。
 ――――……オレは、嫌いな奴なんかに構うような人間じゃないから。

 相当好きなんだとは思う。

 ただ、恋愛なのかとか聞かれるとよく分からないし。

 今は、まだ、この人にそんなの求めたって、無理だろうし。
 ――――……決めなくていいんじゃないかと。

 ただ、側には居るし、一人にはしたくないし。
 ……大事に、したい。

 大事に思われてるって、思わせたい。
 ……とりあえず、それでいいよな。

 こっちを向いてスヤスヤ眠ってる頬に、片手を触れさせて。すり、と撫でる。
 普段はほんと、純粋に可愛いけど。
 抱くと、途端に乱れて。――――……耐えようとするのも、なんか可愛いし。

 ……この人を抱いてて、よく、別れる決意、したよな。
 そんだけ、高校生の普通の男には、ゲイになるってことが重かった、てことかな……。

 頬に触れてた手で、布団を奏斗の肩まで引き上げる。
 そのまま奏斗を引き寄せて、抱き締める。

「――――……」

 別れたの高校生で……それがずーっとトラウマみたいになる位、あいつが好きだったってことだよな。

 昨日会った、和希の顔が浮かぶ。
 ……ああいうのが、好きなのか。なんて思い出すと、なんだか、面白くない。

 江川が言ってた。モテる人って。まあ……多分オレとは違う、裏表もなく、まっすぐな感じの良い奴そうな。……この人が好きになりそうって、すごく分かる気がする。……どうしてか、ものすごく、ムカつくけど。

 泣いてたんだろうな……。
 和希と別れた後。一人で。
 ――――……父親と揉めて否定されながら。……真斗が居て、まだ良かったんだろうけど。

 和希は和希で、自分のことに必死だったんだろうけど。
 ――――……そんな理由で振られて、泣いて。おかしくなって。
 一人で暮らして。友達とも連絡も取らず。
 オレがなんとなく面倒で連絡しないのと、この人がそんな理由で友達に連絡とらないのは、全然話が違うんだろうし。
 その頃の奏斗のことを、想像するだけで、なんだかたまらなくなる。

 とにかくもう一人では泣かせない。
 側に居る。

 和希と何があろうが、どうなろうが。
 ……本気で嫌がられるまでは、絶対離れない。

 オレがしたいのは、それ。
 そう決めた途端、何だかすごくすっきりした。
 

「……奏斗」

 抱き寄せて――――……なんとなく、静かに、名前を呼ぶ。


 ……まあ多分、心底嫌がられてはいない。ってだけで今は良しとしよう。
 ……しょっちゅう意味が分かんないって言われてはいるけど。

 ふ、と、苦笑いが浮かんでしまう。


 確かに、意味が分からない。
 ……こんな風に側に居たいとか。なし崩しみたいな感じでもいいから、とりあえず側に居て、大事にしたいとか。
 自分でも初めてすぎて、まったく意味が分からない。

 …………けど。そうしたいのは、まぎれもない、事実。

 ……オレに大事にされるのはいつものこと、くらいまで。
 どーにかもっていくしかないな、と。色々考える。




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