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揺れる

「何でオレは?」*奏斗

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 食事を終えて片付けた。
 シャワー浴びたいし、着替えとかも無いし、帰る、と言うと。
 シャワー浴びたら、コーヒー淹れて持ってきて?と言われた。

 ――――……なんか。結局朝からずっと、世話、かけた気がするし。
 ……それくらい、いっか、と思って、頷いた。

 家に帰って、シャワーを浴びて、コーヒーを淹れ終えて、何となくスマホを手に、ソファに腰かけたところで、四ノ宮からメッセージが届いた。

『もうシャワー終わったから、いつでもいいよ』と。
「分かった」と返す。

 なんか最近ずっと、生活してる全部に四ノ宮が絡んでて。
 ――――……何でこんな感じだろうと思うと。

 ……オレが、ふらふら、情けないからかなあと、思いついた。

 ……後輩なのにな。
 心配させちゃってる、気がする。

 ……でも、普通の人は、心配するか……。

 振られて、家族にバレて、家を出て一人暮らしで、行きずりの奴と一時限りで寝て。泣いたりうろたえたり。情けないとこばっかり見せてる気がするもんなぁ。ここまでくれば、心配するか……。

 …………もうちょっと、しっかりしよう。
 四ノ宮に心配かけずにいられるように。
 うん、そうしよう。

 気を取り直して、立ち上がると、コーヒーとスマホを持って、家を出た。
 ピンポンを鳴らすと、程なくドアが開く。

「おかえり」と迎えられて、ちょっと戸惑う。
 おかえり、か。
 オレの帰る家は、隣だけど。と思うけど。

「……何で、そんなに嬉しそうなの」

 そっちの方が気になって聞くと。

「ちゃんと、戻ってきたから」
 と笑う。何と答えていいか、悩む……。

「鍵かけて」
 言われて、ドアに鍵をかけて、部屋に上がる。

「もう、こっちで寝られるようにしてきた?」
「――――……オレ、今日もここで寝るの?」
「問題ある?」
「……でも……」
「……まあ、後で話そうか。コーヒー、飲も?」

 そう言う四ノ宮に頷いて、一緒にリビングに。
 四ノ宮が出してくれたマグカップに、コーヒーを注ぐ。

「牛乳入れる?」
「あ、うん」

 なんかこの流れも慣れてきたなぁ……。
 テーブルで並んで、一緒にコーヒーを飲む。

 また、隣同士で、並んで。

「……あのさあ、四ノ宮」
「ん?」

「二人なのに並ぶって、変だと思わない?」
「別に?」

「……他の人ともこうやって並ぶの?」
「並ぶ訳ないし。……てか、家にそんな、呼ばないし」

「呼ばないの?」
「呼ばないよ。オレ、基本、家には他人を入れたくないから」

 その言葉に、ものすごく複雑な気分になる。
 ……他人は入れたくない、って。

 ……オレは、嫌がっても、居させられてる気がするんだけど気のせい??
 むーん……??
 
 ちょっと眉をひそめながら、コーヒーをぐびぐび飲んでいると、隣の四ノ宮が、クスッと笑った。

「なに考えてる?」
「……いや。別に……」

「絶対今何か思ってるよね。何?」

 ニヤニヤ、面白そうに笑ってる。
 ……別に思ったこと言う位、いいか。そう思って。

「何でオレは? って思ったけど……」

 そう言うと、四ノ宮は、ああ……と相槌を打ってから、ふ、と笑んだ。


「奏斗も、他人ではあるけど……これはもう、必然ていうか。連れてこざるを得ない感じっていうか」

 ……必然? 
 連れてこざるを得ない……???

 全然分からないけど。

「分かんない」

「――――……そこら辺の他人とは違うってことだけどね」
「……意味が分かんない」

「……まあいいけど。分かんなくても。……オレもよく分かんないし」
「……分かんないの?」

「分かんないけど、違うってことは分かってる」


 ううん。
 ……良く分かんない。


 そんな良く分からない会話をしながらコーヒーを飲み終えた。


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