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揺れる

「ノリノリ」*奏斗

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 少し車で話してから、試合会場に直行。無事、特に誰にも会わず、観客席まで来ることができた。

 真斗とオレの高校は、別のとこだって言ってたから、試合中だけはとりあえず誰にも会わないだろうし、ひとまず安心。空いてる席に腰かけると、ふと、四ノ宮がオレを見た。


「なんか今日の奏斗の服装ってさ」
「ん?」

「ボーイッシュな女の子にしか、見えないね」
「……ん」

 ……わざとだけど。

 これで四ノ宮に隠れとけば、ただのカップルみたいに見えるかなーという意図がオレの中にたくさんあったので、特にそれ以上は答えなかった。

「そういうカッコ、好き?」
「……まあ。可愛い服は、結構好き……かな」

「似合う」

 クスクス笑って言われると。
 何が言いたいのかなーと、つい思ってしまう。


「あ。真斗、居たね」

 四ノ宮が完全に真斗呼ばわりしてることにも、ちょっぴりは引っかかるのだけれど。コートに視線を向けると、シュート練習中の真斗を発見。

 ちょうどその時、真斗が観客席の方を見たので、手を振ってみるけど気づかない。すぐに、横で四ノ宮が大きく手を振りだすと、それに気が付いたみたいで、真斗もこっちに向けて手を挙げた。そこで練習時間終了の笛が鳴り、一度選手達が、コートを出ていく。


「――――……」
「何?」

 じっと見上げると、四ノ宮がクスクス笑う。

「だから、何で、お前はそんなにノリノリなの……」
「ノリノリってわけじゃないけど」

 はは、とおかしそうに笑いながら。

「奏斗の弟だし。なんか、結構信頼されてる気がするから、少し可愛く見えてきてるかも」

 本気なのか何なのか、クスクス笑ってそんなことを言ってる四ノ宮に呆れる。


 真斗って、結構、冷めてるというか、大人というか。
 ……オレのせいかもだけど。

 誰かに頼るとか、普段もあんまりしないし。
 ……オレのことを、こんな、真斗がよく知らない奴に頼むとか、そんなことしなそうなのに。

 ……何で、四ノ宮のこと、ちょっと特別なんだろう。
 今度話す時、聞いてみよう。

 四ノ宮のことなんか、胡散臭いって、一番真斗が言いそうなのに。変なの。


 やっぱり、こういう、するりと王子モードで人に取り入る……って言ったらアレだけど。
 ……そういうとこ、すげーうまいんだろうなあ……。

 そういうのも、怖いなと思っていたのだけれど。

 ……いつのまにか、怖くはなくなってる。
 ――――……でもずっと、よく分かんない奴ではあるけれど。


「今日勝ったら、次の試合は?」

「……ん、ああ、分かんない。午後あるのかなあ」
「来週になっちゃったら、ゼミ合宿だもんね」
「まあそしたらしょうがないけど」

 そっか、と四ノ宮が頷いてる。

「……そっちも、四ノ宮、試合見るの?」
「え、もう、ここまで来たら、勝ち進む限り応援するけど」
「――――……あ、そう……」

 ……なんかちょっと可笑しくなってきた。
 苦笑が浮かんでしまう。


「あ、飲み物買ってくれば良かった。――――……急いで行ってくる。何飲みたいです?」
「あ、オレ行く?」

 とっさに言うと、は? という視線。

「一人でウロウロするつもり?」
「えっと……じゃあ、なんか、ミルクティーぽいの、お願いします……」

 わざわざ四ノ宮に隠れてきたことも嫌って程分かってるのに、ついつい言ってしまった。
 思わず敬語でそう言い直したら、四ノ宮は、ぷ、と吹き出して。


「了解。待ってて」

 立ち上がって、通路の階段を上っていく。
 なんとなくそのまま見送っていると。すれ違った女の子たちが、四ノ宮を振り返って何か言ってる。

「――――……」

 ……もう、あいつと居ると、日常茶飯事な光景。
 どこでも目立つし、見られてるし。

 …………オレも、よく声かけられるし、モテてきた気はするけど。
 ちょっと、あいつは別次元。
 
 今までもそうだったろうし。
 これから先も、あんな感じで、ずーっと生きてくんだろうけど。 


 でも、見た目を好きって言われるのも、むしろ、嫌がってるっぽい感じするし。

 ぱっと見で好かれるっていうの、良い気もするけど……四ノ宮を見てると、微妙そうな気もする。








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