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揺れる

「怒られるって」*奏斗

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「あ、ちょっと奥に行ってくるから、ユキくん、座っててね?」
「……ぁ、はい」

 ……絶対リクさんにも、心配されてる……。
 リクさんの背中を見送って、ちょっと困りながら、ジュースを一口。

 ――――……一人で、部屋で考えていて。
 謝りたいって言われてるって何だろうって思って……。四ノ宮が言ったみたいに、別れたことを後悔してて、それをバカだったと思うなら。
 ――――……本当に、やり直したいっていう言葉も、続くこともあるんだろうか。
 ……でも。
 ――――……四ノ宮にも言ったけど、和希を信じ切れる気がしない。

 大好きだったけど。
 今も……嫌いじゃない、けど……。
 会って――――……オレを見つめる瞳に、泣きそうになったのは、確かだけど。どんな感情かも、よく分からない。

 でも、和希はノーマルなんだって、オレとは違うんだって、すごく思った、あの時の感覚が消えることってあるかな……。
 消えない気がするんだよね……。

 でも、よりを戻したいって言われたわけでもなくて。
 何も聞きたくなくて、電話をする気も、本当に起きないのに。

 だからそんな、考える必要がないかもしれないことを延々考えてたら。
 ――――……なんかもう嫌になってきて。

 訳が分からない位。気持ちよくなりたいな、と一瞬、浮かんで。
 浮かんだら、なんか、家に一人で居るのが嫌になって。
 ――――……家を出てしまった。

 なんとなく――――……四ノ宮の所に、夕方また行くのも、何でか分かんないけど、すごく嫌で。頼ってばかりで、ほんとに、どうしたらいいのかよく分からなくて。
 だから、いいこと思いついた、とばかりに、勢いで出てきたんだけど。

 ……四ノ宮に電話をかけてから、どんどん、足取りは重くなって。
 ここに着いた時には、もうすっかりその気がなくなってて。
 やっぱり、帰ろうかな……と思っていたら。
 店をOPENしに外に出てきたリクさんと会ってしまって、どうぞと言われて、そのまま店の中に入って。……で、入ってもやっぱり気が乗らず、リクさんに張り付いてるのだけど。

 …………四ノ宮。夕飯行かなくて。怒ってる、かなあ……。
 ――――……もしここに居ることがバレたら。もっと怒るかなあ……。

 …………待ってるって。言ってたけど。

 うー---ん……。
 バレても、このまま何もしないで帰ったら、怒られない?
 ……もうここに来てる時点で、怒る、か……。

 ……って、別に、怒られることでもないんだけどさ。

 オレがオレの責任で、ここに来て……何があっても、オレの責任。
 その筈、なんだけどなぁ……。


 はー。とため息しか出てこない。

 何しにきたんだ、オレ。



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