【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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揺れる

「あーもう……」*大翔

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 しばらくの間、カップを握りしめていた奏斗が、ふ、と気づいたみたいに顔を上げた。

「……オレ、連絡、しないよ?」
「――――……しないの?」

「……うん。謝りたいのは、分かった……まあでも……そういう人だとは思うから……予想通りというか」

 言ってから、コーヒーを一口。

「……電話番号、分かるの?」
「消したけど……うん、覚えてはいる。覚えやすい番号なんだよね」

 ふ、と奏斗が笑う。

「……でもかけないよ」

 なんか――――……奏斗が、静か、過ぎて。
 逆に心配になる。
 気持ちを、抑えてるんじゃないかと。

「他は何か言ってた……?」

 少し考える。
 ……電話をすれば聞くだろうし、本当に電話しないなら、言う必要のない言葉だと判断。
 もう、ここで終わりにすることにした。

「そんなに長くは話してないんだよね。すぐ江川も来たし」
「大地、そこにも来ちゃったの?」
「……江川も、奏斗の所に行ったんじゃないかって思って見に来たらしい」
「……そっか。なんか色々面倒かけちゃったかな……」

 ……まあ。あいつ、今頃、もっと面倒なこと、してるかもしれないけど。
 そこは、言わないでおこ。

「……謝りたい、か……」

 奏斗がぽつん、と呟いた。

「――――……何がバカなんだろ。あの時バカって……オレと付き合ったことが、かなあ」

 ――――……は?
 出た言葉に驚いて、奏斗をマジマジと見てしまう。

 違うだろ。
 ……別れたことを言ってるに決まってる。

 ――――……付き合い始めたことをバカだったなんて、言ってる訳ないのに、そっちに頭が行くって……。

「……奏斗」
「……?」

「……あいつが、あんたを好きだったのは、ほんとだと思う」
「――――……え」

 奏斗がびっくりしたような顔で、オレを見る。

 ……ああ、オレ、何余計なこと言ってんだ、と思うのだけれど。

「あんたのこと好きだったから、後悔して、謝りたいとか思ってるんだよ」
「――――……」

「付き合わなきゃよかったとか、絶対そっちにじゃないから。そんなこと、思うなよ」
「――――……」

 奏斗の不思議そうな顔がだんだん真顔になっていって。
 瞬きが、増える。


「あーもう……」

 マグカップを握ってた手に触れて外させてから、腕を引いて。
 抱き締めた。もう、本当に、腕の中にすっぽり。顔が見えないように、ぎゅっと。


「……無理しなくていいよ」
「――――……」


「あんたが泣くの、もう慣れてるし」
「――――……」


「……我慢されるとか、めんどい」


 何か、自分のしてることも言ってることも、無性に照れくさくなってきて、ちょっと違うが言ってしまったそのセリフに、少しして、奏斗が笑った。


「何、めんどいって……ひどい」

 笑ってるけど、でも、少し、震える声。

「――――……全部、隠さなくていいってこと」

 そう言いながら、奏斗の後頭部をよしよし撫でると。


「……オレ、子供じゃない」

 とか言うんだけど。
 全然、起き上がろうとは、しない。

 脇腹のあたりの服を握りしめながら、奏斗がオレの腕の中に収まったまま居ることが。
 ……やっぱり、全然平気じゃねえんだなという証みたいで。


 漏れそうになるため息を堪えるのが、大変だった。




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